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新たな展開

登場人物が段違いに多いので、名前は憶える必要がありません。

名前が分からなくても読める作品です。

 何とか隠しキャラを含める全員と恋愛イベント第二段階までクリアし、このあとの恋愛ルートに入る準備が整った。これを越えられなければ、またリセットされてしまう。それだけは避けたい。

 正直、私本当に頑張ったと思う。寝る間を惜しんで三十人越えの対象キャラとバッティングしないようデート・デート・イベント・デートの繰り返し。

 ヘロヘロになったけど、これで間違いが無ければもう巻き戻らない……はず。

 確証はないけれど。


 ここまで来たらあとには引けないし、もし巻き戻ったらもう何もしないでバッドエンド迎えるからいいもん!


 半ばやけくそだけど自分でも最善を尽くしたし、これ以上の負荷は精神的にも厳しい。なるようになれ!と、その日(リスタート)の前夜を迎えた私は、布団をえいっと被って眠りについた。


――はず、だったんだけど?


 コンコン。


 部屋の戸を叩く音がする。

 興奮してまだ眠れないので、誰が来たのかとおそるおそる扉を開くと……そこには攻略キャラ全員が列をなしていた。ある意味壮観と言うか、よくもまあこんなにきれいに列が作れるわねと感心するほどに綺麗な隊列だった。

 よく見ると暗殺者のデイビットまでが並んでいるので、皆さまお行儀がよろしいわねという感想しか出てこない。

 戸を叩いたのは、第二王子マシューだった。


「夜遅くにすまない。わたしたちの話を聞いてくれるか?」

「どうされたのか理解できませんが、全員を部屋に招き入れるほど私たち団員の部屋は広くありません。外でもよろしいですか?」


 ぞろぞろと三十人プラスアルファを引き連れて、部屋から少し離れた騎士団寮に付属されている運動場までやってきた。

 寝巻きに団服のジャケットを羽織っただけでは少し寒く感じるが、私だって騎士。少しくらい寒いのは我慢する。


 それよりも。


 なぜ全員が私を取り囲んでいるのだろうか。恋愛ルートに入る前の、()()()()()()()()()()()()()()()()の好感度はそれなりに上がっているため、私を好意的に見ているはずで……殺される、とかは流石に無いと思いたい。


――まさか……騎士団に女の身で入ったことを断罪されるの? それとも私が男を手玉に取る淫らな女とかで罰するつもり……? どちらにしても、ピンチでは?


 ドキドキしながら全員の顔をひとりひとり眺める。すると、第二王子のマシューが口を開いた。


「クラリオ……いや、クラリス。わたしたちは全員で話し合いをしたんだ。お前が誰を選んでも後悔も嫉妬もしない。どんな審判が下ろうと誰も憎んだりしない」

「どう言うことですか? 全く意図をはかりかねますが」


 そう言うと、私を取り囲んだ全員が一斉に膝を折る。全員がバラの花を一輪手に持ち、私に向かって掲げている。正直、面くらった。


「こ、これは? どうしたのですか?」

「どうもなにも、私たちはクラリスを愛している。それは全員変わらない事実だ。それならば、君が唯一を選んでくれれば祝福こそすれ、恨むことはないと誓おう」


「誓おう」(×(かける)マシューを除いた三十三人)


「さあ、選んでくれ」(×(かける)三十四人、今度は全員で)


 ひええええ! 圧巻の三十人越えボイス!

 どのキャラもリセットされてしまったとはいえ、一度は恋愛ルートに入ることができるほど愛したキャラたち。この中からひとりを選べなんて無理よ、無理。しかも、今すぐなんて出来るわけがないじゃない。


 ピコーン!


 ここで、今まで見たことのない選択肢が目の前に現れた。ここにいる全員の名前のほかに【誰も選ばない】という選択肢がある。

 ここまで来て「誰も選ばない」なんて選択肢が出てくることに驚いたけど、今まで見たことのないものだったから、恐る恐るそれを選んだ。


【誰も選ばない】


 すると、何もかもが光に包まれて真っ白で見えなくなってしまった。思わず身構えて目を瞑る。

 明るさを感じなくなったのでゆっくりと目を開けると、練習場には誰もいなくなっていた。


 もしかして、また再スタート?


 肩を落としてとぼとぼと自室を目指して歩きはじめると、寮の前にアルベルトが立っていた。


「アル……どうしたの?」

「いや、お前が誰も選ばなかったから、全員にお前を愛するチャンスが生まれたことになった。()()()()()()()()()()()()()()と全員で合意したよ」


 そう言って私を力いっぱい抱きしめたアルベルトは、少し震えている。


「オレは昔からお前のことが好きだ。だから、どうかオレを……」


 安心させるように背中をよしよしと撫でると、抱きしめる力が次第に優しくなった。


「どうしたの、アル。あなたは強い男なんじゃなかったの? ペンは剣よりも強いんじゃなかったの? 泣くなんて、()()()ない」

「うるさい。お前はオレの何を知っているんだ? お前は強い。だが、オレは男でお前をこうすることも簡単なんだ」


 アルベルトは、力強く私の両腕を掴むと後ろ手に組んで、片方の手で押さえつけ離さず、もう一方の手で私の顎を上げると無理やりキスを……


「待って!」


 なんとか身をよじり、アルベルトの拘束から逃れる。


「何? どうしたの、いきなり。力ずくじゃなくて、どうせならもう少しムードを演出して欲しいかな」

「どうやらオレも……今のお前をきちんと知らなかったらしい」


 未遂のキスを惜しむように私の唇を指でなぞり、アルベルトはにっこりと見たこともないくらい綺麗な笑顔を作った。


「また、今度はきちんと準備してお前を誘いにくるよ。次は逃げるなよ?」

「えっ……?」


 立ち去るアルベルトを見送っていると、次は後ろから暗殺者のデイビットが抱き付いてきて、私を拘束する。


「ボクはクリスのことが好きだ。愛を知らなかったボクに愛を教えてくれた人……一生大事にするから、ボクを選んで?」


 懇願するような言葉に少し心はグラつきながらも、状況が把握できないのでイエスと言うのは難しく、暫く黙り込んでしまった。


「ボクじゃ、だめ?」

「そんなことない。そんなことないんだけど、少し混乱していて……時間をくれないかな」

「そっか、そうだよね。じゃあ、待つよ。ボクがクリスの王子様になれるように、うんと愛してあげる。待ってるね?」


 デイビットがその場を離れる。

 私は立て続けに浴びせられた甘い言葉と、抱きしめられた身体の余韻でその場から動けずにいた。


「一体、何が起こったの?」


 呆然と立ちすくむ私は、ようやくシステムからのメッセージが来ていることに気が付き、メッセージを開封した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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皆様のいいね・ブクマ・感想・レビューでこれまで執筆を続けることができています。いつも本当にありがとうございます。

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