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S  作者: ぼーし
第一章 彼が人間を辞めるまで
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-01- マイボディとの悲しき別れ

どうしてこうなった?


とあるマンションの一室。その部屋の主と思われる、高校生ぐらいの少年が床に倒れていた。ただ倒れているだけなら何ら問題は無い。だが、少年の様子は明らかに異常だった。

白目を剥き、両手で胸を掻き毟り、パクパクと口を動かしながら、ガクガクと痙攣する。10人が見て10人が病院に通報するであろう光景だが、残念ながらその部屋には少年1人しかいない。義妹と2人暮らしなのだが、生憎コンビニに菓子を買いに行っている。


そんな見るも無残な状態だが、不思議と少年は冷静だった。と言うか、少年は苦しむ自分の体を何故か見下ろしていた。


(あ、死んだな。てか死んでる?)


すぐに現実を受け入れた。別に死にたいとも思っていなかったが、直感で分かってしまったのだから仕方が無い。


変化は突然だった。休日にテレビを見ていて、突如胸に痛みが走り、気を失って目覚めたらこうなっていた。意味が分からない。何だこれ、と思いながら少年ザ・幽体バージョンは自身の体を見つめていると、どうやら限界が訪れたようだ。


口から泡を吹き、眼をグリングリンと回転させながら、体がビクビクではなくバグンッバグンッと何かヤバイ感じに動き始める。


(うへぇ。もう良いからさっさと死ねよ、諦めようぜ俺ェ。頑張ったけど無駄な足掻きっぽいし、ハッキリ言って見てらんねーよ)


自身のグロい光景を図らずとも見てしまった少年は何とも居た堪れない気分になり、来世に思いをはせる。少年の思いが通じたのか、段々と動きが収まっていき、最後にカッと眼を見開き、ガックリと首を項垂れた。


(頑張ったぜ俺の体! 17年間ありがとYO! お前のことは一生忘れねーZE!)


ふー! と両拳を振り上げ、マイボディの健闘を称える。その一生を今終えようとしているのだが、残念ながらツッコミは無い。こちらも限界が来たのか、意識が薄れ始める。

その時、


「おう、兄貴帰ったぜ! ムッチムチのエロボディを持ったアタシでシッカリ抜いてスッキリした? もしまだなら手伝ってやろうか? ふひひひひ」


満面の笑みで帰ってくるはロリ巨乳こと、少年の義妹。義妹はドンッと勢い良く扉を開け、大健闘をして真っ白に燃え尽きた少年の肉体を直視し、動きを止めた。

哀れ、もう少し早く帰ってきていれば少年にチャンスがあったかも知れないが、もう色々遅い。


(義妹よ、今度からはもう少し早く帰ってこようぜ。そうすれば俺生きれたかも知んないのに。コンビニとマンション、徒歩5分も掛かんねーだろ、何してたんだよ。お兄ちゃん死んじゃったじゃない)


最後、笑顔のまま顔を固まらせて動かない義妹に、遅せーよ、とダラダラ文句を垂らしていたところで、少年の意識は途絶えた。

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