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前編

「公爵令嬢アマーリエ・ソルシェル・スージー・モーランド。お前との婚約を破棄する!」


「あら、フィリップ殿下。わたくしの名前を初めてフルネームで言えましたわね」


「な、何だと! 王太子に対してそのような言葉は不敬にもほどがあるぞ!」


「そうです! フィルに不敬ですよ!」


 王家主催の夜会でこの国の第一王子とその取り巻き連中に絡まれました。わたくしは先程ご紹介いただいた公爵令嬢のアマーリエと申します。

 

 わたくしはぱらりと扇子を広げると口元を隠しました。あくまで優雅にです。


「理由をお聞かせいただいてもよろしいですか?」


「ふん。お前は私の運命の女性であるメアリーに対して酷い苛めをしていたのだ。それは高位の貴族令嬢としてあるまじき問題だろう。そんな女は王太子の私に相応しくないのだ。ここでお前のその罪を明らかにしてやろう」


「わたくしが苛めていたというのは殿下の腕にだらしなくしな垂れてかかっている女性のことですか? でも、今までわたくしはその方にはお目にかかったことはございませんわ」


「なっ、そのような嘘を言うとは呆れた奴だな! どこまでお前は傲慢なんだ」


「嘘ではございません」


「お前には私の愛しいメアリーの持ち物を壊したり、階段から突き落としたりという罪状があるんだぞ!」


「怖かったですわ。ぐすっ」


 そう言ってメアリーは怯えるようにフィリップ王子にますます擦り寄っていました。フィリップ王子は満更でもないようです。鼻の下が伸びてイケメンが残念ですわね。


「ああ、私の可愛いメアリー。可哀想にこんなに怯えてしまっているではないか。ここで私があいつを断罪してやるから安心するのだ」


 フィリップ王子はメアリーの身体を触りながら話かけています。


 きゃなんてメアリーが喜んでいました。余所でやってくださいね。


 メアリーはピンクブロンドの可愛い方です。そして、どちらかと言うとちっぱ……、色々と幼い感じのお顔と体です。そう言えばお判りかしら?


「そうだ。そうだ! アマーリエには断罪を! 婚約破棄だ! 許すまじ!」


 第一王子様達の周囲には数名の側近候補達が取り囲んで足を踏み鳴らしながら声高に叫んでおりました。


 そして口々にわたくしに向かって名前を呼び捨てて叫んでおりましたの。わたくしの方が身分は上ですのよ。呆れて周囲の方々も彼らを見ているのがお分かりにならないのかしら?


 側近の方々は宰相様の子息様、魔導師長の令息、騎士団長の令息といった面々です。それぞれタイプの違うイケメン達ですがどなたもメアリーの味方のようでした。


 正直こうなるのは予測していましたので驚くほどのものではありませんけれど。


「持ち物とはどのようなものでしょうか? わたくしは何度も申し上げますが、そちらの女性とは今日が初対面だと思いますわ」


「ほほう。言い逃れようとするのか。こちらには証拠があるのだぞ!」


 フィリップ殿下が胸を張って自信満々に言い放った。


「ここに出せ!」


 フィリップ王子に指示されて、取り巻き達が出したのはインクで汚れた安物のドレスとか文房具など。


「これはメアリーの物でお前が壊したのだ。覚えがあるだろう!」


 勿論見覚えあるはずはありません。メアリーの自作自演なのは間違いないのです。


「いいえ、全く見たことはありませんわ」


「嘘を言うな! ここに動かぬ証拠があるんだ。言い逃れをするな。それに私に会いに王宮に来ていたメアリーに対しての数々の陰湿な嫌がらせもある!」


「そうです! 私はフィルに呼ばれて王宮に会いに行ってたのにそこのアマーリエさんにドレスが安物だと言われインクをかけられたり、花瓶の水をかけられたりしました!」


「……」


 わたしは身に覚えのない数々のことを訴えられて呆れて言葉が出ませんでしたわ。それに王子に対して公の場で愛称を呼び捨てするとはどこまで常識がない方なのかしらね。


「ふん。私の婚約者だと権力を振りかざしてみっともないものだな!」


 蛆……、いえ、フィリップ殿下が吐き捨てるよう怒鳴っています。


「まああぁ。これは何事です!?」


 そこに私を庇うように肩に手に置いて現れたのは――。

お読みいただきありがとうございます。

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