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想い剣  作者: kou
3/10

約束

 「またここにいたのか」


俺が、そう呟くと土手に座っていたそいつは顔を上げた。

そして嬉しそうににこりと笑う。

こいつの笑顔はほんとに卑怯だ。

見ているこっちまで頬が緩んでしまう。


「いいのか?また親父さんに叱られるぞ」


そう言って、俺は隣に腰を下ろした。

目の前には小さな川が流れていて、風が気持ちよかった。


「だってここ好きなんだもん。涼しいし、コスモスも綺麗だし」


そうか、そういえばコスモスが好きだと言っていたな。

今度、花屋ででっかいコスモスでも買ってきてやろうか。

そしたら、どんな顔をするのだろう?笑ってくれるだろうか。


「…それに、ここにくれば貴方が会いにきてくれるもん」


「っ!」


「あ、照れてる?」


「だ、誰が!」


そして、また笑う。

くそ、だから反則だって。

そんなこと言われて、そんな顔で笑われたら誰だって照れるに決まっているじゃないか。


「大体、俺は道場の帰り道で通りかかるだけだから…」


「へー道場に通ってるんだ。お侍さんになるの?」


目を輝かせて顔を近づけてくる。

なんだか、そんな顔させると見栄を張りたくなってくるじゃないか。

「そうだ。しかも先生に筋がいいって褒められてるんだ。

今日も将来、出来物な侍になるって言われたばっかなんだぞ」


「すごいすごい!じゃきっと村一番のお侍さんになるね!」


「当たり前だろ!そしたらお前も、嫁にもらって俺が守ってやるよ!」


「え?」


「…え?」


ぽかんとするこいつ。

そして俺もぽかん。

何秒か経ち、はっと我に返った。

何を言っているんだ俺は!

見栄を張りすぎて、頭がおかしな事になってしまった。


「い、いや今のは!」


「…ほんとに嫁にもらってくれる?」


「…え?」


間の抜けた返事。

というか今なんて?


「じゃ、そのかわり約束して」


「約束?」


「私の事、お前じゃなくて名前で呼んで。私も名前で呼ぶから。

夫婦になるなら当たり前でしょう?」


はいと突き出された小指。

そして、顔を真っ赤にしながらそいつはおもいっきり笑った。

見つめていた俺もつられて噴出すように笑った。

嬉しくて、楽しくて、悩む必要なんてなかった。

答えるように伸びる腕。

二人を示すように絡み合う小指。

最後に、もう一度そいつが笑った。


「約束、絶対だからね風月!」


「ああ、約束だ。俺が一生守ってやるからな京!」


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