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第20話 夢

 私は夢を見ている。

 これは、夢の話よ。


 夢の中では、私はまだ学園入学前で、家族とのバカンスで、海沿いの別荘に来ていたのよ。


 フランツ様たちのご両親もまだ健在で、私たちと同じ場所に遊びに来ていたわ。


 その時、私は、心が折れていたわ。

 将来の皇后さまになるために、ひたすら勉強漬けの日々。


 宮中行事のマナーや外国語、歴史の勉強。

 その教育では、完璧が求められていたわ。まだ、10代前半の女の子には、重すぎた。


 この帝国の伝統とたくさんの人たちが作り出す希望に、私は押しつぶされていたわ。


 そんな時だからこそ、お父様は私を外に出してくれたのね。気分転換のような休日。でも、私は気持ちを切り替えることができていなかったのね。


 別荘のベッドで一人で泣いていた。

 自分一人の時は、暗い部屋に閉じこもって、ずっとひとりで泣いていたわ。


 このまま、帝都に帰りたくない。帰ったらまた、あの地獄のような日々がまたはじまってしまう。もう、いっそのこと、婚約者の立場なんて捨ててしまいたい。そうすれば、普通の同学年の女の子のように、自由に過ごすことができるのに。


 どうして、私ばっかりがこんな苦しい立場にならないといけないのよ。

 みんな私に嫉妬して、意地悪ばかりしてくるし……


 私が望んで、そんな立場になろうなんて考えたわけじゃないのに……


「大丈夫かい? ニーナ?」

 そんな時に、フランツ様がお見舞いに来てくれた。


 私は、必死で笑顔を作ろうとしたんだけど、それができずに、大好きなお兄さんの前で泣き始めてしまった。


 彼は、理由は聞かなかった。

 少しだけ、驚いていたけど、彼は、ただ私の頭をなでて、胸を貸してくれていた。


「頑張ったね、ニーナ。キミはいつも頑張りすぎているんだよ。泣きたい時は頼っていい。大丈夫だよ。キミの代わりになってあげられたなら、どんなにいいことだろうね。でも、僕にはそれができないんだ」


「そんなことないです。フランツ様がこうやって慰めてくれるだけで、私がどんなに救われているのか……」


「だけど、肝心なところで、キミを支えることができない。本当に僕は無力だ。ニーナを助けたいのに、それをすることができない。とても情けないよ。だからこそ、僕は強くなる。たくさん勉強して、体を鍛える。そして、いつか皇后であるキミを守れるくらいに強くなるよ。キミに助けが必要な時に、体を張れるほど、僕は強くなるよ」


「ありがとう、ございます……」


 フランツ様は、あの時、この約束を守るために、動いてくれたのね。

 

 夢から覚めた私は、涙をぬぐう。

 心が熱くなるのを私は感じていた。


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