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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第一章 廃墟から聖都ロスメアへ
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第4章: 化け物の影

人の姿をした“何か”が、闇の中で待ち構えている。

プラズマも効かず、声もなく、ただ獲物を狩るために。

追い詰められたデレクは、一か八かの賭けに出る。

成功すれば生還、失敗すれば――自らの手で終わらせる覚悟で。

デレクは暗い異星の回廊を《NOVA》で全速力で駆け抜けた。プラズマブレードの縁をかすめる空気が、ピュウ、と鋭い音を立てた。


百メートル先に、ぼんやりとした影の群れが浮かび上がる。


黄色く光る目が、闇の中できらめいていた。


シルエットは人型に見えたが、異様に歪んでいて、四肢で這い回っている。手足はあり得ない角度にねじ曲がっていた。


デレクはディスプレイを拡大表示した。


動きは鋭く、不規則で、まるで昆虫じみている。ギザギザの黒い金属パーツが体中から突き出していた。


顔は無表情な仮面。琥珀色の目には虹彩がなく、感情のかけらも見えない。


ぼろぼろの布切れが引っかかり、関節が動くたびに、ヒラリ、ヒラリと揺れていた。


その中に、地元警備隊の紋章が見えた。


ぞわり、と背筋に寒気が走る。


銀河を旅してきたデレクですら、ここまで不気味な光景は滅多にない。


だが――こいつらには、どこか見覚えがあった。


こいつらは、実験室で作られたモンスターじゃない。


もとは、人間だった。


【デレク】「なあ、ヴァンダ。あのゾンビもどき、警備隊の制服着てんぞ。何がどうなった?」


【ヴァンダ】「不明です、デレク。推測ですが、彼らはかつて本当に警備隊員だったのでしょう。何かが、彼らを変異させたのです。ただ、それが何か、どうやってかは判断できません。」


この巨大なピラミッドの中には、哀れな隊員たちを捕らえ、肉と《ウォーディライ》テクノロジーで作り変える何かがいる。


そりゃ、警備隊が近寄らないわけだ。


怖気づいていた――当然だ。


本当なら、デレクも引き返すべきだった。


《NOVA》だって、ウォーディライ改造生物にどこまで通用するか、わかったもんじゃない。


甲冑の中で、心臓がドクンドクンとうるさく鳴った。


【デレク】「……中の奴ら、生きてんのか?」


【ヴァンダ】「臨床的には生存状態です。主生体機能は確認できます。ただし、意識があるかどうかは不明です。もしあれば、安楽死させるのが最も合理的でしょう。」


デレクは唾を飲み込んだ。


【デレク】「了解。」


たとえこんな姿になっていようと、人間を殺すのは後味が悪い。


だが、ヴァンダの言う通りかもしれない。


苦しみを断つことが、今できる唯一の慈悲だった。


問題は――


相手が《ウォーディライ》技術で武装されていることだ。


簡単には倒せない。


ここで、《NOVAアーマーMKVII》の最新アップグレードを試すしかない。


デレクは最も近くにいたクリーチャーたちに突っ込んだ。


ガシャンッ――!


天井から一体が落下してきた。ギラギラした金属の四肢を広げ、彼をかすめて背後の地面に叩きつけられる。


左右から二体が突進してきた。


前腕から突き出した双刃は、異形のかにはさみのようだった。


デレクはプラズマブレードを大きく薙ぎ払い、柔らかい何かを叩き切った。


ドプッと濃い黒い液体が飛び散り、床に落ちた途端、ジュウウと嫌な音を立てた。


ひときわ素早い一体が、胸めがけて一直線に突っ込んできた。


《戦術情報リレー起動。攻撃予測軌道を表示》


《ディスプレイに赤いラインが走った。》


デレクは反射的に反応し、プラズマブレードで軌道を逸らす。


バチバチバチッ――!


火花が散り、視界が白く染まったが、彼はターゲットを捉えたままだった。


《赤い矩形がディスプレイ上に点滅した。》


その中央に《有機組織》の文字が浮かび上がった。


【デレク】「ナイス、ヴァンダ。」


狙いを定め、すかさず斬りつける。


だが――


クリーチャーはクルリと振り向き、ギザギザの爪でブレードを挟み込んできた。


凄まじい力で刃を固定する。


ちっ、わかってたよ。


デレクは即座にブレードをオフにし、腕を引き抜く。


反対の手で、腹部めがけて上向きに斬り上げた。


ガンッ!


硬い外殻には刺さらなかったが、動きを止めるには十分だった。


デレクは続けざまに、今度はプラズマブレードを再点火し――


ズバァァ!


クリーチャーのむき出しの肉を一刀両断した。


裂け目から黒い煙と蒸気が噴き出し、床に落ちるとジュウジュウと音を立てる。


だがクリーチャーは、声ひとつ上げなかった。


痛みすら感じていない。


辺りは、不気味な沈黙だけが支配していた。


焦げた肉と溶けたプラスチックの悪臭が、フィルターを突き抜けて喉を焼き、胃をえぐった。


デレクは歯を食いしばり、プラズマブレードを横に引きずる。


ギャリッ!


刃は赤く光りながら、クリーチャーの体を真っ二つにした。


ぐしゃり。


肉と金属が絡み合った残骸が、床に崩れ落ちた。


《タクティカルリレー警告。接近中の敵反応》


デレクは反射的に身をひねった。


スパァッ――!


黒い双刃が空を切り、彼の肩先をかすめた。


刃は壁にめり込み、ズズズッと亀裂が広がった。


空間全体に甲高い音が響く。


デレクは凍りついた。


壁に刻まれた、あの深い裂け目を見つめる。


(……あれを貫通できるなら、俺のアーマーなんざ紙同然だな)


汗が噴き出し、即座にスーツに吸収された。


息苦しいほどの緊張感が、甲冑越しに全身を締め付ける。


二歩、後退。


そして即座にアーマーの質量を軽減モードへ切り替えた。


(耐えられねぇなら――避けろってことだ)


目の前のクリーチャーが刃を構え直した。


腹部の有機組織を守りつつ、じりじりと間合いを取る。


黄色い目がギラリと光る。


いやらしいほどに理性的な光。


――攻めてこない。


――待っている。


何を?


答えはすぐにわかった。


このクソピラミッドは、化け物の巣だ。


こいつは、仲間を待ってやがる。


ミニマップが警告を発した。


増援、接近中。


この場に留まれば、袋のネズミだ。


デレクは頭部めがけてフェイントを放ち、クリーチャーを壁際に追いやった。


すかさずブレードをオフにし、反転してダッシュ。


バシュッ――!


影の中から、さらに歪んだ形の怪物たちがぞろぞろと現れる。


壁、床、天井を這い回り、黄色い目をギラギラと光らせながら。


まるでピラミッドそのものが吐き出しているかのようだった。


(どれだけいる? 何百万年も……)


何人、何百人、何千人を飲み込んだ?


旅人、好奇心に駆られた地元民、子供、動物――。


すべて、喰われた。


そして、惑星政府はそれを隠した。


民を守るためじゃない。


壊れやすく、くだらねぇ宗教と、空っぽの信仰を守るために。


デレクは拳を握り締めた。


ミシミシ……とスーツの関節がきしむ。


(できることなら、こんな建物、ぶっ壊してやりてぇ)


だが、《NOVA》の融合炉を爆破したところで、このクソみたいなピラミッドに傷一つつかないかもしれない。


【ヴァンダ】「デレク、左手に通路を検出。数メートル先です。ミニマップにハイライト済み。急いでください。」


迷う暇はなかった。


デレクは一気に加速し、ネオンでマークされた細い通路へ突っ込んだ。


――聖母ヴァンダ、全宇宙ナビ界の女神様だな。


進路を塞ごうとするクリーチャーたちを寸前でかわし、


ギリギリで通路に滑り込んだ。


背後でドガンッと音が鳴り、二体の化け物が天井から落ちてきた。


デレクは脚部アクチュエーターをフル稼働させ、狭い通路を疾走する。


ドガドガドガッ――!


重たいブーツの反響音が壁に轟く。


(全銀河に俺の居場所知らせてんじゃねぇか)


だが今は、何よりもスピードが必要だった。


前方には敵影なし。


ミニマップも、進行方向にクリーチャーはいないと示していた。


追跡者の気配は背後に残っていたが――


足の速さではデレクが勝っていた。


【ヴァンダ】「次の分岐を右折してください。約百メートル先、大広間に到達します。」


デレクは即座に方向転換。


右へ、全速。


(広間、ね。つまり……めんどくせぇのが待ってるってことか)


だが、今さら選り好みはできない。


【デレク】「ヴァンダ、リアクター出力100%に戻せ。今ここで爆発とか、シャレにならん。」


【ヴァンダ】「了解。出力調整、完了しました。」


警告表示が赤ゾーンから抜け、アクチュエーターも安全圏に落ち着いた。


速度は少し落ちたが――


走行中に爆発するよりは、だいぶマシだ。


デレクは走りを続けながら息を整えた。


【デレク】「……このクソ迷路、まだ続くのか?」


【ヴァンダ】「はい。目標アーティファクトは、その広間に存在します。ただし、入手しても、それをピラミッド外へ運び出せる保証はありません。」


【デレク】「……はあ。励まされるわ。」


ため息をつく。


【デレク】「脱出プラン、今んとこ白紙な。コラールノードを引っこ抜いたら、全部シャットダウンしてくれると助かるんだが。」


【ヴァンダ】「もちろんです、デレク。そしてシャットダウンの前に、彼らは紅茶とクッキーを用意してあなたを歓迎するかもしれませんね。」


【デレク】「皮肉は俺の担当だって言っただろ。お前はナビだけしてろ。」


【ヴァンダ】「了解。奇跡は担当外ですが、最善を尽くします。」


【ヴァンダ】「警告。次の広間で、アーティファクト以外にも複数の生命体反応を検出。」


【デレク】「また蟹ゾンビか?」


【ヴァンダ】「いいえ。……もっと大きな何か、です。」


【デレク】「なぁ、俺、もう質問するのやめるわ。お前、ロクなニュース持ってこねぇし。スペックだけ。」


【ヴァンダ】「蟹型クリーチャーと同じ組成。ただし、形状や武装は不明です。ピラミッド内部の干渉がセンサーを阻害しています。」


デレクは眉をひそめ、苦々しく顔をしかめた。


広間にいる「何か」は、どう考えてもアーティファクトを守っている。


こっそり侵入? 無理だ。


正面突破? さらに無理。


しかも後ろからゾロゾロ追っかけてきてる。


(どうすんだよ、これ)


――だが。


【ヴァンダ】「ゴホン。頭の中で、ギーコギーコって音がしてます。……嫌な予感しかしませんね。」


【デレク】「は? 俺の作戦に外れなんてあるわけねーだろ? 見てな。」


【ヴァンダ】「詳細を。」


【デレク】「クローク装置、使う。」


【ヴァンダ】「……あのガラクタですか? 観光警備にすら通用しなかった代物ですが。」


【デレク】「わかってるって。」


【ヴァンダ】「……それが、いいんですか?」


通路の終端が見えてきた。


デレクは急減速し、疾走から歩きへ、そして停止。


【デレク】「いいから、クローク切り離せ。俺の天才的な作戦、拝めるチャンスだぞ。」


素早く周囲を確認。


通路は、静まり返っている。


時間はない。


撒いたとしても、すぐに追いつかれる。


【デレク】「準備できたか?」


【ヴァンダ】「はい。回収可能です。ただし、あなたの計画は理解不能です。」


(まあ、俺も細けぇとこまでは考えてねぇけどな)


心臓がドクンドクン鳴る。


失敗したら――後悔する間もなく終わる。


デレクは胸部プレートをスライドさせ、隠されたコンパートメントを露出。


中では、銀色のライトが心臓のように脈打っていた。


指先で、小さな金属筒をつまみ上げる。


クローク装置――傷だらけ、ロゴも消されているインチキ品。


【デレク】「内蔵バッテリー、どんくらいもつ?」


【ヴァンダ】「約三十分。ただし、すでに劣化が進行中です。」


【デレク】「十分だ。トラブル起こすにはな。」


【ヴァンダ】「その装置、すでに十分な問題児ですが。……で、具体的な作戦は?」


【デレク】「すぐわかる。」


(どうせ説明しても、ヴァンダには理解されねぇしな)


彼は気楽な歩調で広間へ向かった。


クリーチャーたちの追跡は、まだ音沙汰がない。


(上出来だ)


そして――


ずっと飲み込めずにいた言葉を、ようやく口にした。


【デレク】「なあ、ヴァンダ。……一つ、頼みがある。」


【ヴァンダ】「何です?」


喉が引きつる。


【デレク】「もし……もし俺が捕まって、ああなりそうになったら。


迷わず、NOVAのリアクター吹っ飛ばしてくれ。」


短い沈黙。


【ヴァンダ】「……あなたは、あの尊大で生意気なデレクの方が、ずっとマシでしたね。」


デレクは歯を食いしばる。


冗談じゃない。今は。


【デレク】「ヴァンダ、これは命令だ。」


【ヴァンダ】「了解。……必ず。」


デレクは、ゆっくりと頷いた。


これで、腹は決まった。


コラールノードを手に入れるか――


あるいは、ここで哀れな奴らと一緒に吹き飛ぶか。


どっちに転んでも、負けじゃねーよな。


―――


読んでいただきありがとうございます!次回もお楽しみに!

※本作は英語からの翻訳です。細心の注意を払って翻訳・編集を行っていますが、誤りや不自然な表現が含まれている場合があります。ご了承ください。

✉️ 感想、ぜひ聞かせてね!

「ここの表現ちょっと変かも?」とか「もっとこうした方が読みやすいかも!」と思ったら、気軽にコメントしてくれるとすごく嬉しいです☺️

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「プラズマも効かないとか聞いてないんですけど!?」 デレクの決死の突撃に、読んでるこちらの心拍数も急上昇しました。 静かに、確実に、じわじわと追い詰めてくる蟹ゾンビ(勝手に命名)に、背筋がぞわぞわ………
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