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第71話 冒険者たちの顔合わせ②


 巨人が広場を横切り、神殿へと進んでいく。

 そのあとからも続々と魔物が歩いてきた。


 オーク、オーガ、トロール……。

 先頭の巨人とは違い、首輪や手枷をつけられていた。


 たぶんどこかで捕虜となった魔物なのだろう。

 有翼人退治にそいつらも利用するというのか。


 最後尾を歩くのは二体。


 巨人同様、首輪も手枷もない。すなわちとても従順な魔物なのだろう。

 その二体はダブダブのローブを着込み、フードを深く被っていた。


 あっ、もしかして魔物じゃなくて人間なのか。

 いやいや、人間の歩き方ではない。ヨチヨチした歩き方だ。


 その二体がオレの傍を通り過ぎようとしている。


 フードの奥にある顔を見て、ハッとした。

 やはりコイツらは魔物なんかじゃなかった。


 オレの知っている顔だ。

 いまいましい顔だった……。


「お前はプリーストだな!」


 もう一人の顔も覚えている。プリーストの父だ。


 プリーストと目が合った。しかしほんの一瞬だった。視線をすぐに切られてしまったのだ。まるでオレなど眼中にないと言わんばかりに。


 なんだか腹が立った。だからもう一度、呼びかける。


「やい、プリースト!」


 プリーストがオレを顧みる。

 首を回したまま歩こうとしたせいか、その場でコケてしまった。

 起きあがろうとする際、ローブがはだけた。


 オレはおぞましいものを見てしまった。

 プリーストの体は人間のものではなかった。

 タールのようにドロッとしている。

 思わず吐き気を催してしまった。


 確かにプリーストの顔だ。

 それなのにプリーストではないのか。


 プリーストの体を見た冒険者たちが騒ぎだす。

 あまりの醜さに目を背ける者も多かった。


 ある人物がやってきた。


 彼女はソードマスターだった。

 冒険者の顔合わせに参加していたようだ。

 ということは例の『マスター』たちといっしょか。


 ソードマスターがオレに目を向ける。


「もう彼はプリーストでも人間でもないわ」

「じゃあ……なんだ」

「心を失って魔物になったの」


 はだけたプリーストのローブを、ソードマスターが直す。

 それが終わると彼女は歩き去っていった。


 しばらくオレは放心状態で立ち尽くしていた。


 売られてからずっと、プリーストを憎しみ続けてきた。

 いつか仕返ししてやろうと思っていた。それなのに……。

 ヤツはもはや人間ではない。復讐の対象どころではなくなっていた。

 そんなことって。


 プリーストの無様な姿がただそこにあった。


 いったいどうして?

 溜飲がさがるどころか、哀れみすら感じた。

 あの醜い体が夢に出てきそうで恐ろしくなった。


 ああ、見るんじゃなかった。

 気分が悪くなり、しゃがみ込む。

 吐き気を催した。


「大丈夫ですか、我が主(わがあるじ)

「ごめん、しばらく休みたい」


 オレは仲間たちに連れられ、広場の隅に移った。





    ◇ 




 軍に飼育されている魔物が、中央神殿の下にずらりと並んだ。

 当然ながら圧倒的に巨人が目立っている。

 将官によって紹介されたのは、この中ではその巨人だけだった。

 頼もしい味方に冒険者たちから拍手が湧いた。



 ふたたび魔物は建物へと退場し、お歴々の長い話が始まった。

 それも終わると、やっと解散となった。


 しかしこのあと作戦会議があるそうだ。

 各冒険者パーティーの代表者は、一名ずつ残ることとなった。



 まだ少し気分がすぐれないので、本当は早く帰りたかった。

 でも仕方がない。


「各パーティーの代表者か。そんじゃ、オレが残ろう」

「待ってくれ、師匠。わたしがリーダーだ。わたしが残る」

「だけど……作戦会議だぞ。大丈夫か、チャオプ?」

「失礼だな、師匠。大丈夫だ」


 そこまで言うのならば。


 オレたちはチャオプを残すことにした。

 彼女のことを心配しつつも、先に宿へと戻っていった。





    ◇ 





 部屋の共有スペースで、彼女の帰りを待つ。


 そろそろ夜になる頃だ。腹が減ってきた。

 しかし皆、彼女が帰ってくるより先に、夕食を済ませるつもりはなかった。


 なかなか帰ってこない彼女のことが、だんだん心配になってきた。

 夜といえば、火事のことやスケルトン兵のことがあるのだ。

 仲間をあまり一人にさせたくない。


「わたし、迎えにいってこようかしら」とムアン。


「迎えってどこに? 神殿近くで会議をやってるとも限らないんだぞ」

「それもそうねえ。困ったわ」



 ガチャ



 ドアの開く音が聞こえた。

 チャオプが帰ってきたのか?

 皆、立ちあがってドアに寄っていく。


 開いたドアの向こうにいたのはチャオプだった。


「おかえりなさい、チャオプ」

「わわわわわ」


 チャオプはいきなりムアンに抱き締められて驚いている。

 無事で何よりだ。


 彼女は部屋に引きずられていった。共有スペースでオレたちに囲まれる。


 作戦会議の内容には興味がある。当日、オレたちは何をすればいいのだ?

 もし重要な役割を任されていたなんてことだったら……。

 ちょっと怖いな。


「ご苦労さん、チャオプ。どんな話があったんだ。早くオレたちに聞かせてくれ」

「ああ、話は……作戦のことだった」


 それはわかっている。


「早く詳細を話してくれ。オレたちのパーティーの役割とか決まったのか」

「うーーーーーん」


 難しい顔をするチャオプ。もったいぶりやがって。

 あるいは口に出せないほど、厄介で厳しい任務を課せられたのか。


「正直に話してくれ。オレたちは何をするんだ」

「まあ、たぶん大丈夫」


 えっ? 大丈夫って何が?

 内容を言ってくれないと。


「大丈夫じゃ、わからん」

「わたしもよくわからん」


 何やら偉そうなチャオプ。


「は?」

「話が難しかったから、途中で居眠りしてた。てへへへ」


 無邪気な顔で頭を掻いている。


「「「はあ?」」」


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