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第23話 皇帝

 儀式も無事に終わり、私たちは日常を取り戻したわ。


 フランツ様のお仕事を手伝うのも少しずつ慣れてきて、事務仕事も楽しくなってきたところなの。


 事務仕事も奥が深いわ。

 私は調べ物を任されることも多いんだけど、諸外国の本を読んだりして、フランツ様に驚かれることも多くて、それがやりがいがあると感じるの。


 それに、この仕事をしていると、王都では出会うことがなかったたくさんの人たちと知り合える!


 この前も、鉱山技師のひとがフランツ様に陳情に来ていて、『彼らはヴォルフスブルク語の専門書がわからなくて困っているから、ニーナ助けてくれないか』と頼まれて、専門書の解読をしたの。


 さすがに専門的過ぎて、わからないことも多かったけど、そこは専門家の鉱山技師さんたちの出番。単語の意味や文章のニュアンスをざっくり説明すると、『ああ、それは鉛のことじゃないかな』とかお互いに知識を出し合って、1冊の本を翻訳していくのが、とてもやりがいがあったわ。


 その本は、鉱山で鉱物を抽出する際に使われる灰吹き法の問題点と粉塵ふんじんの健康被害をまとめた本で、その本の知識を使えば、鉱山の労働者がより安全な環境で作業ができる手順が紹介されていたの。


 なんでも、雷属性の魔術を使う方法みたい。


 こういうところでも自分の語学の知識が生かせて嬉しかったわ。


 そんなある日。


 私は、フランツ様に呼び出されたわ。なにかしらと、不思議に思いつつ私は、彼の部屋を訪ねる。


「わざわざ、ありがとう、ニーナ。実は王都から、大事な知らせがあったんだ」


 その言葉を聞いて、不安になる私。

 まさか、私の処分が正式に決まったとかじゃない?


 あの時の皇太子さまは、私を国外追放するとか言ってたし……


 やっと、自分の居場所みたいなものができてきたのに……


 フランツ様やマリアと離れるなんていやよ。


「大丈夫。そんなに深刻な話じゃないよ。皇帝陛下からの謝罪の手紙だよ。ニーナに向けての」


「えっ、謝罪ですか!?」


「そう、皇族といえども、公の場でニーナを糾弾きゅうだんするのは、いくらなんでもやりすぎだった。息子に代わって謝罪したい。キミの出来る限りの名誉回復に努めるし、謹慎蟄居きんしんちっきょの罰はさかのぼって無効にしてくれるらしい。婚約破棄の件と今回の非合法の処分に関しても、謝罪の上、慰謝料を払ってくれるそうだよ」


「そんなことをしたら、皇族の威信に関わりませんか!!」


「僕もそう思ったんだけどさ、皇帝陛下に言わせてみれば、『謝って傷つくくらいの威信なら、それはもう威信じゃない』そうだ」


「さすがは、陛下ですね」

 皇帝陛下は、軍事力では劣る帝国を率いて大陸の列強国と対等に渡り合っている英才ともっぱらの評判なのよね。どうして、皇太子様は、あんなに立派な陛下のご子息なのに……


 いや、私が言うことじゃないわ。


「それで、陛下はニーナに直接謝罪したいということで、来週末に私と一緒に王都に行ってもらいたい」


こうして私の運命の歯車は回り始めた。


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