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第46話 悪女の暴走

 私は男爵令嬢メアリ。いいえ、違うわね。お父様が子爵になったんだから、子爵令嬢メアリね。


 グレア帝国皇太子さまの婚約者にして、次期皇后陛下になるべき女。


 私の人生は常にバラ色に彩られているわ。


 裕福な商人の家に生まれて、欲しいものはすべて買ってもらっていたわ。人形、宝石、魔道具、化粧品……私を溺愛できあいしてくれたお父様は、大商人で野心家。


 ついに爵位まで手に入れた。まだ、低い男爵という身分だったけど、私たち家族は栄華を極めていた。


 身分だけは高い没落寸前の貴族にお金を貸して、返せなくなったら養子として親族や仲間の商人を潜り込ませる。


 そうするだけで、お父様の息がかかった貴族が芋づる式に増えていくのよ。すごいでしょ?


 お父様が貴族になったのは、私が12歳の時。そこから、社交界デビュー。


 でも、私のことを成り上がり者の娘として、差別する貴族たちが多かったのも事実ね。


 なら、私は誰にもばかにされないくらい偉くなってやると思ったの。そう、例えば、《《お姫様》》とか、ね。


 その最大の弊害へいがいが、ニーナ公爵令嬢。幼少期から才能を期待されて、私がなりたい皇太子さまの婚約者の地位にいる女。


 同級生からは嫉妬されているせいか孤立気味だけど、面倒見がよいから、後輩たちには大人気のいけ好かない女。


 成績は優秀だけど、女としての魅力なら私のほうがはるかに上よね。


 いい化粧品も、素敵なドレスも私のほうがたくさん持っているんだから。


 皇太子様もしょせんは、思春期の男。私みたいにかわいくて、彼を楽しませる女のほうが、あんなに堅物かたぶつな女よりも魅力的に決まっているわ。


 ニーナが同級生と孤立していることを利用して、私の計画は始まった。


 まずは、お父様に相談して軍資金をたくさん用意してもらったの。


 それを使って同級生たちにプレゼントを買ったりして、私の好感度を上げる。


 そうすれば、何かあった時に私の味方が多くなるのよ。


 たとえば、私側に問題があっても、周囲が味方してくれればニーナに問題があるようにすり替えられるわ。


 しょせんは貴族と言ってもガキ。物欲と嫉妬に支配されているのよ。私はそれを操れば、ニーナを簡単に追い詰めることができるの。


 積極的なアプローチによって、私は皇太子様の心に簡単に侵入することができたわ。


 少しだけボディタッチを多くしたり、手作りのお菓子をあげたり、彼のことを誉めてあげれば、彼の信頼は簡単に勝ち取れた。


 ニーナは……


「婚約者がいる男性にそんなに気軽に触れてはいけませんよ」


 とか


「ダンスの順番は、婚約者からにしてください。そうしないと、いろんな疑念が生まれますわ」


 なんて言っていたけどね。笑える。私は疑念を作るためにやっているの。そんなことを口うるさく注意するから、皇太子様とうまくいかないのよ。


 私はあいつに注意されたことにたくさん尾ひれをつけて広めたの。


「婚約者がいる男性にそんなに気軽に触れてはいけませんよ」と大声で叫んで、私に水をかけてきたとか――


「ダンスの順番は、婚約者からにしてください。そうしないと、いろんな疑念が生まれますわ」と怒って、私を突き飛ばしたとかね。


 噂好きな貴族社会。みんなおもしろおかしく広めてくれたわ。特に、ニーナに嫉妬していた同級生連中が、激しく協力してくれた。


「成り上がり者の男爵令嬢に皇太子様を取られた」という事実は、みんなをスカッとさせたのかもしれないわ。


 彼も少しずつ私の流した噂を信じたわ。ニーナは悪役令嬢。よく小説にでてくる主人公に意地悪する嫌味な女というイメージが定着したの。


 あとは、国外に追放して、無残な最期をとげれば完璧だったのにな~

 例えば、悪徳商人にだまされて、奴隷になったり……

 盗賊たちに誘拐されたり……  

 ご飯も食べられない路上生活のはてに倒れたり……


 たくさん、考えていたのにな~

 あ~あ、あのフランツ辺境伯が余計なことをしなければいいのにぃ。顔だけは好みなんだけど、領地が辺境のド田舎とかありえなーい。


 ダサすぎなんだけど~


 まあ、いいわ。お父様の計画で、辺境伯領ごと潰しちゃえばいいわね。私の計画もその後に実行すればいいのよ。お父様の計画が進めば、結末は変わらないもの。



 一度、救いがあった後に絶望に叩き落されるなんて、最高に楽しいじゃない?

 あの口うるさい悪役令嬢にはピッタリの最期よね?


 そして、私はみんながうらやむ皇后陛下として幸せになるのよ。おとぎ話のお姫様のように楽しい世界が待っているはずだわ。


 だからね、ニーナ?

 私を楽しませるために――


 消・え・て?


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