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第33話 告白

「フランツ様……それって……」

 私は、か細い声で彼の真意を聞く。だって、これはほとんどそれじゃない?

 それも、私たちの家柄でそれが愛のささやきなら、つまり、求婚を意味するの。辺境伯家と公爵家の間柄で、アバンチュールのような火遊びは許されないわ。


 家柄だけなら釣り合いは取れている。

 いや、いまは家柄がそこまで重要視されていないかもしれない。だって、皇太子様と男爵令嬢が婚約するくらいだし……


 でも、私には経歴に傷がある。それは、フランツ様にまで悪影響を及ぼすものよ。皇族との関係だって悪くなるかもしれない。そんな、重荷を未来ある彼に押し付けたくはない。


「ニーナの考えている通りだよ。僕は、キミのことが好きだ」

 そう言って、彼の指は私の手を強く包み込んだ。


 嬉しい。泣きそうなくらい嬉しい。でも、この気持ちにこたえることはできない。それは、彼の将来に間違いなく悪い影響を与えてしまうから……


「だめ、ですよ、フランツ様」

「ずっと君のことが好きだった。それはあの卒業パーティーの瞬間まで、届かない恋だった。届いてはいけない恋だった。でも、今は違う」


 彼は、私の目をまっすぐ見ていた。嘘は一切、混じらない真実の言葉が、私の胸に突き刺さる。

 私だって、皇太子様よりも、フランツ様が婚約者だったらどんなにいいことだろうかと思ったことは、何度もあるわ。身に余る光栄よ。

 だけど、私じゃ彼を幸せにできる自信がないのよ。

 私は、長年の婚約者である皇太子様とすら信頼関係を築くことに失敗した女。そんな女がこの素敵な貴公子の伴侶はんりょになっていいわけがない。


「私じゃ、あなたの将来の重荷になるわ」

「それでもかまわない。この届かない恋を何度呪ったことか、ニーナにはわからないだろうね。せめて、キミを支えることができる立派な貴族になろう。そう思っていままで頑張ってきた。この先も頑張ろうとしていた。でも、一番欲しかったものが、気持ちが届く距離まで近づいてくれた。僕はそのチャンスを逃したくない」


「私は、あなたにふさわしくない、です」

 断腸だんちょうの思いで、私は彼にそう伝える。それが一番いいことだと信じて……


 でも、今日の彼はあきらめなかった。


「本当にそれが君の本心なのかい? 僕は本当のキミと話をしたいんだよ。公爵令嬢としてでもなく、皇太子様の元婚約者でもなく、僕の幼馴染のニーナの気持ちが聞きたいんだっ!」


 本当に私のことを求めている真剣な目だった。

 春の風が私の心をざわつかせる。


「僕は、君が欲しいんだ!」


「ありがとうございます、《《フランツお兄さん》》」


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