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第30話 カータル大寺院

 翌日の朝、私たちは朝食を済ませた後、辺境伯領に向かって出発することになったわ。だいたい、馬車で半日はかかるから、かなりゆったりとした旅行みたいな帰路よ。


 行きは、皇帝陛下との面会に遅れないように気が気ではなかったけど、帰りは比較的時間に余裕があるから、何度か休憩をはさんで合間に少しだけ観光して帰ることになったの。それがちょっと楽しみね。


 だって、フランツ様とふたりきりの旅行みたいじゃない? 浮かれるなというのが無理よ。


 久しぶりに会ったお父様は、少しやせていたけど、お母様は相変わらず元気だったわ。


 私の件で、多少なりとも社交界で悪評を流されているはずなのに、そんなのおくびにも出さずに「時間が解決してくれるから大丈夫よ。いい、ニーナ? 辺境伯領でお仕事が見つかったのは、神様が決めてくれたなにかしらの運命よ。大事にして、しっかりがんばるのよ」と逆に応援されてしまった。


 私も、お母様のように強くなろうと本気で思ったわ。魑魅魍魎ちみもうりょうな貴族社会はそうじゃないと生き残れないもの! 今後、きっといろんな陰謀みたいなものに巻き込まれてしまうかもしれない。その時は、自分を自分で守れるようになりたいわ。


 馬車に揺られていると、フランツ様が私に話しかけてきた。


「今日は、カータル大寺院とネーデル湖に寄りたいと思うんだ? いいかな?」

「もちろんです。どちらもとても素晴らしい場所ですから、私も見たいですわ」

「よかった」


 朝早くに王都を出発したので、カータル大寺院の日曜日礼拝には十分間に合ったわ。


 この大寺院は、帝国の中でも最も古く格式もある教会なのよね。貴族の令嬢たちは、将来、ここで結婚式を開き、美しいドレスを着て、永遠の愛を神に誓うことにあこがれているの。


 伝統と格式あるこの大寺院は、王宮と並んで帝国の象徴でもあるわ。

 よく手入れされていて、美しい音を奏でる鐘とオルガン。

 キラキラと光ったステンドグラスが美しく彩られている。


 大司教様は、当代きっての賢者マルケル様が務めていて、彼の説法を聞きながら私たちは自省する。


 始まりと終わりには、それぞれ聖歌を演奏する。

 私は目を閉じながら、今まであったことを考えて自省していたわ。


 もう少し自分の気持ちに素直になろうと思ったこと。

 公爵令嬢としてではなく、私という存在になりたい。

 そして、辺境伯家になにかあったら、私はまっさきに手を貸す存在になりたいし、それができるくらい強い人間になりたい。


 贅沢ぜいたくすぎるかしら?

 でも、神様の前では、嘘なんてつけない。


 だって、フランツ様はある意味、私のすべてなんだから……

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