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ストーリア・ディ・ロッタ  作者: 乙訓野添
第一章 非モテ脱却
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4 彼女いない歴、卒業

 チャットと並行してメル友作戦も継続していたのだが、新たに女性と会う事になった。この頃には、待ち合わせ場所から行く店まで、パッパと決めれる様になっていた。待ち合わせ場所に居た女性は、正直なところ、ルックスは良いとは言えなかった。まぁ、まだそれは良いとして、太鼓腹だった。スイカかブイでも入ってるんじゃないか、と思うくらい。

 ともあれ、お店に入って、30分ほどお話ししたら、その人の好きになれそうな所を見つけ出すのは、いつもの事である。30分経っても好きになれそうな所がない人とは、会話力を上げるための練習試合と思うことにしているが、その人は優しくて波長があった気がした。そこで、思い切って、駅のホームで言ってみた。


 「もし、よかったら、自分と付き合ってもらえませんか?」


 するとその子は、にっこりと笑って返事した。


 「こんな私でよかったら、よろしくお願いします」


 この瞬間、「彼女いない歴=年齢」が終わりを告げた。これまでの人生で、努力は報われないと思ってきたが、初めて努力が報われた気がした。そんな感慨もひとしお、目の前の子が「彼女」になった途端の変化に驚いた。ボディータッチと密着感が一気に倍増したのだ。いわゆる、イチャコラした感じである。これまでの人生で、こんなに近くに女性がいた事はなかった。「彼女いない歴」が終わった途端に、劇的な変化があったのである。

 分かれて家路に着いてからも、メールのやり取りは頻繁にした。しかも内容は、徐々に彼氏彼女のそれになっていく。今までの社交辞令の積み重ねのメールとは、明らかに違うのだ。その話しの中で、自分は大事な事を彼女に伝えていた。それは、自分がこれまで女性経験がなく、セックスもした事がない、という事だ。引かれるかな、と思ったが、そんな事は全然なかった。むしろ、自分が彼氏の初めての女になることに、ちょっと嬉しさを感じている様だった。

 彼女は実家暮らしという事で、一人暮らしをしてる自分に興味津々だった。そして次の休みの日にウチに来るという。その頃自分が住んでた所は、築40年の木造モルタル、風呂なし、和式の水洗トイレで、今から考えたら、とても女性を呼べる様な部屋ではない。自分もその事は気になっていて、その様に伝えたのだが、それでも良いから行きたい、という事だった。

 1階の道路側に面した部屋に上がった彼女は、物珍しさで興奮気味だった。引かれたらどうしよう、と思っていたのが杞憂に済んで良かった。和気藹々と会話を楽しんでいたのだが、会話が少し途切れた時、不意に彼女が言い出した。


 「実は、私、言ってなかった事があるの」


 なんだなんだと心の中で身構えつつ、その先を促すと、彼女はサイドバックから折りたたんだ紙を取り出し、それを広げて自分に見せてきた。


 「私の家、ここの信者なの」


 それはとある規模のでかい宗教団体のチラシだった。心の中で2、3歩よろめいた。そういう事はさ、付き合う前に言ってくれないかなぁ。彼女は続けた。


 「でも、一緒に信仰してくれとか言わないから。二人にはこれを持ち込まないから安心して」


 彼女も、こちらの反応を不安げに伺っている。自分は内心「ええ〜〜!」という気分だったが、勧誘されてる訳でもないし、持ち込まないと言っている以上は、これを理由に振るというのもな、と思った。それにこの後にあるであろう事も考えると……


 「うん、まぁ、いいよ」


 彼女の顔が、パッと明るくなった。ルックスはイマイチだけど、明るい表情は可愛らしく見える。好きな相手にしか見せない表情ってやつなのかもしれない。やっぱり彼女ってのは、良いもんだな。

 その後も、他愛のない会話を楽しんだ。時間はどんどん過ぎていく。外はいい加減真っ暗だ。今日は彼女は友達の家でお泊まりだと親には言ってきたらしい。彼氏だというと、あれこれ詮索されるのかもしれない。なんにしても、今日はここで泊まるというのだ。なんだかすごいな。半年前まで、「彼女って何?おいしいの?」みたいな事思ったり言ったりしてたのに、その「彼女」なる人が自分の横に居るなんて。しかも、自分の住んでる部屋に居るなんて。そして、今夜ここで泊まっていくなんて。何があるか、何が起こるか、分かってるんだろうか。いや、分かってるんだろうな。だから、ここに居るんだ。

 もう、この頃になると、何を会話してるか、分からない感じだった。いや、ちゃんと会話はしてるんだが、頭の半分は、隣の部屋に意識が行ってしまっている。そのベッドの脇のサイドボードの一番上の引き出しの中に行ってしまっている。そこにどうやって、二人を持っていくか。そこでどうするのか。そればっかり考えてしまっていた。期待と不安が混じり合った、それを勇気と計画がかき混ぜている様な、自分でも分からない初めての感覚だった。

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