表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/100

第64話 <現校長視点③>

~~~<現校長視点③>の登場人物~~~

【(現)校長】大組織『山羊の左目』の幹部であり、ソンクラム軍の大佐でもある。

【教頭】中小規模の匪賊の一員であり、ソンクラム軍の一員でもある。

【プリーストの父】『山羊の左目』の支配下となった中小規模の匪賊のかしら

【ソードマスター】廃人同然となったプリーストのことを心配している。


 校長たちは巨人を残して部屋を出た。

 巨人の泣き声は廊下までよく響いていた。


 ほっそりした女生徒(ソードマスター)が部屋のドアを顧みる。

 校長はそんな彼女を見て口角をつりあげた。


「あのハーフギガースの父親は誰だと思う?」

「誰とは……。魔の森に棲むギガースではないのですか」

「違う。ギガースなのは母親の方だ」

「では父親は人間なのですか」

「そういうことだ。ちょっと昔話をしよう」



 ある部屋の前で立ち止まった。

 廊下の小さな窓から外を眺める。



「ある部隊がギガースの捕獲に成功した。若い雌だった。ギガースといっても雌はあまり大きくない。個体差にもよるが、だいたい人間の倍くらいの背丈だ。捕獲したギガースは、雌の中でもとりわけ小柄だった。だから仮に飼い慣らして軍に入れたとしても、あまり戦力にならないと考えられた。そこで、あるプロジェクトが始まったのだよ――」



 校長の顔をじっと見据えているのは、図体の大きな男(プリーストの父)とほっそりした女生徒だ。

 教頭はすでにこの話を知っているため、興味深そうな顔はしていなかった。


 話は続けられた。



「そのプロジェクトとは、ギガースの雌に強い兵士を生ませること。求められたのは、人間とのハーフである子供だ。しかし若い兵士たちは皆、接触するような行為を嫌がった。当然のことだ。大きな魔物は臭いし、気持ちが悪い。それでもたった一人、乗り気な兵士がいた。ある意味では真の『冒険者』とも言えよう。ただし若者ではない。中年の男だった。生まれてくる子に自分の血が入ることについて、なんの躊躇ためらいもないようすだった。むしろゲテモノ食いを喜んでいたのだ。若い連中が不快に感じていた悪臭は、かえってその男を興奮させていたらしい。実はヤツこそ、当スクールの前校長にほかならない」



 ちなみに当時、前校長は妻子持ちだった。

 校長にまで出世できたのは、そのプロジェクトに貢献したからだ。



 立ち話が終わると、正面の部屋に入った。

 そこは実験場だった。十人くらいの研究員がいた。


 隅に巨大なベッドがあり、巨大な人間が寝ていた。

 厳密には人間ではない。ギガースという魔物の雌だ。

 校長がギガースの雌を眺めながら言う。



「プロジェクトが遂行されたのはこの場所だ。ギガースを動けなくしたうえで、ヤツは行為に及んだ。いまや、このギガースは喋らないし、泣かないし、笑わない。心が壊れている。長い年月こんなところに閉じ込められてきたのだから当然だ。それでも生かしておく価値はある。生かしておきさえすれば、あのハーフギガースは軍に貢献しようと必死になってくれるのだ」



 図体の大きな男は汗を掻き、ほっそりした女生徒は鳥肌を立てた。

 実験場の奥に小部屋がある。その場の研究員たちとともに入っていった。


 図体の大きな男に校長が尋ねる。



「お前は強い。でもさらに強くなりたいと思わないか?」

「わ、わたしは現状でじゅうぶんです」


 図体の大きな男は怯えていた。『さらに強くなりたい』などと答えたら、とんでもないことになると察したのだろう。


「まあ、そう言わずに。賊のかしらとして、もっと強くなってみればいい」

「お断りさせていただきます。どうかご勘弁をお願いします」


 逃げだそうとする図体の大きな男。

 ドアに向かって走りだした。


「逃げるな!」と校長。


 図体の大きな男の足は止まった。


 校長が命令したからではない。一人の研究員による魔導だった。

 足下に漂う空気をカチカチに固められたのだ。


 図体の大きな男は捕らえられた。

 校長が言う。



「慌てるな。落ち着いて聞くがいい。うちの研究員にはねえ、キメラ魔導を使える者がいるんだよ。『魔物と魔物』、『魔物と動物』、あるいは『魔物と人間』を融合させるんだ。面白いぞ。トロールとゴブリン、オークとオーガ……」



「イヤだ、イヤだ、やめてくれ。なんでもするから」大きな男が叫ぶ。



「……魔導で生成したキメラには欠点があってね。すぐに死んでしまうんだ。生存期間はだいたい二、三日といったところかな。土や砂で作った像のように、体がボロボロと壊れていくんだよ。だから飼い慣らしたり、訓練したりする時間がない。よって戦場では使えない。それでも土人形と融合すれば、従順なキメラが生まれることがわかったんだ。つまり飼い慣らす時間が省ける。ほぼ即戦力さ……」



「嘘だろ。土人形と融合なんてやめてくれ!」



「……実際、従順であっても短命なことには変わりなかった。だが少なくとも戦場に連れていくことはできた。大いに活躍してくれたよ。残念ながら使い捨てだけどね。それからのち、新たな発見があった。キメラを長生きさせる方法だ。それにはまず土人形とスライムを融合させる。次にそれを他の魔物に融合させるのだ。すると従順で長生きするキメラの誕生となる。長期間使用しても、体が砂のように崩れていくことはなくなった。二年間も生き続けたキメラもいたんだ。戦死したけどね」



 研究員が言う。


「人間を『土人形とスライムのキメラ』に融合させるのは初めてです。少し緊張します」


 研究員たちが『土人形とスライムのキメラ』を連れてきた。

 まるで泥人形。半分溶けかかったような体がノッシノッシと歩いてくる。


「イヤだ、あんな醜いものと融合なんてイヤだ!」


 大きな男は騒ぎ、必死に抵抗する。

 それでも魔導による融合は始まった。


 大男とキメラの体が重り合う。

 大男は苦しそうにもがいている。

 全身、激痛が走っているのだろう。



 しばらくしたのち、新たなキメラが生まれた。

 体はドロドロだが、顔だけは人間の形を保っている。

 ダブダブのローブを着せれば、キメラだとは気づかれないかもしれない。


 そのキメラは『オヤジ』と名づけることにした。


 何故そんな名前になったのかというと、馬鹿息子もキメラにすることを考えていたからだ。名前もすでに決めてある。『ムスコ』だ。



 翌日、融合が行なわれた。ソードマスターと呼ばれる女生徒の目の前で、プリーストと呼ばれる馬鹿息子は、期待の新キメラ『ムスコ』となった。




  කුකුකුකුකුකු  現校長視点終わり  කුකුකුකුකුකු


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ