第12話 もうすぐ夜になりそうなんだけども……
そんな感じで、退屈と緊張の相反する時間は過ぎて行き、空も少しづつ赤くなり始めた頃、この事態に漸くの変化が訪れた。
捜索に出張っていたトナ村の奴等が、突然急ぎ足で自分達の村の方に戻って行ったのだ。
隠れていた三人も事態の急変に驚いて、その後の様子を固唾を飲んで注目していたが、オレ村の方から十人前後の武装した集団が現れた事で漸く撤退理由に合点が行った様だ。
その集団には村長であるユメオの親父(以下ユメパパと呼称)も居たので、やっとこの窮地から救われたのだと分かった三人は、飛び上がって喜びながらそこに走り寄って行った。
まるで奇襲する様な感じで、突然草むらから現れたユメオ達に最初は驚いた様子だったユメパパ達は、それが探していた相手達だと分かると、そちらも大層喜んで三人を迎え入れた。
はぁ~、やっと緊張の時間が終わったよ。
これで恐らく、この場でのユメオの命の危険度は、かなり下がった物だと見る事が出来るだろう。
勿論、奴等が態勢を整えて引き返してでも来ない限りはだが。
その事に気が付いていないのか、救われた三人は慌てる風でも無く、出会った大人達とその場で情報交換をしだした。
うん、まあ。報・連・相は勿論大事だとは思うよ?
でも、さっき迄自分達が脅えていた相手達にも、もっと気を配って置いても罰は当たらないんじゃないかな?
とか思っていたら案の定、トナ村の方から此方を越える人数を引き連れた奴等が引き返して来たよ。
あ~ぁ。折角無事に帰る事が出来た機会をふいにしちゃったなぁ。
これでこの後、事態がどう転んで行くのかが全く予測不能な状態になったぞ。
ユメオ達は奴等に脅えて、ユメパパ達の影に隠れて静かに情況を見守っていた。
そして、両者がオレ村とトナ村を繋ぐ道の中間地点で対峙する形での睨み合いが始まったのだった。
先程、ユメオ達から簡単な事情を聴いていたユメパパ達は、既に完全に怒っていた。
そりゃそうだろう。村の貴重な若い女性に対して、乱暴されそうになって怒らない様な馬鹿はいない。
対して、恐らくだが男性が一人死亡、一人重症以上の被害を被っている向こう側も、事の正悪は別にしても黙っては居られないだろう。
これは最悪、ここで殺し合いの乱闘が起こっても全く不思議でも何でもない。
こりゃ簡単には収まらないだろうと思って見ていると、両者から一人ずつ代表者が出て話し合いを始めるようだ。
此方は言わずと知れた村長のユメパパだ。まあ至極当たり前だな。
彼方は元々良く知らないが、案外若い奴が村の代表者のようだ。
最近になって代替わりでもしたのか、此方側の誰も素性を知らない奴の様で、皆が首を傾げている様子だった。
そんな感じで、両者が腰に佩いている剣に手を添えながらの話し合いが静かに始まったのだった。