表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

Re:スタート

このお話は、主人公がゲームを先に進められるまでを描いた1万文字ほどの短編です。

攻略風景をコメディタッチで楽しんでいただけます。激甘恋愛ではありませんのでご注意ください。

 鐘の音が美しく響き渡る。


 私がゆっくり目を開けると、いつもと同じ見慣れた景色が飛び込んでくる。

 自室の窓から見える景色は、空が濃紺から薄い青に変わり始め、裾野が淡い(べに)に染まりながら徐々に明るくなるのを見つめてため息をついた。


「戻ってきちゃった」


 私の身体は、攻略対象が多すぎて全攻略無理ゲーと呼ばれている乙女ゲーム「花の騎士団で捕まえて」の主人公・クラリスに生まれ変わり、ゲームの同じ部分をずっと繰り返している。

 この世界に転生してからうんざりするほどの回数をループし、実に三十回目の恋愛ルートに入る直前で巻き戻ってしまった。


「また間違えちゃったのか。私の選択肢のどこが悪いの」


 最初は王道狙いでメインルート「騎士団長ゲイン」をクリアしようとして動き、そのまま恋愛ルートに入ると思った頃に引き戻された。それならと、次は「王宮魔導士アルト」を狙って動き、恋愛ルート寸前で引き戻された。

 こうして好みのキャラから順に試し、恋愛ルートに入れるよう頑張った。


 この乙女ゲームは文字通り「騎士団」の全員が攻略対象で、その対象は軽く三十を超える。主人公(わたし)は男装の麗人として騎士団に入団し、正体がバレないように動きながら恋愛していくと言うシミュレーションゲーム。


「ああもう! 攻略キャラ何人だと思ってるのよ! しかも全員と恋愛ルート直前まで行った私の功績帰して! もう同じ展開は飽きた、飽きたぁぁ!」


 攻略対象がダメなのかと思って、再スタートするたびにターゲットを変更し、ひとりずつ足元を固めて恋愛イベントを進めてきた。それなのに、三十人目もクリアすることなく時間が巻き戻ってしまった。

 もしかしたら、何かのバグの可能性はないだろうかと疑ってしまう。


「何か見落としがあったのかな」


 今までのことを紙に書き出してみる。けど、三十人全部の攻略詳細なんて思い出せるはずもなく……断片的でもいいからと書き出すが打開策が浮かばない。


 もしかして、特定の人物だけじゃなくて同時攻略しないといけない、とか?


 私が転生前にこのゲームをプレイしていた時は、同時攻略が出来た人数は最低でも五人で、それ以上に同時攻略を進めようとすると、どのキャラとも中途半端にしか親密度を上げられなかった。


 さ、三十人同時攻略なんて無理すぎるけど、どうせクリア条件が満たされていなければ再スタートになるんだし、やってみるに越したことはないよね。

 どちらにしろ残っているのは隠しキャラだけ。誰かとの親密度を上げないと出てこないキャラばかりだし、複数同時攻略で全キャラと一定値以上仲良くなる。これよ!


 気合を入れてベッドから起き上がり、着替えて攻略するための条件を思い出しながら紙に書き出す。

 幸い1日の行動に縛りがあるゲームとは違い、対象キャラに使える時間は十分ある。よく考えて時間を有効に使えば何とかなりそうだ。何より私にはこの世界(ゲーム)の知識がある。割とやり込んだ方だし、何とかなるはずだ。


 初日はできるだけ全員と交流をする。もうこの時点で無理ゲーなんだけど、慰労会という飲み会で全員を呼び出し、その場にやってきた全員とスキンシップ&話をして親密度を上げよう大作戦を決行した。

 結構大変だったけど、翌日は全員が入れ代わり立ち代わりわざわざ挨拶に来てくれたので、手ごたえはまずまずだ。


 続いて、全員と打ち込み。剣と剣を交えるのが騎士としては一番の語らい。

 昨日の今日で大変ではあったけど、全員と剣を交えることができ、こちらも少しは親密度が上がったみたい。

 元々相性の良いキャラクターからは個別のお誘いまでいただいちゃったし、一気に上げられるキャラは早いうちに親密度を上げておく。

 正直一日で十人ものキャラクターと仕事のあとでデートをするのはシンドイんだけど、三十人プラスアルファの数を()()()には、私自身が動かなければ達成することは無理だから仕方がない。


 そうすると、五日目には親密度の良いキャラから順に恋愛イベントが発生する。

 これは過去最速記録だ。恋愛イベントは全て取りこぼしなく()()()()おかないと、恋愛ルートには絶対入らない。


 最初に恋愛イベントが発生したのは、私と相性が良い同室のロバートだった。


「クリス、お前……女だったのか?」


 うっかり鍵をかけ忘れ、シャワー姿を見られてしまったのがきっかけだ。

 もちろん、これはシナリオ通りの展開なので私は動じない。ロバートとの恋愛を進めたくない場合は鍵をかければいいだけだから、わざと開けてあった。


「お願いだ、秘密にしてほしい」


 タオルで前を隠したまま、わざと胸の感触が伝わる距離までロバートに詰め寄る。耳まで真っ赤にしながらも、私の裸を見ないよう顔を逸らせたロバートは「わかった」と小さく呟きシャワールームを出ていく。

 このイベントをきっかけに、どのキャラとも最速記録を達成できるのではないかと思うほど、ひっきりなしに恋愛イベントが発生した。


 どのイベントも最初は私が女だと気付かれるところから始まるので、ゲームがリスタートして()()()()()()で騎士団の全員が私を女だと認識してしまう状況に至った。


 おかけで女であることを隠す必要はくなってしまったけど、一応全員秘密にしてくれているみたい。


 私は「ここからが本番」と、ふんどしを締め直す勢いで気合を入れ直した。

面白いと思ったら、ページ下の方にあるいいねをお願い致します。

読んでくださった皆様のいいね・ブクマ・感想・レビューで執筆を続けることができています。

いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ