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ラーメンはそうじゃなくって

作者: 楽部

「お昼、ラーメンにするんだけど、どういうのがいい?」


 妻の問いかけに何気なく、顔は左手のスマホ画面に向けたまま。


「ん〜、おいしいラーメン、かな」


 と、安直に答えたのは、今思えばよくなかった。


「そうじゃなくって」


 大きくなった彼女の声。以降、返しのない無言に振り返ると、見れば、手にしている何種類かの袋麺。醤油、味噌、塩に豚骨味。いくつかある中からどれにするのかということで、それ以外は設問にない。


「じゃあ、味噌で」

「んんっ、わたしもそれにしようと思ってたのにぃ」


 これは、夫婦だから気が合うね、という微笑ましさではない。各一食分しかなく、それについてどうしてなのかとは尋ねない。そういう仕様が彼女であって。


「やっぱり、豚骨にしようかな〜」

「いいわよ、あなたが味噌で。わたしは別の…醤油味にするわ」


 口には出しても、譲ってくれるのが彼女であったりもする。そういう過程で互いの選択が終わり、調理に進み、インスタントにしては多少時間をかけながら、やがて、こちらの分からまず出来上がる。


「先に食べてて」

「うん」

 

 スマホの充電を差し、さあ当該に向き合うと、湯気とともに匂い立つ、程ではない香り。麺はやや固めを通り越し、スープは厚みも広がりもないコク。普通に届かない味わいの、理由はおそらくだが、裏面にある作り方ではないオリジナル。


「豚骨のがよかった?」

 

 そうじゃなくって。


 思い起こされる、おいしいラーメン、彼女の言。


 そうじゃなくって。


 だった。自分で作るべきだったのだ。

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