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S  作者: ぼーし
第四章 【三帝】編
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-35- 王都がヤバイよって話

膨大な殺気が暴れる宿屋『旅人の故郷』の一階で、霧裂達は油断なく目の前の女性、ベルタを睨む。ベルタは極めて余裕の表情で、懐から取り出した酒を口に含んでいた。その際揺れた爆乳に目が奪われたのは仕方がない事だろう。


ちなみに言わなくても分かるだろうが、目を奪われたのは霧裂ただ一人だ。このシリアス感満載の空気の中で、エロに走る余裕があるのは霧裂だけだ。流石と言うべきか、はたまた馬鹿だと言うべきか。ただ、その思考に気付いたのか鎌咲が鋭い視線を霧裂に向けた。


霧裂は誤魔化すように目を動かしながら、鎌咲とアイコンタクト。


――お前に任せる。

――了解しました。


完璧なコンビネーションだ。全てを鎌咲に押し付けることに成功した霧裂は、表面上は警戒している風を装って内心で『ハクと聖剣の言い訳』を考え始める。これに気付いたのは霧裂の隣に居る、一連の事態に一切興味がないハクだけだ。


全てを託された鎌咲が口を開く。


「何故、気付いたのですか?」

「あっひゃっひゃっひゃ、君達ぃ、髪の色を変えただけであちきの目を誤魔化せると思ったのかなぁん」


先程と打って変わっておちゃらけた雰囲気で話すベルダに、鎌咲の眉がほんの少し上がったが、気にせず続ける。


「利益とは?」

「んー、あちきの話を受けてくれるのなら、報酬として【瞬王】の除名撤回およびキリサキ君のSS級冒険者認定を送ろうじゃないか」


ベルタの答えに暫し鎌咲は止まる。

霧裂にSS級冒険者の称号がいるかと尋ねれば、答えは否だろう。SS級冒険者になれば、あらゆる国、危険区域などにフリーパスで入る事ができるなど、様々な恩恵を受ける事となる。場合によっては一国の王並みの権力を得る事さえ可能。


しかし霧裂はたとえSS級冒険者に成らずともその全てが可能だ。霧裂の使っている魔道具を一つでも表に出せば、瞬く間にそれなりの地位を獲得する事も可能だろう。


その為もしベルタの言う利益がそれだけなら、一切迷う事無く即断で断っていた。

が。もう一つ、【瞬王】の除名撤回は利益として中々に魅力的。


如何するべきかと鎌咲は頭を悩ます。

と、ここで唐突に不参加を表明していた霧裂が声を上げた。


「で、何すりゃ良いの?」

「おお! 受けてくれたか!」

「いやいや、まずは話を聞いてからな」


え、え、と瞬く間に蚊帳の外へ追い出された鎌咲は慌てているが気にしない。


「なに、簡単なことさ。【三帝】って知ってる?」

「知らん」

「ありゃりゃ、知らないのか。まぁ良いや、じゃ説明するね」


ベルタの説明によれば、【海龍帝】【天鳥帝】【陸獣帝】と呼ばれる三体の魔物が発見され、その内の【海龍帝】がここ王都に向かって来てると言う。


「で、その【海龍帝】がすんごい強いらしいから、王都防衛線に君達に参加して欲しいなって話」

「ふーん、なるほど」


ベルタの話を聞き、霧裂は顎に手を当て考える。


(【三帝】ねぇ、そんなの居たとは知らんかった。強いらしいし……欲しいな)


神獣級の素材となれば、霧裂が狙うのは当然だ。

しかし。


(今日はやることがあんだよなぁ)


ちらりと瞬谷と目を合わせる。

今日か明日、その二日を使ってやらなければならない事があった。それはサリアナの村の確認。レアルタの話によればあのサリアナの村の亜人は、ある日突然【傀儡師】が拾ったと言って連れてきたらしい。


最初は【傀儡師】がサリアナの村を蹂躙して彼女を連れてきたのかと霧裂は考えたが、それはレアルタが否定した。【傀儡師】が彼女を連れてきたのは、外へ出かけてから数十分後の事。その時は神獣に乗っても居なかったため、サリアナの村まで行って蹂躙して連れてくると言うのは無理がある。


【傀儡師】の言葉を信じるのであれば、彼女は逃げて来たのではないだろうか、というのが霧裂達の考えだ。サリアナの村で何かが起こり、そして彼女は逃げたところを【傀儡師】によって捕らえられた。そう予想したのだ。


村で一体何が起こったのか分からないが、ともかく。

霧裂は今日中に準備を整え次第サリアナの村へ向かう事にしていたのだが、そこへこの【三帝】騒ぎ。逃すには惜しいがサリアナの村もほっては置けない。


「……そうだな。ちょっと考えさせてくれ」

「ん、分かった。まぁあちきの話はこれで終わりだから、もし話を受けるのだとしたらギルドに来てね」


バイバイと手を振りながらベルタは宿屋を出て行った。

残された霧裂達はどうするか話し合おうとしたのだがそれよりも早く、静かに鎌咲が行動する。

チャキリと鎌の刃を霧裂の首に当てながらニッコリと微笑み。


「説明」

「あい」


何に対する説明だとか、そんな事を聞くほど霧裂は愚かではなかった。ビシッと背筋を伸ばし、『裸美幼女誘拐事件』と『裸コート美女強姦事件』の真相を話し始めた。



◆ ◆ ◆



霧裂が生きる為に身の潔白を声を大にして報告しているその頃。

宿屋から出てギルドに歩いていたベルタはふと足を止めた。周囲に人の姿はない。しかし、顔に笑みを浮かべながら確信をもって声を投げ掛ける。


「それで、あちきに何か用かな? 第二王女の奴隷君♪」

「その、呼び方は止めてくれないか。せめて部下と言って欲しいね」

「くすっ、そう悪かった悪かった。言い直そう、あちきに何か用かな? 【暴君】、ジュウゾウ=ヤクモ」


ニ゛ィィ、と口角を上げて言ったその言葉に、今の今まで姿を見せなかった声の主は、ゆるりと姿を現す。建物の影から一歩一歩近づいてきたのは、二十代後半の男。この世界には存在しないはずの、黒スーツにサングラスといった明らかに堅気じゃない雰囲気を纏った男は、静かに言う。


「その名も止めてくれ。私の黒歴史と言うやつだ」

「ふーん、どのへんが黒歴史なのかな?」

「ちっ……、分かっているだろう。一年前、降って湧いた力に溺れ、その結果がコレだ」


心底忌々しそうにいう男、【暴君】を見て、楽しそうにベルダは言う。


「仕方がない。身に余る力を突然手にしたとしたら、使い溺れるのが、人と言う生き物だ」

「ふ、まったく過去の自分をぶん殴ってやりたいよ。辺境の地にでも引っ込めとね」

「おいおい、それは言いすぎじゃない? もしそんな事をしていたら、お前は死んでいたらしいじゃないか。まぁ姫ちゃんの言ってたことを信じるならね」


意味深に言ったベルタの言葉に、【暴君】は目を伏せ。


「残念ながら、ミロードが間違った事は、過去に一度たりともない」

「んん、残念だねそれは」


両手を顔の横に持っていき首を振りながら困った困ったというベルタ。

そんな彼女を呆れたように見ながら。


「そろそろ本題だ。第二王女からの伝言を伝えに来た」

「珍しいね……、何かな?」

「『教国に行け。借りを返せ』だそうだ」

「それは【三帝】絡みかな?」

「さぁな。私には何も分からん」


答えを期待してなかったのか、大して何も言わずに引き下がる。


「それで、分かっていると思うが」

「分かってる。おじきには言わない」


そこで、ただ、と。


「ただ、おじきもおじきで動いてるみたいだね」

「何!? あの方が出てくるのか? 一体何を。【三帝】ではないのだろう?」

「うん。【邪帝】って知ってるよね。その【邪帝】がちょっとヤンチャし過ぎたみたいで、おじきがお仕置きするみたいだね」

「具体的には?」

「【邪帝】がSS級冒険者【孤陽】および北の都の【黒騎士】をぶっ殺した。【孤陽】のじっちゃんは当然、【黒騎士】もまたかなりの力を有していて、三大国が確保に動いていた存在。そんな二人が【邪帝】に殺された。由々しき事態だ。なんてったって人族最強の一角が敗北したんだからね。民衆にこれ以上の被害や不安が広がらせないために、三大国がおじきに【邪帝】抹殺を依頼したらしい」

「なるほど。ちなみに【邪帝】は」

「位置は掴めてない。ただおじきは分かったみたい」


【暴君】はそうか、と頷き背を向ける。


「報告かな?」

「当然だ」

「ご苦労な事で。どうかな、冒険者に成らない? 第二王女の手から逃れられるかもよ」


ベルタの言葉に、【暴君】は僅かに目を向け。


「愚問だ」


そう言って、闇の中へ消えていった。

消え去る背中を見届けたベルタは、ふぅーと葉巻の煙を吐き、


「さて、あちきも大変になってきたな。キリサキ君のことはアンちゃんに任せるか」


葉巻を銜え直し、ベルタもまた闇の中へ消えていく。

【三帝】や【邪帝】、【魔女】と亜人など様々な問題が蠢くその水面下で、静かに第二王女が暗躍を開始する。



◆ ◆ ◆



「――つまり、貴方は裸幼女に変身する魔道具と裸美女に変身させる魔道具を造り出した変態と言うわけですね」

「う、うーん、そうだけどそうじゃない! いやほぼ合ってんだけども、変態と言う部分を訂正してもらいたい!」

「不可能です」

「ふ、不可能!? え、俺が変態だって事はもう変えられないの!?」

「何を今更」


ジト目で睨む鎌咲に、精神的ダメージを受ける霧裂。

ちなみに霧裂は、『あの裸幼女は偶然できた魔道具で、この裸美女は俺の魔道具で変身したハクだ』と説明した。流石に『あの裸幼女は盗んだ国宝のもう一つの姿です』とは言えない。言える訳がない。


「ひぇー、それにしてもハクさんって女だったんですね」

「俺もびっくりしてる」

「いやそこは知っときましょうよ」


何ヶ月も一緒にいて気付かされた驚愕の真実と告発する霧裂を、ジト目で見る瞬谷。その視線に耐え切れず、一人称が俺様だったからてっきり男だと、と言い訳をする。

話題のハクは既に鎌咲から服を貸してもらい着ている為、眼福タイムは終了していた。まぁ鎌咲とハクでは服のサイズが違うため――特にBWHのBの辺りが――早急に服を買わなければいけないが。


「あのギルドの要請、どうするんですか?」

「あー、その事だけどな。鎌咲とレアルタで行ってくれ。俺と瞬谷はやる事があるんで」

「やる事?」

「秘密だ」


探るような目で見てくる鎌咲にニッコリと笑い応対する。


「そうそう、瞬、お前の義足造ったんだ。嵌めてみろよ」


教えろ、と目で訴えてくる鎌咲を回避しつつ、ポケットから銀色の義足を取り出す。義足はゴツゴツとしたモノでは無く、スラリとした細めの義足。一見何の変哲もない鋼の義足だが、霧裂が造った物だ。当然まともな物じゃない。嬉々として瞬谷が嵌めていた義足を外し、新たに義足を取り付けようとする霧裂を見て、傍観していたハクが口を開く。


《なぁオーマ、それは爆発しないよな?》


ピタリと今までどんな義足なのか不安と好奇心が混ざり合った複雑な心境で待っていた瞬谷の動きが止まる。さらに言うなら周りの、霧裂の愉快な仲間たちまでもが動きを止め霧裂を注視していた。

そんな話題の霧裂は、自信満々に笑って、


「あのなハク、この世に絶対なんてモノは存在しないんだ」

「ちょっ、止めろその義足近づけるなッ!!」


いい笑顔で言った霧裂の言葉を聞き、瞬谷が顔を真っ青にして離れようとする。


《オーマ、前から言ってるがぶっつけ本番で試すのは止めろ。いつか死人が出るぞ》

「うう、嫌でもさ、造ったらすぐに渡したいじゃん? 喜ぶ顔見たいじゃん? だから俺は即行で行ってる訳。それに足を造るのはもう慣れてるし、九十九パーセント成功するって」


大丈夫大丈夫と笑う霧裂。


「それに今回のはちゃんと上手く作動するか確かめてるし」

《ほほぅ、オーマ、ならば何故俺様の時はあそこまでの激痛が有ったのだ?」

「あーえっと、ほら人に変身する魔道具だからさ、ちょっとリアリティ求めすぎちゃった」


テヘッと笑う霧裂の顔面を全力で殴り飛ばしたハクは悪くない。






顔面を殴り飛ばされたが、あまりダメージというダメージを受けなかった霧裂は瞬谷に義足を取り付けていた。


「どうだ? なんか不都合とかないか?」

「これは、凄いです。全然違和感ないですよ!」

「おー良かった。自信作の一つだからな、隠し兵器とかも後で教えてやるよ」

「か、隠し兵器?」

「ああすげーやつ」

「いい! いりません! 兵器とか要りませんから!」

「遠慮すんなって」

「遠慮じゃないから!!」


叫ぶ瞬谷に兵器の良さを力説している霧裂。

そんな二人を気にせず、レアルタと鎌咲が話し合っていた。


「それで、準備の方は」

「うむ、キリサキ殿に頂いた魔道具の具合も確かめた事であるし、準備万端であるよ」

「そうですか」


頷き、霧裂の方へ顔を向ける。


「それでは私たちはギルドへ行きます。貴方達は」

「ん、ああ、終わったら戻ってくるよ。それと【海龍帝】の素材、出来れば頭とか足とか取って来てくれよな」

「分かりました、では」


一礼し、レアルタと共に出て行く鎌咲の後姿を見ながら、霧裂は思う。

なんか何時の間にか居ついたなアイツ、と。


別に仲間が増える事に対しては良いのだが、何も言わずにサラッと違和感ゼロで付いて来そうな鎌咲に対して少しだけ思うところがある。瞬谷は土下座して懇願までしたのだ、まぁやれとは言わないが。もしやったら、優越感に浸る前になにか策があるのでは? と疑う事だろう。


それはともかく、サリアナとハクが付いてくる事は既に決定している為、サリアナからキューを取り上げながら霧裂は自室へ向かう。聖剣の回収だ。存分にキューをモフり倒し癒し成分を補給しつつ、自室の扉を開け中へ入る。

途端に、霧裂の頭の中にこんな声が響き渡る。


『び、びぇぇっぇぇぇぇぇん! す、捨てられた! 主に捨てられた! もう我要らない子なんじゃ! もう用済みなんじゃ! びぇぇえええん!』


ギャン泣きというやつだ。ソプラノボイスで泣かれると中々効くということを霧裂は再認識した。


「おい、おい! 捨ててないから! ちょっと散歩行っただけだから」

『あ、主ぃ? ふっぐ、心配したじゃろ! 今度からどこか行く時は我も連れていけ!』

「はいはい」

『あと、浮気とか許さんからな! 包丁か灰皿もって追い掛け回すからな!』

「ヤンデレはもうおなか一杯です。つーかお前は俺の恋人かなんかか」

『そうじゃがなにか?』

「お断りだ変態」


ゲジッとアホな事を宣言した聖剣を蹴り飛ばす。

うっきゃーっと叫ぶ聖剣に、ついでに幼女化禁止令を出し、キューを定位置に乗せて聖剣は背負う。

聖剣も生き物と認識されているのか、【完全無欠殺戮人形(アイテムボックス)】の中に収納する事が出来なかったのだ。


『おー、この感じ、昔を思い出すのー』

「へいへい、あ、そいやお前名前とかあんの?」


剣や聖剣などでは呼び辛い。普通、魔道具名は自分で考えるが、幼女化もでき意思もあるので名前が有ると考えたのだ。


『名前、名前か。ふむぅ、そうじゃの。エーテルとでも呼べ』

「エーテルね。了解、じゃ行くか」

『うむ、いざ行かん。天上天下唯我独尊の道を!!』

「アホか。秘湯を求めて三千里だボケ」


馬鹿なことを言い合いながら、宿屋の階段を降りる。どちらも似た者同士、良いコンビなのかもしれない。






それぞれ準備を済ませた霧裂、ハク、瞬谷、サリアナは宿屋を出て何時もの門に向かっていた。ハクは知っているが、未だに何処に行くか知らないサリアナはジロリと霧裂を睨みながら問い詰める。


「で、何処に行くのよ。教えなさい、教えろ」

「まぁアレだな、秘密」

「分かった、なら良いわ」


教えるわけにも行かず、瞬谷にヘルプを頼もうかと考えていたが、思いのほかすんなりと引き下がったサリアナに首を傾げる霧裂。

しかし直ぐにサリアナの思惑を理解する。


「じゃぁキューちゃん貸して、キューちゃん頂戴、カモンキューちゃん! キューちゃんキューちゃん! ラブラブゥ!」


ハァハァ! と息を荒げて手をワサワサと動かしながら、ギラギラと輝かせる目を定位置で寝転ぶキューをロックオンしている。サリアナの新たな一面を見た瞬谷は驚きでポッカリと口を開き、キューは『このお姉ちゃん怖いよー』といった感じで鳴き、聖剣はなにやら『むむむ、この者、僅かだが我と同じ匂いがする……ッ!』と密かに戦慄し、ハクはめんどくさそうに欠伸をし、霧裂は頬を引き攣らせながら一歩下がった。


全員が様々な反応を示しながらも、確かにサリアナの変態性及び性癖を理解した。


「お前アレだな、獣姦とかメッチャ好きそうだな」

「はぁ? じゅうかんってなに? どうでも良いからキューちゃん頂戴!」


ぐわっ! と飛び掛って来るサリアナの魔の手からキューを保護する霧裂の背後で、ハクがポンと瞬谷を慰めるように肩に手を置いた。


そんなこんなで門までやって来た一行は可笑しな物を目にする。いや、別に可笑しな物でもないかもしれないが、門の前に一台の馬車が止まっていた。かなり大きな馬車だ。明らかに通行の邪魔になっているその馬車の主と思われる肥満気味の男が、いつもの門番と口論になっていた。


どうしたんだろ、と首を傾げていた一行に気付いた門番は何故か驚き、そして髭を蓄えた肥満気味の男がパァ、と花のような笑みを浮かべる。肥満気味といっても、イヤらしい感じはなく、裕福なおじ様といった印象を与えるその男は、だぷんっと腹を揺らしながら霧裂達に近づいてくる。


「いやー待ってましたよ。少し私と話をしませんか」

「えぇっと、おっちゃん誰?」


当然の質問を投げ掛ける霧裂に、男はにっこりと柔らかく微笑みながら、


「私はしがないしがない商人ですよ。霧裂王間君と瞬谷佐久君にお話があってきたのですよ」

「あれ? 何で名前知ってんの?」

「自己紹介はまた後で。今日はやる事が沢山有りますからな、時間を効率よく使っていかないと」


商人と名乗ったその男は、敵意も悪意も感じさせない笑みを浮かべ、霧裂たちを馬車へと促した。

一文字のセリフすらなく退場した哀れな転生者【黒騎士】君の名前は藻巫伽羅(モブキャラ)です。

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