3 チャットで学ぶ
メル友大作戦のお陰で、生身の女性と会ったり話ししたりする事に大分なれてはきた。しかし、戦績は10戦連敗。原因も分からず、どうにも処置なしの状態だった。これでは頑張ろうにも頑張れない。そんな折り、某掲示板で、とあるチャットが入れ食いだという情報を見た。チャットという言葉を初めてこの時知ったのだが、とりあえず、そのチャットを見に行く事にした。
チャットというのは、リアルタイムで複数の利用者がメッセージを投稿するシステムで、各々テーマによってルームが分かれている。人の多いルームだと、機関銃の様にメッセージが流れていく。とても入り込む余地がない。では、どの辺りで「入れ食い」になるのか、というと、親しいメンバーが集まった小規模のルームで、親しくなった人たちが会ったり付き合ったり、という事らしい。また、出会いを求めるルームもあり、そこで知り合った人に個人的にメッセージを送る事で、メル友同様の事も出来ると分かった。
そこで試しに、入り込めそうなルームに参加して、会話してみる事にした。少人数なら、キーボード入力でも会話についていけそうだ。元より、仕事の関係でブラインドタッチは得意なのである。そして、チャットで会話するのが、意外にも楽しい事が分かってきた。コミュニケーションはテキストであるが、普通に会話しているのと変わらないのだ。出会いはともかく、どハマりした。それこそ、寝る間を惜しんでチャットにハマり込んだのである。
一方で、出会いの方も力を抜かなかった。最初は勝手が分からなかったが、ルームで知り合った出会いの「先輩」に教えを乞うた。その人の教えは、こうだった。
「とにかく、女性のIDには片っ端からメッセンジャーで挨拶入れる事」
「回線の向こうには生身の人間がいると思う事」
「なので、返事きた人とは、なるべく丁寧に会話して、先に繋げる事」
「親しくなって、会いたくなった人とは、飛行機の距離でも会いにいく覚悟を持つ事」
などなど。最後のアドバイスは、「その位の覚悟がなきゃ、出会う事なんか出来ないよ」と言われた。そして、もう一つ。
「会えないチャットは時間の無駄」
という事も言われた。プロフに嘘を盛らないとか、丁寧な言葉遣いを心がけるとか、逆ギレしないといった事は、実際付き合うの前提なら守らなければならない条件だが、だからといって、下手に出たのでは付き合う相手としての株を下げてしまう。女性の中には、暇つぶしでチャットしている人もいて、そういう手合いはいくら丁寧な会話を心がけていても、結局は会えないので時間の無駄になる。そういうのを見極められる様になって、さっと次にチャレンジで、時間を有効に使おう、という意味だった。
その教えに従って、メッセンジャーで挨拶を送りまくった。当時は「コン!」みたいな、「こんにちは」を簡略した挨拶を飛ばす事が多かったが、自分はちゃんと
「初めまして。プロフを見て関心を持ちました」
といった様な文章を書いてメッセを飛ばしていた。鳴き声でなく、言葉でないと、まずは返事もらえないと思ったからだ。しかし、実際に返事が来るのは、100本出して1本あるかないかである。しかも、話しをしたその日は良いのだが、翌日、翌々日となると、段々会話が続かなくなるケースも多かった。その意味では、メル友なんかよりも、出会いに対する意識が全然低かったのである。
個別のメッセンジャー作戦は、あまり効果がなかったのであるが、チャットルームの方では、バーチャルでありながら、まるでリアルでありがちな人間関係の様相が出始めていた。親しくなる一方で、嫌われたり、嫉妬したり、そういった感情的なものが、チャットの世界にはあったのである。これがメル友サイトとの決定的な違いだと感じた。リアルタイムで会話できるのであるから、その場に人がいなくても、居るのと変わらない状況なのだ。そして、他の人が立ち上げたルームに顔を出しているというのは、自分はそこの客であって、好きには出来ない、という事である。
ほどなくして、自分でもルームを立ち上げる様になった。他のルームで仲良くなった人が来てくれる様になった。ルームでの会話は、出来るだけ面白おかしい会話を心がけた。
会話があれば、そこに人は集まるものである。ルームでの会話は、大体、夜中1時前にはお開きにする様にしてた。しかし、勝負はここからであった。ルームに来た女性と、個別にメッセンジャーで話しをするのである。これは単発でメッセンジャーを飛ばすよりは、はるかに効果的であった。なぜなら、ルームで十分親しくなった上での、個別の会話だからだ。しかも、一人とだけでなく、時によっては、3人くらい同時に個別でメッセンジャーで会話したりもしていた。違う話しを3人としなければならないので、結構頭が疲れる作業ではあるのだが、どの子が芽吹くは分からない。一切、気をぬく事は出来なかった。
そして、これらの努力は、やがて実っていくのである。




