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ストーリア・ディ・ロッタ  作者: 乙訓野添
プロローグ
1/7

1 初恋

 自分が男である、というのは、記憶にもない物心ついた時から自覚があった。この世には男がいて女がいる、というのは、その頃には理解があったと思う。しかし、男とは違って、女とは仲良くは出来てなかった。妹といい、近所の同級生の女子といい、お互いに嫌い合っていた様に思う。

 それがもっとも顕著だったのは、小学校3年生の頃である。この頃の女子というのは、子供から徐々に女になっていく年頃で、それ故に攻撃性の強い女子もいたりする。今でも記憶に残っているのは、「終わりの会」だ。終わりの会というのは、担任の先生から連絡事項を受けたり、といった事務的な事柄が本来の目的だが、どうした訳か、小学校3年生の時は、何かあると弾劾裁判の場となった。例えば、こんな具合である。


 「今日、野添くんは、誰それちゃんのシャーペンを盗りましたー、何でそんな事するんですかー。謝ってくださいー、そして二度としないと誓ってくださいー」


 といった具合で、イチビった女子の第一声が始まると、次から次へと、非難が轟々と浴びせられる。シベリア抑留の民主運動や、中ピ連の吊るし上げと同じで、寄ってたかって自分一人を攻撃してくるのである。後から考えたら、どうも自分に原因がある事が多かったと思うのだが、こういうやり口で来られると、こちらも意地になって抵抗する。なので、15分ほどで終わるはずの終わりの会が、午後4時すぎまでかかってしまう、なんて事がザラにあった。

 こんな具合なので、この頃は、男女問わず平等に殴っていた。しかし、親からは「女に手を挙げる男は、男の風上に置けん」と言われてからは、女子に手を出す事はなくなった。さらには小学校4年生以降になると、もう子供子どもした感じでなくなってくる。女と一緒にいるのは格好悪い、くらいに感じるので、そもそも没交渉であった。

 こんな調子だったものだから、女性と仲良くする、という基本的なスキルを子供時代に磨く事が出来なかった。これは後々まで色濃く影響を残したと思う。恋愛が苦手な人は、結構根深く古い時代に、その遠因があると思うのだ。


 このまま中学に上がる。中学に上がってすぐに、性教育の授業があった。雄しべだの雌しべだの、抽象的な事を言ってて、何が言いたいのかサッパリ分からない。最後に担任の先生(男)が


 「質問のある人は?」


と訊くから、サッと手を挙げて、


 「で、具体的に子供の作り方はどうするんですか?」


 と聞いてみた。ところが先生は破顔して、


 「野添はイヤらしいの~~!」


 と爆笑。クラスの全員も大爆笑。自分は本当に分からずに質問しただけなのに、何故か恥ずかしい思いをさせられた。もっとも、その理由は、ほどなくして部活で回ってきた悪書で知る事になるのだが。

 こんな自分にも、好きな子が出来た。同じクラスの、色白で丸顔のショートボブの地味子だった。この頃から地味子好きだったのだ。問題は、好きになったはいいが、どうしたら良いか分からないのだ。そもそも敵対する事はあっても、仲良くした記憶さえない。それが知らないウチに、気になって気になって仕方ない。どうしても、その子の方ばかり見てしまう。でも、どうして良いか分からない。

 結局、分からないまま、また、格好悪くて誰にも相談も出来ず、中学2年になってクラス替えになって、別のクラスになってしまった。中学というのは、とにかく刺激の多い年頃であるから、恋愛以外にだってアチコチ気が向く。そうこうしているウチに、その子に対する気持ちも薄れてしまった。自分が中学の頃は、夏休みや冬休みの前に、不純異性交遊を厳しく戒めるお話しが先生からされるが、そもそも恋愛なんかしてる奴など、回りにはまずまず皆無である。せいぜい、不良くらいなものであろう。そんな訳で、それ以降、好きな子など出来ず、プラモデル作りやらサバイバルゲームやら、趣味に没頭する生活を送ったのだ。

 こうした傾向は、高校に上がってからも、そのまま踏襲した。中学高校と共学であったのに、女友達の一人も出来なかったというのは、今から思えば、その方が驚異的な事だと思うのだが、「男女七歳にして席を(おな)じゅうせず」を地で行く、品行方正な学生時代を送った、という事である。実際、女子と付き合おうものなら冷やかされる空気のある時代だった。

それを踏まえても、彼女欲しいとか思わなかったのは、回りに彼女のいる友達が一人も居なかった事と、オカズに読んでる本が恋愛系とは程遠いエロ本だったから、というのもあったろう。要するに、恋愛を学習し、トライ・アンド・エラーを繰り返して、恋愛力を培う機会を持たなかったのだ。特に、エラーしても許される年頃に、そうしなかったのは、後々の大きな蹉跌となるのである。

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