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三十人プラスアルファ

登場人物が段違いに多い作品ですが、短編なので名前を憶える必要はありません。

 全員と親密度を上げることに成功したので、次は隠しキャラの攻略のため動き始める。

 このあと、隠しキャラである「料理長チャールズ」「暗殺者デイビット」「第二王子マシュー」「幼馴染アルベルト」を出現させなければ、このターンでもまた再スタートになってしまう可能性が高い。


 料理長は一緒に料理を作れば親密度が勝手に上がっていく。暗殺者デイビットは出現条件が少し厳しくて「副騎士団長ニコラ」と第二段階まで恋愛を進め、かつ「第二王子マシュー」の護衛イベントを出現させなければ登場しない。


 そして、デイビットを登場させるために必要な第二王子マシューは、騎士団長ゲインと王宮魔導士アルト、この二人を早めに攻略して信頼を得なければ、護衛イベントに同行できず出会うことも難しい。


 幼馴染のアルベルトは同室のロバートと仲が良いため、ロバートが休日に街に行き、アルベルトと飲み比べをすることで再会するというシナリオの為、ロバートの動きさえ把握していれば問題なく登場する……はず。


 自分で言うのもなんだけど、ゲームで全キャラ攻略をしておいて本当に良かったと思う。ゲームをはじめてしまえば前世でプレイしたゲームの知識と、この身体になってから繰り返した三十人の恋愛ルート突入までの記憶がはっきり蘇ってくる。

 こんな無理ゲーを一度でも全攻略した自分を褒めたい。



 毎日料理を作りチャールズとの仲を深め、ニコラとゲイン、アルトの三人を中心に他のキャラクターとも仲良くする。


 正直、恋愛を楽しむどころかイベント厨みたいになっているので少々シンドイ。トキメキがない。


 休む時間なんてないけど、少しだけ土手の芝生に寝転んで目を閉じた。暫くすると、瞼の裏まで透けてしまうほど強い日差しが遮られ、視線を感じる。

 ゆっくり目を開けると、私を覗き込んでいたのはこのタイミングで出てくるはずのない「幼馴染アルベルト」だった。


「アル? どうしたんだい、こんなところで」

「どうしたはこっちのセリフだ。お前、自分が女だと言う自覚はあるのか?」


 寝ころんだまま答える。


「ふふ、自覚はあまりないかもな。私は女らしい体つきでもないし、身体を動かす方が好きだから」


 そう言うと、アルベルトは顔を赤くして目をそらし、何かぼそっと呟いた。


「ばか……十分、女らしいだろ……」


 良く聞こえなかったので立ち上がり、近付いて「何を言ったの?」と顔を寄せると、アルベルトの顔は信じられないほど真っ赤に染まった。

 子どもの頃のように抱き付いて「何だよ」と羽交い絞めにすると、アルベルトは抵抗して私を振り払うと、少し上ずった声で止めろと叫び後ずさった。


「えー、そんなこと言うなよ。お前と私の仲じゃないか」

「お前が考える仲と、オレが考えている仲は……違うんだよ」

「どういう意……あ~あ、行っちゃった」


 走って逃げるアルベルトの後ろ姿を見送る。ここまではすべて計算済みの行動だけど、いつものシナリオと違う出現ルートがあったことに驚いた。


「アルベルトは居酒屋でしか再会できないと思ってた。実は他にも隠しルートが存在しているとしたら、今回もクリアできない……?」


 また失敗して、全員を相手しながら攻略を進めることになると思うとゾッとする。()()()()()()()()()()()()は、既にもう二度とやりたくないくらいキツい。

 少しでも慎重に行かなければと深呼吸を繰り返し、頭をクリアにしていく。


 ふーっと息を吐いたところで、今度は背後から声をかけられる。


「どうしたんだ、クリス。こんなところで何をしている?」


 現れたのは騎士団長のゲインだ。一つ目のトリガーである「女であることを知られる」というイベントはクリア済みで、次のイベントは一緒にトラブルに巻き込まれるというもの。トラブルは複数あるがランダム出現で、もし今発動するとしたら「川に落ちる」しかない。

 ずぶぬれになるのは何度ループしても好きになれないけど、その後のご褒美スチルが最高すぎて頑張れる。


「団長、どうされたんですか?」

「いや……お前がここで休んでいるのを見かけてな。さっきの男は誰だ?」


 来た! それって嫉妬ですよね?

 もう既に親密度がそれなりに上がっている証拠だ。ゲインは私の最推しキャラで、最初に攻略しようとしたキャラだ。

 私よりも身長が高いゲインの顔を見上げると、長いまつげがキラキラと陽の光を反射して、整った顔が更に美しく輝いている。


「団長……綺麗です」

「アホ! 俺の顔に見とれるより先に情報を出せ」

「はいっ! 先程の男は私の幼馴染で新聞記者をしているアルベルトです」


 新聞記者は仮の姿で、本当は情報屋なんだけど……真実を伝えると面倒そうだからこの場では黙っておく。


「幼馴染……随分仲が良さそうだったな」

「そうですか? 幼馴染ですからあんなものですよ」

「そう言うものか。俺には幼馴染はいないからな。お前のように可愛らしい幼馴染は」


 そう言ってゲインが私の顎をクイっと上げる。胸の鼓動が早鐘のように打って、二人だけの時間……のはずが、どこからか犬が飛び出してきて、私の足にぶつかったせいで体勢が崩れる。とっさにゲインの服を掴んだけど、どうにもならなくて二人とも土手を転げ落ち、川に落ちてしまった。


 それなりに深い川から這い上がると、ゲインは私を見てぎょっとして顔をそむける。


「頼む、隠してもらえないだろうか」


 耳まで真っ赤なゲインを横目に、第二段階のイベントを無事終えることができて、ホッとする私がいたのだった。


(強くて負け知らずのゲインが案外ウブ設定なのが可愛くて、このイベントはずぶぬれ不可避だけど、控えめに言って好きなんだよね~。ニヤニヤ)

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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皆様のいいね・ブクマ・感想・レビューでこれまで執筆を続けることができています。いつも本当にありがとうございます。

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