表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/100

第91話 <現校長視点⑥>


 元生徒の宿を訪れた。


 宿泊部屋にいたのは、ケモ耳の少女だった。

 元生徒は留守だという話だったが……いまトイレから出てきた。

 彼が留守というのは、少女の嘘だったのだ。


 チッと舌打ちする少女。

 元生徒が俺を見咎める。


「あれ? 校長先生がいる……」

「やあ、ラング君。ご無沙汰だったねえ」


 元生徒は溜息を吐きやがった。

 くそっ、生意気な。


 それでも俺は愛想笑いを見せた。

 彼はニコリともしない。


「なんの用でしょうか」

「実は……」


 俺がそう言ったところで、てのひらを向けてきた。


「あっ、待ってください。スクールに戻れって話はナシですよ。最近、教頭先生からしつこいくらいに追われているんです。だから宿も替えたばかりなのに……」


「い、いや……その……。ただラング君は元気にしているだろうかと思ってね。それとは別に、いい話も持ってきたんだ」


「結構です」

「待ってくれ。聞くだけ聞いてくれないか。本当にいい話なんだ」

「じゃあ、早く喋って、早く帰ってください」



 ぐぬぬぬぬぬぬぬ。

 その態度はなんだ。



「ラング君には将来……いやいや、すぐにでも、ソンクラム軍の重要なポジションに立ってもらいたい。実は軍幹部の全員が考えていることなのだ」


 正しくは軍幹部の全員ではなく、司令官一人の考えだが。


「まったく興味ありませんね」


「いやいや、これは名誉あることなんだぞ。若くしてソンクラム軍の役職がつくのだからね。そのためにもスクールに……」


「何度も言わせないでください。スクールには戻りません!」

「そんな即決はやめてくれないか」

「前々から言っていることです。少なくとも教頭先生には何度も断りました」

「キミをこれまでにない超特別待遇で迎える準備が、スクールにはあるんだ」

「いえいえ、笑顔で送り出してください」


 その気がぜんぜんないというのか。

 しかし諦めるわけにはいかない。


「そこをなんとか、人助けだと思って」


 どうしてもスクールに復帰さなければならない。


「人助け? その人って校長先生のことですよね。どうしてオレが校長先生を助けなくちゃならないんです?」


「スクールがキミをここまで成長させたんじゃないか。だから恩を返すつもりで」

「恩ですか? 除籍にした時点で、すべてチャラに決まってるじゃないですか」

「規則だったから仕方なかったんだ」

「規則ならば貫いてください。復帰なんて誘わないでください」

「そうはいかないんだ。規則は変えられる」

「些細なことでは変えられない、と言われた記憶がありますけど?」

「頼む! このとおりだ。これまでのことはすべて謝罪する」


 とりあえず元生徒に頭をさげた。

 さっきのオンナが横から口を挟む。


「このとおりって、どのとおり?」

「だからこうして頭をさげて……」

「さがってるかなあ。チャオプがここにいたら、まだまだ高く思えるけど」


 チャオプって誰のことだ?

 ああ、そういえば彼には子供のような連れがいたっけ。

 さらに深く低頭する。これで小さな子供の頭より低くなったはずだ。

 くそっ、屈辱的だ!


「キョートーとかいうオジサンの頭は、もっと低かったけどなあ」


 むむむむ……この俺に何をさせようと?

 だいたいこのオンナは何者なんだ。


「そ、そういうアンタは誰だ」

「わたし? そこにいる我が主(わがあるじ)の召喚魔獣だけど?」


 召喚魔獣だと? 馬鹿な。あり得ない! 


「嘘だ。彼は召喚魔導の特殊スキルを取得できなかったのではないのか」

「うふふふ。それ勘違いだから。皆の勝手な思い込みに過ぎないから」

「なにぃーーーーーーーーーーーーーー!」


 なんと、特殊スキルを取得していたなんて。


 これはもう、ひたすら頭をさげるしかないのだろう。

 いま以上に頭をさげなくては……。


 全プライドを捨て、土下座してみせた。

 ここは堪えるしかなかない。

 さあ、これでどうだ。もう満足だろ?


 あらためて懇願する。


「スクールの除籍は取り消しです。戻ってきてください」

我が主(わがあるじ)はスクールに戻らないと言っている」

「おい、土下座すればいいんじゃないのか。俺を騙したのか」


 ここで元生徒が言う。


「土下座は別にオレが頼んだんじゃありません」

「しかし彼女は、俺が土下座すればいいと……」

「わたしは頭の位置を指摘してあげただけ。さげろとは言ってない」


 くぅーーーーーーーーっ


 我慢の限界だ。殺してやる。殺してやる。殺してやる!!!

 こんなガキに、『山羊の左目』幹部である俺が負けるわけがない。

 こんなガキに、ソンクラム軍大佐である俺が負けるわけがない。


「おい、殺してやるぞ! 後悔しても遅いからな!!!!!」


 俺は大声をあげた。

 するとオンナが言う。


我が主(わがあるじ)への殺害予告は、わたしを怒らせた。許すまじ」

「俺は本気だ。いったいお前に何ができる」


 床につけた額をあげようとした。

 しかしオレの頭に、オンナの足が乗る。


 このーーーーーーっ。

 調子に乗りやがって!


 強引に頭をあげようとするが……。あれ? あがらない。

 頭を踏みつけているオンナは軽そうなのに、何故だ?


「では猫の呪いを」とオンナ。


 ここで元生徒が口を出してきた。


「でもシェム。猫の呪いの条件、満たしてるか?」

「はい、我が主(わがあるじ)。完璧に満たしています」

「敗北を認めさせなくていいのか」

「土下座しているだけでOKです」

「それに踏む場所は背中じゃ……」

「頭でもOKになりました」


 なんの話かさっぱりわからん。


「へえ、そうだったのか」

「はい、レベルがあがったからです」

「結構なんでもアリだな。でもほどほどにしておけよ」


「わかりました、我が主(わがあるじ)。ほどほどにします。呪いはこの校長が宿を出ていくまでとします」


 頭からオンナの足が取り除かれた。

 オンナが怪しく不気味に笑う。


「お前に猫の呪いをかけた。ただし、この宿を出ていくまでとする」


 何が呪いだ。くだらない。


 俺は立ちあがった。

 いまから元生徒を殺してやるつもりだ。

 どうにでもなれ。この宿ごと爆破してやる!


 手先に魔力を込めた。

 それ、喰らえっ。



 スーパーエクスプロード!!



 ん……。おかしい。

 まさかの不発?


「どうしたのかな」とオンナ。


「うるさい」


 てのひらを確認してみる。

 顔に近づけた瞬間――。

 やっと指先から小爆発が起きた。



 ブボーーーーン



「目が……目が……」


 くそっ、まさか自爆してしまうとは!

 それでも大爆発とはならず、命拾いした。

 何かによって魔力が制限されたからだろうか?

 とにかく不幸中の幸いだったといえよう。


「ああ、コーチョーのオジサン。ドアが壊れた。弁償しないと」


 何が弁償だ。いまはドアなど気にしている暇はない。

 早く回復薬(ポーション)で応急処置しておかないと大変なことになる。


 ポケットから手探りで回復薬(ポーション)の瓶を取りだす。

 あれ? 軽いぞ。まさか……。

 

 回復薬(ポーション)の瓶が割れている!

 振っても液体の音がしない。


 空っぽかぁーーーー。

 さっきの小爆発のせいだ。



 バサバサと音がした。



我が主(わがあるじ)、鳥です、鳥です。壊れたドアから入ってきました」

「あれは鳥の姿をした魔伝書だな。誰からだろう」

「はい、捕まえました。えーと、これ、なんて書いてあるのでしょう?」

「ああ、これはオレ宛てじゃない。校長先生宛てだ。わーーーーーーっ」


 元生徒が大声をあげる。


我が主(わがあるじ)、どうされました?」

「オレは大丈夫だ。でも校長先生……大変です。ご自宅が火事になりました」

「なにぃーーーーーーーーーーーーーーーーっ」


 俺は慌てて部屋を飛びだした。

 目が見えないめ、手探りで廊下を歩く。


 ドタン ゴロン ゴロン ゴロゴロゴロゴロ


 階段に気づかず、そのまま落ちていく。

 それから気を失った。




   කුකු කුකු කුකු කුකු




 気づいたところは病院だった。右目はまだ何も見えない。

 あのオンナはなんだったのだ。くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!


 元生徒のスクール復帰は大失敗。

 もう軍の本部には顔を出せない……。


 こうなったら、ソンクラムから逃げだしてしまおうか。

 もともと軍もスクールも嫌いだった。絶対に辞めてやる。


 しかし辞めるためには『山羊の左目』幹部の承認が必要となる。

 俺が軍に在籍しているのは、幹部会での決定だったからだ。


 都合のいいことに、『山羊の左目』の幹部会が三日後にある。

 場所は『枯れた泉の谷』にある我々の要塞基地だ。

 他の幹部たちには、根回しもしておかなければなるまい……。



 夕方、少尉が見舞いにきた。

 俺としては少尉に構っている暇などなかった。


 本日、二通めの魔伝書が飛んできた。

 今度はなんだ?


 送り主を見てみると、教頭からだった。

 なんだ、くそっ。


 魔伝書の本文を読まず、少尉に渡した。


「そいつを頼む」


 少尉が魔伝書に目を通す。


「大佐、これは……」


 衝撃を受けているようだが、俺には興味がなかった。


「何が書かれているのか知らんが、お前に任せた。代わりにやってくれ」

「しかし大佐。ここに書かれているのは……」

「なんでもいい! お前がやれっと言ったら、お前がやれ」

「わかりました、大佐。明日、スクールに行ってきます」

「頼んだぞ」



 翌日、『枯れた泉の谷』へと一人で向かった。

 三日後の幹部会に出席するためだ。




  කුකුකුකුකුකු  現校長視点終わり  කුකුකුකුකුකු


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ