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S  作者: ぼーし
第三章 【傀儡師】編
30/62

-27- 突撃ぃぃいいいいい!!

昼下がりの大空を転々と【空間転移(テレポート)】を繰り返し、現在崖の上。地に足を付き、崖の下を見下ろす。そこには城があった。大きな白い大理石で出来た、城の周りに街が広がっているが、王都に比べると規模は随分小さい。そんな御伽噺に出てきそうな城が、【傀儡師】の本拠地。


「間違いないのですか?」

「ああ、間違いねーよ」


城に向けていた視線を霧裂に向け問いかける鎌咲に、自信満々に肯定する。


「そうですか。あのクソヤローはあそこに居るんですね」

「おい口調口調。乱れてる」

「おっと失礼」


ぐっと拳を握り締めながら呟いたその言葉に、もしかして今のが素!? と吃驚する霧裂。まぁそれも仕方が無いのかもしれない。【空間転移(テレポート)】中の浮遊感を楽しみながら、翼の魔道具でも造ろうかなと霧裂は考えていたのだが、鎌咲は瞬谷に詳しく【傀儡師】に付いて情報を聞いていた。で、もれなく女の敵認定されてしまったのだ。


「言っとくけど殺すなよ。転生者かもしれねーんだから」

「分かってますが、さも『転生者かも』と思いついたのが自分であるかの様に喋るのは止めて貰えますか? 貴方は何も気付かなかったのですから」

「うぐっ」

「そうですよ。霧裂さん自分で『アイツ変な「力」持ってるぜ』的なこと言ってたのに、転生者かもとか一片も疑いを持たないって、馬鹿ですか。人族なのに魔道具も使わず、特殊な力を持つって、それ完璧に神様から貰ったチートじゃないですか」


その後も長ったらしく言う二人に、霧裂はさーせんと頭を下げる。

一日に謝罪した数、新記録達成じゃね? 

と、しょうも無いことを考えていると、説教も終わったのか口を噤む二人に、安心した様にほうと息を吐き出した霧裂に、今度は背後から声が掛かる。


「ねぇ、何でアンタに九尾様が懐いてんのよ」

「九尾様じゃねぇ。キューだ、な?」

「キュー!」


悔しそうに、それこそハンカチでも噛み千切りそうな表情で霧裂を睨むサリアナ。どうやら【九結狐】は、亜人族の狐人種の中では神様と言う事らしい。そんな神様キューは、何時もの霧裂の頭の上にへばりつきサリアナを視界に納めたくないのか可愛らしい双眸を閉じている。どうやら、キューはサリアナが嫌いのようだ。理由は不明だ。まぁ多分霧裂に対するサリアナの態度が気に入らないのだろうが。


「くぅ、薬か何かで操ってんじゃないでしょうね!」

「そんな事するか! 俺がキューを取り上げたんだぞ! そんでもって名付け親だ」


えっへんと胸を張る霧裂と定位置で嬉しそうに身を捩るキュー、そしてそれを恨めしそうに見るサリアナ。

そんな霧裂達の隣で鎌咲と瞬谷が話し込んでいた。


「【空間転移(テレポート)】で【傀儡師】が居る所に直接行けないのですか?」

「無理ですね、あの城の構造が分かっていないのにそんな事したら、下手したら壁に生き埋めですよ?」

「それは困りますね。なら爆弾などを【空間転移(テレポート)】させれば、簡単では?」

「うーん、でもあの城にいる操られている人も死んじゃいますよ?」

「そうですか……」


結局、見つからないように侵入と言う線で話が決まり、侵入ルートを話し合おうと今だ言い争う霧裂達の方を向く。


――と、何かに気付いたのか、霧裂と鎌咲の肩がピクリと動く。そして交わす怪しげなアイコンタクト。何も気付いていない瞬谷は眉を潜め意味を理解しようと霧裂と鎌咲を交互に見て、サリアナは俯いてキューと仲良くなる方法を必死に考えていた。


そんな二人を相手にせず、霧裂と鎌咲は軽やかに話す。


「それでは、私は後方から殴りこみます」

「オーケー、なら俺は真正面から薙ぎ倒すわ」


行き成り大雑把過ぎる作戦を立てた。確かにこの二人なら時に作戦は枷となるのかも知れないが、それでもこれは酷すぎる。困惑する瞬谷をよそに霧裂と鎌咲は話を続ける。


「では、情報を奪ったら狩りますが宜しいですね?」

「んん、早いモン勝ちだな」


話は終わりだとばかりに、飛び降りようとする鎌咲に、おっと忘れてたと、霧裂はコートから四つのフレームもテンプルも全てが黒で塗りつぶされた、サングラスを取り出した。それをそれぞれ差し出しながら説明する。


「コレかけてたら、目から操られる事は絶対無い。ま、もしかしたら視線以外でも操るのは可能かもしれんが、それは無いだろ」


説明を聞き、助かりますと言いながら――サリアナは何も言わず――グラサン型の魔道具をかける。キューにも専用のグラサンをかけてやりながら、霧裂もまた、そんな物付けなくても効かないにも拘らず、何故か装着した。


視線で問いかける鎌咲に、気分だよと返事をしながら、瞬谷が先程のアイコンタクトを問い詰めようと口を開く前に、にこやかに言う。


「それじゃ行きますか。(そろそろ来るし)」

「ええ、行きましょうか。(そろそろ来ますし)」


最後ボソッと呟く霧裂と鎌咲に、言葉は聞き取れなかったが、ゾワッと悪寒が背筋を這い上がるのを感じ、瞬谷が慌てて止めようと手を伸ばすが遅かった。


「アデュー。がんばれよ」

「失礼します。ご武運を」


わはははははっ! と笑いながら霧裂が躊躇いも無く崖から飛び降り、鎌咲も意味深に頷きながら霧裂に続き飛び降りた。

何かあるかも知れないじゃなく、絶対何かある!

嫌な予感が一気に確信に変わった瞬谷は、急いでサリアナと【空間転移(テレポート)】をしようと顔を横に向けるが、そこにサリアナは居なかった。あれ、何処行った? と慌てて辺りに視線を彷徨わせる瞬谷の耳に、サリアナの声が届いた。


しかし、その声を聞き、直ぐ傍にいたと安心する事が、瞬谷には出来なかった。

何故なら、


「しゅ、瞬、後ろ、振り向いて」


その声に含まれる感情は恐怖のみだったのだから。

振り向くなっ! と瞬谷の勘が警報を鳴らす。だが、くいくいっと冒険者時代に常に着ていた、全身を覆う一枚の黒い布を引っ張るサリアナに、行くぞ行くぞ行くぞ! と気合を入れ、一気に振り向いた。


瞬谷の双眸に映った物は。


「オワタ……」


ハク。

神獣【白夜狼】が瞬谷の目の前で、地を踏みしめていた。


(あの二人、ハクさんをオレに押し付けやがった!)


ハクに気付いていたから、霧裂と鎌咲は慌てて城に向かったのだろう。


勝てる相手ではない。真正面から対峙して神獣に勝てるほどの実力は瞬谷には無い。

否、もしかしたら勝てるかもしれない。一筋の希望はある。

が、目の前のハクには勝ってはいけない。瞬谷にはハクを束縛など出来ず、ならば殺すしかないのだが。


(もし殺せたとしても、その後霧裂さんに殺されてしまう!)


ハクは殺してはダメ。

霧裂が何度も何度も、繰り返し言った言葉だ。そしてその言葉を言ってる間、霧裂は無言で語りかけていた。

殺したら殺すよ?


(どうする! いやいや逃げるしか――――)


と、ここで思考を止める。

瞬谷が全力で逃げに回ったら、まず捕まえる事は出来ないだろう。だが、今逃げたらハクは霧裂か鎌咲を狙うだろう。そんな事をさせる訳にはいかない。


つまり、瞬谷に残された道は、一つだけと言うわけだ。

殺してもダメ。逃げてもダメ。

それなら。


(時間を稼ぐ。とにかく霧裂さんか鎌咲さんのどちらかが【傀儡師】を殺すまで、時間を稼ぐ!)


【傀儡師】このヤロー! と考えうる限りの罵詈雑言を、見たことも無い【傀儡師】に心の中で吐き捨てながら、ナイフを布の切れ端から出ている右手で握りしめ、


《グロォオオオオオオオッ!!》

「イヤァアアアアアアアッ!!」

「やってやらぁああああッ!!」


死闘へとその身を投じる。



◆ ◆ ◆



気合十分、咆哮を上げ瞬谷とハクがぶつかっている頃、霧裂は崖の下で鎌咲と話していた。


「逃げてしまいましたが、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫大丈夫、何とかなるだろ」


能天気な霧裂に鎌咲は嘆息する。


「それでは、別行動ですね」

「だな。んじゃ行くか」

「はい。……あ、そうそう。この近くに『英雄の墓場』と呼ばれる場所があるらしいですよ、お仲間になら無いように気をつけて下さいね」

「こっちのセリフだ」


軽く頷きあい、霧裂は右へ、鎌咲は左へ疾走した。






鎌咲と別れ、街の中を城目指して疾走していた霧裂は不快な気持ちで顔を歪めていた。


(ひでぇな。皆死んだ、か?)


死体は無い。しかし街の中に充満する血の匂いが、ここで大虐殺が行われた事を霧裂に教えていた。霧裂の顔が僅かに怒りで歪む。別に誰も殺すなと思ってるわけでは無い。霧裂自身はまだ人を殺したことは無いが、こんな世界で生きるのであれば、いつか殺してしまうかもしれない。そんな時にうじうじ悩むのは彼らしくも無く、また霧裂も殺人を犯したとしても、神に懺悔するつもりも毛頭無い。


しかし霧裂は殺す時は、罪を犯すと覚悟を持って殺る。罪を受け止める覚悟が霧裂にはある。

だから良いと言う訳ではないが、果たして【傀儡師】に罪を犯していると言う意識はあるのか。


恐らく無いのだろう、と霧裂は思う。

【傀儡師】は自身の手で直接、人を殺したことが無い。それは相対した時に気付いた。あんな奴に人は殺せない。ならこの大量虐殺は誰がやったのか。答えは簡単で、【傀儡師】が操った者が自身の意思ではなく殺人を犯したのだろう。だからこそ【傀儡師】は何の覚悟も無く、罪を犯している事にすら気付かず、間接的に殺人を繰り返す。自身の手が一切汚れていないからこそ、分からない。自分が一体何をやっているのか。


(あー胸くそ悪いな)

「キュー」


このどんよりとした雰囲気が怖いのか、キューが震えながら鳴く。安心させるように、ぽんぽんと軽く体を叩き、視線を彷徨わせる。


霧裂は人の罪を罰せられるほど、偉くは無い。加害者が犯した『罪』に『罰』を与えていいのは被害者だけ、と言うのが霧裂の自論だ。そして今回、霧裂はそれを実行するつもりだ。


ふーと息を吐く。気は乗らないがもう決めたことだ。鎌咲より先に【傀儡師】見つけなきゃな、と足を速める。瞬谷が見つけると言う事はまず無い。今頃ハクの相手をしているだろうから。


(瞬谷の為にも急がなきゃな)


じゃないと死ぬ。瞬谷が。覚悟を決めた霧裂はトンッと軽やかに城壁を乗り越え、中庭に降り立った――――直後、ズドンッ! と轟音が鳴り響き、霧裂の立っていた地面が陥没した。


霧裂が立っていた地面に両の拳を叩きつけているのは、筋肉の塊の様なミノタウロス。クレータが出来、地面がへこんでいる事からその一撃の重さが把握できる。土煙で良く見えないがクレーターには、飛び散った鮮血、肉の欠片がこびり付いていた。量などから見ても大体、人族一人分程度。ミノタウロスはその確かな手応えに、拳を振り上げ咆哮する。


「ブモォオオオオオオオオ!!」





と、背後から声が掛かった。





「あぶねっ、あ、うるさいよ」

「キュッキュー!」


ボバッ! と肉の破裂した音が響き、頭部を失ったミノタウロスがクレータに沈んだ。土煙が晴れたクレータには、ミノタウロスの他に細く黒く光る体を持った、二足歩行の蟻の様な生き物が沈んでいた。


「さーて、後四体かな?」


首を鳴らしながら両の拳を合わせると、ゴギンッと金属の様な音が響いた。良く見てみると、何時もの白いコートの他に、両腕に厚さ一センチ程度の鈍く銀色に輝くグローブがはめられていた。鋼鉄製のグローブをはめた指を、調子を確かめるようにパキパキと動かしながら、霧裂は【天より見抜く(クレアボイアント)】へと変更した、黒の中に浮かぶ金色の瞳孔を順番に五箇所へ動かす。


「来ないならこっちから行くけどオーケー?」


ガキンッと甲高い音を鳴らし鋼鉄の拳を握り締める。


それが合図となった。


ドッと同時に襲い掛かる五体の魔物。蛇の下半身と獅子の上半身を併せ持つ魔物が右から、六つの腕を持ち黒光りする細い体の蟻が人型になった様な魔物が左から同時に襲い掛かる。


「さーて、【闘神狂う(ベルセルク)】。初陣だ」


鋼鉄のグローブは、ボァッと焔でも灯す様に、その腕に赤黒いオーラを纏う。セレーネと同じ色をした、『闘気』。『闘気』を纏った右腕で、顎を最大限に開け噛み砕こうとする獅子蛇の顔面を掴み、握力でグチャッと握りつぶしながら振り回し、飛び掛る蟻人へ上から叩きつける。ベチャッと嫌な音が鳴り、頭部を失った獅子蛇と地面の間で圧殺された蟻人は地面の染みとなった。


「うお、グロテスク!」


何でも無さそうに言いながらその場を後方に飛びのく。直後、ドッと地を、獅子蛇の屍を喰らい姿を現したのは、見えているだけで全長五メートルは越すであろう巨大蚯蚓。全身をヌメヌメとした液体でテカラせ、目も鼻も無く、歯の無い口だけがある頭部をこちらに向ける。その裂けた様な口を全開まで開き、上から喰らおうと襲い掛かる巨大蚯蚓を見て、余裕そうに口角を吊り上げ、巨大蚯蚓を受け止めんと両手を上に向ける。


と、霧裂が踏ん張った足下から、二十本の触手が伸び、霧裂の体を束縛する様に絡みつく。棘や吸盤があるその触手は、一度絡みついたら外すのに苦労するか、そのまま絞められて死ぬか。しかし、それはあくまで常人の話。霧裂は絡みついているにも拘らず、何でも無さそうに右手で一本の触手を掴み、力を込め一気に引きずり出す。


「おらぁ! 一本釣りぃ!」


ゴッと地面が割れ、そこから二メートル近い蛸が飛び出した。蛸の体には人の顔の様な模様が浮かび上がっており、二十の触手に力を込め霧裂を絞め殺そうとするが、幾ら力を込めても霧裂は死なず、そうこうしているうちに、霧裂が巨大蚯蚓から身を守るように間に触手蛸を動かし、ガブリ、と上から降って来た巨大蚯蚓に触手蛸は咀嚼された。


「はっはー! おら、行くぜ!」


力が抜け落ちる触手の束縛を抜け出し、地を砕き跳躍した霧裂は『闘気』を纏った右手をゴギンと固く堅く硬く、握り締め、轟! と全てを粉砕するような一撃を巨大蚯蚓に叩き込んだ。

ドッバ! と拳が減り込んだ巨大蚯蚓の体が破裂し千切れ飛ぶ。


ズズンと地響きを鳴らし地に沈んだ巨大蚯蚓の片割れの上に降り立った霧裂は、口を開く。


「さてと。ほほぅ、観戦者が増えてるじゃないか」


ビクリと空気が僅かに揺らめく。その空気を敏感に察知しながら、視線を計十箇所へ向けた。

ニヤリと口が弧を描きながら、霧裂は言う。


「来ないならこっちから行くけどオーケー?」



◆ ◆ ◆



霧裂が無双している頃、霧裂とは正反対の場所から侵入した鎌咲は、すでに城の中を走り回っていた。


「さて、どこに居るのやら」


きゅきゅ、と速度を下げず角を曲がった鎌咲の左目に――――的確な軌跡を描き尚且つ高速でナイフが突き出される。急所への的確な一撃を鎌咲は首を僅かに捻り、無駄な動きをせず紙一重で避け、ナイフを突き出した者の鳩尾へ掌低を叩き込んだ。


ゴッと口から空気が漏れ、体から力が抜け落ちるのを支えながら、持っていたロープでその身を縛る。洗練された身のこなしでナイフを突き出したのは、メイド服を着た二十代半ば程の女性。先程から鎌咲はメイド服を着た、しかしプロと思えるほどの技量を持った者を何人も昏睡させて来ていた。


恐らく操られたのだろう。中には十代ほどの少女も居たくらいだ。そして、陵辱された後がある女性も。


ギリッと歯を食いしばる。

許せない。

鎌咲が最も嫌いな人種だ。


細切れにして狩り取ってやると意気込む鎌咲は、――――トンと不自然なほど軽く背を押された。子供の様に力なく押された鎌咲は、ぞっとする。

気付いてはいた。だが、距離が離れていたから気にしなかったのだ。それなのに、気付いたら後ろに立っていた。


(気配の距離感を狂わされた!? 一体どうやって……?)


ダンと地を勢い良く蹴り、前方に飛びながら同時に背の大鎌を振るう。鎌の刃は、後ろに立っていた女性に紙一重のところで水壁に阻まれた。


(魔法、まさか亜人!?)


二度目の驚愕。

何故なら、目の前の女性は亜人としての特徴が一切なかったのだから。耳も尻尾も無い。左腕が肘から先が存在しておらず、顔や見える足にある痣が痛々しい。しかし、その美貌は一切色あせてはいなかった。


女性はゆるりと右手で刃渡り百十センチほどの長剣を構える。とても片腕で持てる様なサイズではない。やはり亜人、恐らく人族とそう見た目が変わらない種なのだろう、そう考え、気付く。

女性の頭にある、何かを切り取られたような後に。


(あ。ああああああああああああッ!!?)


気付いてしまった。理解してしまった。

そう、彼女は切り落とされたのだ。その亜人の象徴を。両耳を。

――ブヂリと切れる。


(あの、クソヤロォォォがぁぁあああああああああッ!!)


血が出るほど唇を噛み締めながら、【傀儡師】を呪う。


(グチャグチャのグチャグチャをグヂャグヂャにして、殺す!)


覚悟を決めた鎌咲は、しかし悲しそうな双眸で女性を見る。【傀儡師】を殺すには、彼女を傷付けなければならない。もう傷を付けたくないのに、決して彼女は通してくれないだろう。そして、無傷で拘束出来るほど、目の前の女性は弱くは無いだろう。


「すみません……」


ゆえに謝る。傷付けたくない人を傷付けなければなら無いこの状況を、心の底から恨みながら。【傀儡師】を心の底から怨みながら。


「貴女は強い。こちらも全力で行かなければ危ういことが良く分かりました。許してください、貴女を傷付けると言う選択肢しか取れない愚かな私を」


ミシリと音が鳴るほど大鎌を握り締め、言う。


「……、【死刃大鎌(キルサイズ)】」


轟! とドス黒いオーラを身に纏う。鎌咲の双眸が黒一色で塗り潰され、肌の色が死人のように青くなり、パチパチと真紅と碧空の雷光が瞬く。ふーと吐いた吐息は白く、手に持つ大鎌は全てが骨で出来た大鎌へと姿を変えた。何処までも際限なく広がる闇の色をした双眸で、女性を見つめ、呟く。


「――――、行きます」


タンと地を軽やかに蹴り、漆黒と真紅と碧空の尾を引きながら、骨で出来た死神の鎌を音速で空気を裂きながら振り下ろした。

白いコートに鉄のグローブ。霧裂の今の格好は、木ィィィ○くゥゥゥゥゥン!! の初期装備だと思ってください(笑)

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