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第61話 新パーティー結成


「仲間を裏切るような悪いヤツは、ボクが許さない!!」


 オレにそう言ったのは、タンクと呼ばれている巨人。ハーフギガースという魔物らしい。


 おかしなことに、オレが裏切ったことになっているではないか。

 コイツはいったい何を吹き込まれたんだよ。


「おいおい、裏切ったのはプリーストらの方だぞ」


「悪党の言葉なんか信じるものか。ボクはお前を捕らえてパーティーに貢献する。母さんのために頑張るんだ」



 ザザッ ザザッ ザザッ ザザッ



 オレはそんな周囲の怪しい物音を、右から左にスルーしてしまっていた。眼前の巨人に気を取られていたため、まったく気づきもしなかったのだ。このときプリーストの顔がニヤけていたことさえも気づかなかった。



 きゃああああああああああああ



 甲高い悲鳴が聞こえた。プリーストが連れている美女三人の声だ。

 いったい何ごとか? 周囲を確認してみると、とんでもないことになっていた。


 百体を越えると思われるスケルトン兵が、観客席の一部を埋めていたのだ。

 その美女三人はそのスケルトン兵に怯えていた。巨人には無反応だったのに。


 スケルトン兵の集団に一人の人間も混じっていた。兵の指揮官か。

 その人間が闘技台の方へと歩いてくる。かなり長身の男だった。


「若親分、助けに参りましたぜ」

「おう、お前が来てくれたか」


 長身の男に答えたのはプリーストだが、若親分などと呼ばれているらしい。

 スーパーハツカネズミによるダメージは、すっかり回復しているようだ。


 長身の男が片手をあげる。

 スケルトン兵は呼応するように弓を構えた。


 オレや仲間たちを狙っている。

 この数の矢に襲われたらマズいことになる。


 しかし矢は射られなった。


 逆に、弓を持ったスケルトン兵がバタバタと倒れていく。

 チャオプが完全龍化し、口から冷たい瘴気を吐いたのだ。


 さすがはスノードラゴン。

 この姿のときのチャオプは半端じゃねえな。


 街で襲われたときは龍化が間に合わなかったが、今回は素早かった。

 しかも半龍半人のときとは比べものにならないほどの凄まじい風圧。

 また、その瘴気から派生して漂う冷気に、オレまで凍えそうになった。

 ただ買ったばかりのチャオプの服が……。


 この光景にプリーストが目を丸くする。


「白いドラゴン……だと? 初めて見たぞ。何故こんなところに?」

「うううう、またしてもスケルトン兵が小僧らにやられてしまうとは」


 長身の男は頭を抱えて悔しがっていた。

 不思議そうな顔をするプリースト。


「またしても、と言ったか? なんのことだ」

「実は……先日、街で小僧らを見かけたんで、(おど)かしてやろうと思ったんです」

「まさか街の中でスケルトン兵を使ったのか。勝手なことを! それで結果は?」

「すみません。二十二体を借りましたが……返り討ちに遭って全滅しました」


「なにぃーーーーーーーっ! 二十二体のスケルトン兵を? 無断で使っておきながら全滅させただと? この大馬鹿者め! くううううっ、それにしてもラングのヤツ、生意気な……。落ちこぼれのくせに、落ちこぼれのくせに、落ちこぼれのくせに!!」


「若親分。しかも驚いたことに、一瞬のうちでしたっ」

「お前が誇らしげに言うな。だいたいどうして報告しなかった?」

「すみません、すみません、すみません、すみません。ですが若親分」

「なんだ」

「第四倉庫にはまだスケルトン兵がたくさん残ってます!」

「あの汚い第四倉庫に?」

「四百五十体もいるんです。四百五十体ですぜ? すべて呼んできましょう」


 長身男の話に溜息を吐くプリースト。


「あの骨になりきれなかったゾンビ兵か。腐臭が酷くて堪らないが仕方あるまい」

「はい、若親分。ただちに連れてきます」


 長身の男は走りだしたが、すぐに足が止まった。

 喉元に剣を突きつけられたのだ。


 剣は白い煙に包まれている。それを握っているのはイリガだった。

 長身の男は観念したらしく、黙って両手をあげた。


 闘技台の下からは、チャオプが巨人に瘴気を吹きかける。

 瘴気を浴びた巨人は、その場に伏して動かなくなった。


 他方で、シェムが素早いジャンプでプリーストの背後に回る。

 足裏でプリーストを素早く蹴り倒し、その背中を踏みつけた。

 さらには右手の鋭い爪を、プリーストの首筋に突き刺す。


 シェムの四つの指は、プリーストの首の後ろから深く刺さっている。

 プリースト以外の人間ならば、即死だったことだろう。

 この状態でも生きていられるというのは、ヤツの回復能力を褒めるべきか。


 すっぽり指が刺さったままの状態で、プリーストの傷は塞がった。

 シェムの指とプリーストのうなじが、まるで一体化したようにも見える。

 これはなんとも異様な光景だ。



「うおおおおおおおおおおお」



 苦しそうに叫ぶプリースト。


「ふうん、お前の回復魔導の力はたいしたものじゃないか。でもわたしの指を抜かずに回復したものだから、痛みを感じちゃうのかな? ほーら、四つの鋭い爪がお前の首に入ったままだ」


 シェムが指を小刻みに動かす。

 

「痛い、痛い、やめてくれ。指を動かさないでくれ」


 首筋からほんの一瞬だけ真っ赤な血が噴きだす。

 しかし血は嘘のようにすぐにピタッと止まった。


 シェムの口がヤツの耳元に近づく。


「あらら、ちょっぴり血を噴きだしちゃったね。魔導の力が弱まってきたのかな。回復に長けたお前が流す血は、無限なのか有限なのか? 無限だったらいいのにと思ってた。永遠に湧きでる真っ赤な泉なんてロマンチックだからね。でも残念。お前の魔導は有限だった。すなわち回復できる血も有限。あー、消耗した分の魔導は回復できないものかぁ」


「痛い……。頼むからもうやめてくれ」

「じゃ、負けを認めるかい?」

「認める」


 シェムがニタッと笑う。

 そこでオレは彼女を止めた。


「シェム、呪いはかけなくていい」

「それはどうしてですか、我が主(わがあるじ)


 小首をかしげるシェム。


「シェムには本当に感謝している。だけどこれはオレとプリーストの問題だ。オレの復讐のために他者の手を汚したくない。きょうのところはここまでだ。もう帰ろう」


 彼女が拗ねた表情を見せる。


「他者なんて水臭いです……。だって我が主(わがあるじ)の復讐は、わたしの復讐でもありますから。ならばこうするしかありませんね――わたしからの懲罰は半分に抑えます。残り半分については、我が主が次の機会にでも、思う存分やっちゃってください。てことで……」


 彼女の手がプリーストの髪を掴み、顔を持ちあげる。


「……お前に『猫の呪い』をかけた。だけどわたしからの懲罰は半分まで。特別に期限を設けてやることにした。期限とはお前が気絶するまでだ。気絶したところでわたしによる懲罰は終了となる」


 プリーストの背中からぴょんとおりた。


「我が主、帰りましょう」

「半分までか……。それがいい。じゃあ帰るとするか。イリガもありがとう」


 闘技台をおりた。


 ローブを脱いで、白いドラゴン(チャオプ)の頭に被せる。

 白いドラゴンの体は次第に小さくなっていった。

 そしてローブに覆われた中で、半龍半人の姿になるのだった。


 そんなチャオプにも礼を言う。


「チャオプ、ありがとう」

「たいしたことはしてない」


 髪まで真っ白な頭が、左右に振られた。



 ズドーン



 立ちあがろうとした巨人が足を滑らせ、プリーストを下敷きにしてしまったようだ。どうやらこれが、プリーストにかけた『猫の呪い』の始まりだと思われる。





    ◇





 翌日、国内にある冒険者ギルドを訪れた。冒険者登録するのならば早いほうがいい――前校長からそんなアドバイスをもらっていたからだ。

 

 冒険者申請だけでなく、正式にパーティー申請もすることにした。

 その二種類の書類をギルドの受付に提出する。


 ところが提出書類を目にした受付嬢は、こんなことを言うのだった。


「これは……。まず受理されないと思います」


 受付嬢の指がムアンの名前を差している。どうやら問題はムアンにあるようだ。

 実のところそんな気はしていた。念のため受付嬢に訊いてみる。


「どうしてでしょうか」

「年齢と出生地が不明ですと、冒険者資格は得られません」

「やっぱりかぁ……」


「ですがパーティー申請につきましては、このメンバーで受理される可能性が高いでしょう。メンバーすべてが冒険者である必要はないからです。実際、事務的な仕事を非冒険者に任せるパーティーも少なくありません。ただし何か問題が起きた場合、すべてリーダーが責任を負うこととなります」


「責任か。リーダーはチャオプだ。オレとしてはまったく問題ないな」


 チャオプの肩がピクッと動く。

 そんな彼女の頭を乱暴に撫でてやった。


「なーんて。お前一人に責任を負わせるつもりはねえよ」

「しっ、師匠のバカ」



 五日後、オレとイリガの『冒険者ギルド登録証明書』が発行された。


 その翌日には新パーティーの認可もおりた。

 メンバーは四名。オレ、チャオプ、イリガ、ムアンだ。

 パーティー名については、リーダーにちなみ『白龍』で登録しておいた。


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