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第9話 似非パーティー結成


(オレは酒場で相席を求められた。爽やかイケメンと二人の美女の三人組だった。彼らも冒険者なのだという。さらには寮母ルアンナにそっくりな若い女が、声をかけてきた。彼女は帽子を被っている。オレに用ってなんだろう……)



「お願いがあります」


 帽子を被った若い女が低頭する。

 とりあえず話を聞いてみようか。


「どんなことですか」

「わたしの冒険に同行してください」


 はあ? 意味がわからない。

 冒険に誘いたいのならば、普通、そっちの三人組だろ。

 どうしてわざわざオレを指名するんだ。

 まさか本当に逆ナン目的? いや、それはあり得ない。

 

「オレ、こう見えましても(、、、、、、、、)実は冒険者としてまだまだ未熟なんです。半分、学生でもありますので」


「良かったです。見た目どおり(、、、、、、)のようですので、声をかけた甲斐がありま……いいえ、なんでもありません。えーと、わたしは冒険者ではありません。従いまして冒険については素人です。それに熟練した冒険者を雇えるほどおカネも持っていません。そのため少ない報酬で同行してくださりそうな冒険者を探しているのです」


「えっ、冒険で報酬がもらえるんですか?」


 この場の空気が変わった。

 誰もがポカンと口を開けている。

 オレ、ヘンなことを言っただろうか。


 爽やかイケメンが立ちあがる。

 もはや爽やかな顔つきではなかった。


「これだから学生冒険者は……。冒険者っていうのは職業なんだ。いいかい、キミのために言うよ。すぐスクールに戻りなさい。キミみたいな子供に、実際の冒険は危険すぎる」


 失礼だな。オレはきょう十五になったんだ。


「オレはもう子供じゃありま……」

「子供だ!」


 爽やかイケメンに、酒場を放りだされてしまった。


「何するんですか」

「ここの支払いは俺がやっておく。キミは家に戻って早く寝なさい」


 野次馬が集まってくる。

 オレは見世物じゃないぞ。


 爽やかイケメンは店の中に戻っていった。


 ルアンナ似の若い女がやってくる。

 オレに頭をさげた。これで二度目だ。


「ごめんなさい。わたしが同行を求めたばかりに、恥をかかせてしまって」


「いいですよ。世間知らずっていうのは自覚してますんで。でもアンタはなんのために冒険者を雇いたいんです?」


「ある人を探していて……」

「ある人って?」

「コールワットという人なの」

「その人、もしかして恋人さん? あっ、訊いちゃマズかったかな」


 彼女は首を左右させた。

 いつの間にか、互いにタメ口になっていた。


「ううん、会ったことはないの。ある山に住む占い師よ」

「冒険者の同行が必要ってことは、よっぽど危険な山なんだろうなぁ」


「山のてっぺんに行くほど、恐ろしい魔物に遭うらしいの。でもその占い師がいるところは山の中腹。だから冒険者として熟練していなくとも、行くことは可能なはず。だけど考え直すことにしたわ。初心者を多少なりとも危険に晒すような依頼なんてできないから。おカネを少しずつ貯めてから、熟練した冒険者を雇うことにするわ」


 彼女が背中を向けて去っていく。

 ふと、寮母のルアンナを思いだした。

 ときどきあんな寂しそうな背中を見せてたっけ。


「待って」


 彼女は足を止め、振り返った。

 そして首をかしげる。


「何か?」

「その山って近いのか」

「昼間はここから見えるわ」


 だったら決まりだ。


「オレ、同行するよ。あっ無報酬で構わない」

「ダメよ。初心者には頼まないことにしたの」

「初心者ってことはないぞ」

「えっ、違うの?」

「教員の同行はあったけど、授業で森やダンジョンを経験しているんだ」

「じゅうぶん初心者ってことじゃない。危険なことはさせられないわ」


 どこからか声が聞こえた。


「師匠ぉーーーー」


 聞き覚えのある声だった。

 周囲をキョロキョロしてみる。

 声の主が見つかった。


「お、お前は!」

「話は聞かせてもらった」


 ちんちくりんの龍騎士少女だ。

 コイツ、また現われたか。


「なんの用だ」


「師匠の嫁にはなってやれないが、師匠とともに冒険者として同行してやる。でもまあ、どぉーーーーしても嫁にしたいのならば、師匠の努力次第では考えてみてもいい……かもしれないぞ?」


「考えなくていい。帰れ」


 てか、師匠ってなんだよ。

 帽子を被った女が喜色を浮かべる。


「ここに冒険者が二人……。たとえ初心者だとしても、二人いれば心強いわね」


 心強いって、まさか。

 オレはちんちくりんの龍騎士少女を指差した。


「こんなヤツを同行させるつもりか」

「でも冒険者なんでしょ?」


 帽子の女が尋ねると、ちんちくりんは大きく首肯した。

 しかも腕組みした恰好が、なんとも偉そうだ。


「いかにも」

「ならば決めたわ。この三人で短期パーティーを結成しましょっ」


 闇の王を倒すためには、経験をどんどん積んでいきたい。

 そのためには多くの冒険が必要だ。


 でもなあ。さっきは爽やかイケメンに頼んだことだが、こんな簡単にパーティーを組んでいいのだろうか。実のところ、勝手なパーティー結成に引け目を感じないわけではない。


 うーん……。まあ、いっか。


「その代わり、パーティーという言葉はあまり口にしないでくれないか」

「師匠がパンティーを連想して、興奮してしまうからか?」

「黙れっ」


 ちんちくりんの頭にゲンコツをやった。


「いてぇー」


「オレの住む国ソンクラムでは、勝手にパーティーを組むことは許されない。厄介な手続きがたくさんあるんだ。さっきは三人組にパーティー加入を申し出たけど、あの国に戻るかどうか迷っている間は、なるべくなら規則を破りたくないんだ。だから、できれば『疑似パーティー』とか『パーティーごっこ』ってことで頼む」


 帽子の女の喜色はますます濃くなった。


「大賛成よ! 正式なパーティーじゃなかったら、面倒な手続きは不要だもんね。短期パーティーの場合は簡易手続きって方法があるみたいだけど、結局はやっぱり面倒臭いみたいだし。それより何より、正式だろうと疑似だろうと、わたしも含めて三人のパーティーってところが肝心なの。パーティーを組むのなら、二人を雇うことにはならない。したがって無報酬で済ませられるわ」


 無報酬について、オレは最初からそのつもりだった。

 しかしちんちくりんが頭を抱える。


「えーーーーーー! 報酬ナシなのか」

「当然だ。でもいいじゃないか。冒険自体が楽しいものだろ」

「うーん、師匠がそう言うのなら仕方がない」


 こうしてオレたちの『なんちゃってパーティー』が結成された。

 ちんちくりんが手をあげる。


「はいはいはいはーい」

「どうした、ちんちくりん」

「わたしがパーティーの……もとい、似非パーティーのリーダーをやる!」


 この中に師匠がいるというのに、お前がリーダーやっちゃうのか?

 そうツッコミたかったが、リーダーなんてものは他人に押しつけたい。

 リーダーはもう懲り懲りだ。二度とやりたくない。


 帽子の女に目配せすると、首肯が返ってきた。

 リーダーはちんちくりんに決定。


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