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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第一章 廃墟から聖都ロスメアへ
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第13章: 科学と魔法の境界線

四百キロのパワードスーツをまとったデレクは、ジャングルの奥深くへと突き進む。

彼の前に現れるのは、予測不能な脅威と、そして――常識を超えた存在だった。

【デレク】「よし、もう行くぞ。」

腕を組んで、顔には深いしかめ面。怒りと疲れの入り混じったその声が、洞窟内に低く響いた。

 

洞窟の壁に埋め込まれた色とりどりの結晶が、不気味な光を放ちながら辺りを照らしている。まるで異世界のような空間だった。

その背後では、リペア・ボットたちがカチャカチャと音を立てながらNOVAのアーマーを修理し続けていた。もう何時間もぶっ通しで作業していて、デレクはイライラしながら腕を鳴らす。

 

【ヴァンダ】「そんなに急ぐ理由でもあるの?」

イヤーピースからヴァンダの音声がパチパチとノイズ混じりに届く。

【デレク】「理由?ジャングルにいる時点で十分だろ!ここは──クソみたいなジャングルだぞ!」

口にしていた果実を飲み込み、バッと両手を投げ上げる。


【デレク】「道もわからねぇし、出会うモノは全部俺を殺しにくる。これが急ぐ理由じゃなけりゃ、何なんだよ!」


【ヴァンダ】「まあ、それも一理あるけど──」

【デレク】「それにリペア・ボットだ!」

彼はNOVAの周囲を飛び回っている──もはや小型とは呼べないサイズになったボットを指差した。ウィィン、カチッ、ガシャッと奇妙な音を立てながら、未知のツールでアーマーをいじっている。

【デレク】「見ろよ。出発前に積んだときと、もう別モンじゃねぇか。鉱石集めに行かせるたびに、戻ってくるたびに、なんか…進化してやがる。」

 

【ヴァンダ】「進化といっても、良い方向みたいだけど。」

彼女の声は、冷静ながらもどこか励ますような調子だった。

【ヴァンダ】「新しいツールと機能を獲得してるわ。NOVAの修復結果を見て。リアクターの効率は40%も向上、電力のリークも完全にゼロよ。」

 

【デレク】「……チッ」

彼の眉間に、深いシワが刻まれる。

【デレク】「それが問題だっつってんだよ。」

彼は鋭くNOVAを指差すと、苛立ちを隠さずに叫ぶ。

【デレク】「岩掘ったくらいで、どうやってそんな性能が出るんだ?!そもそもあのリアクター、物理的にここまで効率上がるわけねぇんだよ。少なくとも俺の知ってる宇宙じゃねぇ。」

目を細めて、吐き捨てるように続けた。

【デレク】「どう考えても、おかしいだろ。」

 

【ヴァンダ】「おかしいのは、科学で説明しようとするあなたの方かもね。この場所で起きてる現象が、あなたの科学の枠組みに縛られていないとしたら?」

 

【デレク】「……またそれかよ。」

鼻で笑って、イヤーピースに吐き捨てる。

【デレク】「お前はAIだろ?こっちが冷静さ失ってるのに、そっちまでぶっ壊れてどうすんだよ。理不尽なこと言うのは、俺の役目なんだよ。」

【ヴァンダ】「ちゃんと果たしてるみたいだけど。」

【デレク】「ハッ。」

 

【ヴァンダ】「自分が理性的だと思ってるみたいだけど、違うわ。あなたは、ただの──」

【デレク】「頑固者、ってか?」

【ヴァンダ】「そう。ここで起きてることが、あなたの信じてる科学を揺るがしてる。それを認めたくないだけよ。」


【デレク】「……ったく。」

彼は顔を手で覆いながら、ぼそりと吐き出す。

【デレク】「科学が一つじゃないみたいなこと言いやがって…」


【ヴァンダ】「プラズマキャノン、改造したわよね?その後、出力が魔法みたいに70%も上がったの。あの化け物の頭に、穴を二つ開けたでしょ?技術で説明できる?無理よ。あなたは悔しいの、あなたの大事な科学が──この場所の魔法に負けてるから。」


【デレク】「魔法に負けた?冗談じゃねぇよ。」

彼は手を振って、話を振り払おうとする。

【デレク】「科学が挑まれるのは、より優れた科学だけだ。」


だが──

その優れた科学は、自分にとってはもはや異星人の技術と変わらないレベルだった。それは「より優れた」という次元ではなく、もはや原始人がマイクロプロセッサをいじっているように感じるほど、桁違いに高度だった。

…だが、それでも。

【デレク】(解明さえできれば、俺にも制御できるかもしれない。)

 

ヴァンダは何も言わなかった。

その沈黙に、少しだけ救われる思いがした。

髪をかき上げて、重く息を吐く。

【デレク】(AI相手に口論って…どうかしてる。)

ここがNOVAを狂わせただけじゃない。自分の頭まで、じわじわ侵されてるのかもしれない。

 

――深呼吸。

違う。これはただのストレスだ。ここ数日の極限状態が、一気にのしかかってきてるだけ。

 

でも…どこかで誰かが、ワーディライ(古代文明)の技術を研究する秘密プロジェクトを動かしていたとしてもおかしくない。

自分だけが真相に近づいてるなんて、本気で思い込んでたのか?

そんなの、ただの思い上がりだった。

やつらは、自分の何倍もの資金と人員とリソースを抱えている。

そりゃあ、遥か先を行ってるに決まってる。

 

【デレク】(で、その「誰か」が──俺の行動に気づいた。尻尾を掴むために動いた。たぶんそれだけの話だ。)

どうやったのかはわからない。だが、ピラミッドから連れ出され、ここに放り込まれたのが偶然なんて思えなかった。

きっと、これはただの「警告」。あるいは「観察」。

【デレク】(こっちは──試されてる。)

 

拳をギュッと握る。

【デレク】(だがな──もし俺がこのクソ星から脱出できたら…)

 

奴らは、俺がこのクソ星から脱出しないよう神に祈っとけ。

――その時は、自分を敵に回したことを、心底後悔させてやる。

【ヴァンダ】「ねえ、ひとつ聞いていい?」

【デレク】「……何だよ、今度は。」

【ヴァンダ】「私の名前、「VANDA-Y」って記録されてるけど、どうして「Y」が付いてるの?普段は「ヴァンダ」ってしか呼ばないのに。調べたけど、どこにも由来が残ってないの。」


唐突すぎる。だが、何の話かは一瞬で理解できた。

「Y」──ユキの頭文字。

 

話したくなかった。今じゃない。たぶん、これからも。

口を開こうとして、言葉が詰まった。そして、口を閉じた。

 

【ヴァンダ】「質問、繰り返そうか?」

【デレク】「……いい。必要ない。」

咳払いし、声を落ち着けて続ける。

【デレク】「大した意味はねぇ。今その話をする理由が、俺にはわからない。」

 

彼は視線をそらし、洞窟の入口から差し込む白い光を見つめた。

背筋をゾワッとさせる感覚が這い上がった。

【デレク】(……外の空気でも吸うか。)

 

【ヴァンダ】「……了解。」

 

そのタイミングで、作業を終えたリペア・ボットが羽音を止め、ふわりと浮いてNOVAから離れ、彼の足元にそっと着地した。

デレクはそれを見て、わずかに肩の力を抜いた。

 

科学がどうとか魔法がどうとか、そんな話をするのは、まだ気が楽だ。

だが──

「ユキ」の話は、違う。


彼はNOVAのアーマーへと目を戻し、ゆっくりと一周しながら状態を確認していく。

凹みも焦げ跡も一切ない。

いや、そんなレベルじゃない。これはもはや修理じゃない。

「新品」だった。製造ラインから出てきたばかりのように、完璧だった。

 

【デレク】(俺のラボでも、ここまで仕上げるのは無理だったな……)

 

──ラボが恋しい。

心の底から、そう思った。

デレクはパネルを開き、中を覗き込んだ。

配線や回路の配置が、微妙ながらも根本的に変わっている。何のための改変か、完全にはわからない。

【デレク】(……帰れたら、徹底的に解析する。何ヶ月でも、何年でもかけて。)

 

でも今は──

このNOVAで、やれることをやるしかなかった。

自分でも修理できないものが組み込まれている、それがたまらなく腹立たしかった。

 

彼は息を鋭く吐き出した。

【デレク】「NOVA、出る準備完了。行くぞ。」

 

【ヴァンダ】「進路は?今はジャングルの中心部よ。文明の痕跡はまだ一つも見つかっていないわ。下手に動くより、ここに留まった方が──」

【デレク】「ここにいたら死ぬ。」

すぐさま遮った。

【デレク】「この洞窟は確かに資源もあるし、避難所としては完璧だ。でも長居すれば、でかいのが来る。あの大蛇の親玉か──それ以上かもしれない。だったら賭けるさ。ジャングルの端まで行って、何か文明の痕跡を探す。」

 

彼がNOVAの前に立つと、アーマーが花のように開いていく。

ガシャン──ガシャッ……シュゥゥ……

腕、脚、胴体、そして頭部が展開し、彼を迎え入れる。

内部には銀白色の光が満ち、リアクティブ・インパクト・ジェル・レイヤーが柔らかく反射する。

半透明のその衝撃吸収材は、これまでに何度も命を救ってくれた。

 

デレクは踵を返し、そのままアーマーの内部に身を預ける。

スーツが締まり、密閉が完了するまで、シューッという音と金属音が連続して響いた。

 

視界が切り替わる。

もう慣れきっていたNOVAのHUD越しの景色が、いつものように広がる。

もはや、これが「自分の目」だと錯覚するほどに。

 

 《オーリック・レベル3 アップグレード可能:1》

 

【ヴァンダ】「アップグレード可能よ。でも、例の金属球がもう一つ必要になると思う。」

【デレク】「ゲームかよ…あの球がNOVAに何をしたのか、まだ分かっちゃいねぇ。下手すりゃ次に撃った瞬間、左のキャノンが爆発するかもな。もしまた見つけたら、今度こそちゃんと調べてから使う。」

 

【ヴァンダ】「了解。ところで、リペア・ボットはどうする?今の大きさじゃ、NOVA内部には収納できないわよ。」

【デレク】「飛ばす。更新されたスペックも確認済みだ。推進力が強化されて、エネルギー効率も上がってる。それに、センサーもアップグレードされて、上空からミニマップに追加情報を送れる。上にいた方が使い勝手がいい。」

 

──それに、正直あいつらは少し不気味だ。

進化しすぎていて、自分の目が届かないところで何かやってる感じがある。

なら、物理的に距離を置いておく方がいい。

 

【ヴァンダ】「それで、鉱物は?」

【デレク】「は?」

【ヴァンダ】「リペア・ボットが修理中に集めた鉱物のことよ。」

 

デレクは、洞窟の隅に整然と積み上げられたカラフルな結晶の山に目をやる。

未知の鉱石、恐らくNOVAの急激な進化に関わった素材。

 

【デレク】「置いていく。今の最優先は、生きてこのジャングルを抜けることだ。わけわからん生物に食われる前に。もしくは、リアクターが切れる前にな。」

 

画面の下に、冷たく点滅する表示。

 《残量:28%》

 

ここまで減ったのは初めてだ。

どんな長期任務でも、ここまでギリギリにはならなかった。

そして今回は──終わりが見えない。

【デレク】「ヴァンダ、確認なんだが──あの《オーリック・レベル》ってやつ、お前は敵の強さを示してると考えてるんだよな?」

【ヴァンダ】「はい、デレク。これまでの観測結果から、その仮説が最も有力です。」


デレクは視線を上げ、遥か頭上に広がるジャングルの天蓋を見つめた。枝から枝へと飛び移る生物、這い回る影、空を舞う奇妙な羽音。

このジャングルは、生き物そのもののように脈動していた。

その中に、時折ふわりと浮かぶ、光の球体──


【デレク】「あの大蛇を倒したとき、《アイアン・スリー》にレベルアップしたって通知が出た。偶然とは思えねぇ。」


【ヴァンダ】「同感です。アイアン・フォーの個体を打ち倒した結果、レベルが再計算されたと考えるのが自然です。」

 

【デレク】「打ち倒したねぇ…」

正直、あれはギリギリだった。何度死にかけたか分からない。

だが、今さら泣き言を言っても仕方ない。


【デレク】「つまりだ。ここで生き延びたければ、もっと強い奴らを倒して、レベルを上げるしかないってことだろ。」

【ヴァンダ】「論理的には、それが最も妥当な結論です。」


【デレク】「論理的ってのがまた腹立つな。どこが論理だよ、こんなの。」

でも、文句ばかり言ってても仕方がない。この世界に適応するしかない。

ルールが違うなら、学んで、使って、勝つだけだ。


【デレク】「今、俺がジャングルの食物連鎖でどのあたりにいるのか知らないが──レベル3じゃ、たぶんかなり下っ端だな。」

もしレベルが10段階で済むならまだいい。でも、50?100?

そんな奴らがゴロゴロしてる世界だったら──考えただけで背筋が冷える。

 

【ヴァンダ】「良い観察ですね。早めのレベルアップを検討する価値はあります。外に何が待っているか分かりませんし。」

【デレク】「そうだな。最優先ではねぇが、チャンスがあれば、ってとこだ。」

 

彼は思考指令で、ボットに洞窟内へビーコンを設置させた。

もし再び避難が必要になったとき、ここへ戻れるように。

あるいは──結晶鉱石を回収しに来るためにも。

 

そのとき、木々の間を漂っていた小さな光球が、彼の前にふわりと浮かんできた。

【デレク】「……」

じっとそれを見つめる。

──持って行けるか?

重さはなさそうだ。

 

胸部パネルを開き、以前金属球を入れた小型コンパートメントを開く。

慎重に光球を滑り込ませ、パネルを閉じた。

 

【デレク】「ヴァンダ。このエネルギー花粉──考えられる限りの分析をしてくれ。」

【ヴァンダ】「了解しました、デレク。」

 

顔を上げると──数メートル先に、青い毛皮のサルが座っていた。

手には赤い果実。昨日殺されかけた種族にしては、妙に落ち着いていた。

【デレク】「……何食ってんだ、それ。うまいのか?」

彼の腹が、グゥウと鳴る。

NOVAは代謝を補助してくれるが、空腹感までは消してくれない。

 

サルは無言で果実をかじり、垂れた赤い汁を腕でぬぐって、ペロリと舐めとった。

【デレク】「……そうか。楽しめよ。」

肩をすくめ、背を向けて歩き出す。

あのクソ猿どもが電撃を浴びせてこないだけマシだと思いながら── 

 

 ブゥゥゥーーーッ!

警報音が頭内で鳴り響き、NOVAの自動防衛システムが彼を横へ跳ね飛ばす。

真っ赤な物体が飛来し、彼の横をかすめて、数メートル先の茂みに突き刺さった。

 

振り返る。サルは、いない。

 

【デレク】「……ちっ。」

油断した。

茂みに近づき、枝をかき分ける。そこには──

 

さっきサルが食べていたのと同じ果実が、落ちていた。

 

【デレク】「……贈り物?」

誰が予想できただろう?

 

拾い上げて観察する。

外側はトゲの丸いオレンジのような質感。

バイザーを開き、匂いを嗅ぐ。

──悪くない。スイカに似た甘い香りがする。

 

【デレク】「ヴァンダ、食べても平気そうか?」

【ヴァンダ】「分析結果によれば、危険性は低いと判断されます。この果実のデータはデータベースにありませんが、糖質、繊維質、タンパク質の構成はあなたの生物学に適合しています。毒性も未知物質も検出されません。消化可能です。」

【ヴァンダ】「味に関しては…あなた次第ですね。まさか魔法が怖いんじゃないでしょうね?」

【デレク】「……からかうな。」

 

果実を口に運ぼうとしたその時──

 

 

 ガァァァァァアアアアアアアッッ!!

 

ジャングルが震えた。

ライオンの咆哮と象の唸り声を混ぜたような、地の底から響く轟音。

デレクの胃が縮こまり、手の中の果実が装甲の脚部に落ちて──

 

 パァンッ!

 

果実は潰れ、NOVAの脚部に真っ赤な汁が飛び散る。

【デレク】「……なんだよ、今の。」

 

さっきの大蛇なんて比じゃねぇ。

あれよりデカい。

あれより怒ってる。

 

【デレク】(聞こえただけマシだ…こっちから行く理由はねぇ。勝手に怒ってろ。)

 

即座に航路を再設定。

音のした方向から全力で離れるように移動を開始する。

ノイズを最小限に抑えながら──

 

 

その時、もう一つの音が届いた。

 

 

 子供の──悲鳴。


【作者コメント】

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


デレクと狂信者(?)の共闘、いかがでしたでしょうか?


これからも激しいバトルとデレクの毒舌(?)が続きますので、ぜひお楽しみに!


もしよろしければ、「いいね」や「フォロー」をしていただけると励みになります!


応援、よろしくお願いします!


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