第27話 民家で一泊
姉妹たちの家に戻ってきた。
彼女たちはオレたちに、寝室として空き部屋をあてがってくれていた。
そのうえオレもムアンもチャオプも、ひとりひとり別々の寝室だ。
なんともありがたい。
まずは背中で熟睡しているチャオプをベッドに寝かせた。
続いて隣の部屋にムアンを連れていく。
ベッドに寝かせようとすると、急に体重がかかってきた。
思わず倒れ込む。オレはムアンの下敷きに。
「あ~、ラング。お姉さんを襲ってどうする気?」
「アンタがオレに乗っかってるんでしょーがっ!」
この酔っ払いめ。
彼女をベッドの上に置いて、部屋を出る。
ようやく自分の寝室に行くことができた。
バタンとベッドに倒れ込む。
シェムが腹の上にのぼってきた。
頭から背中にかけて撫でてやる。
「やっと二人きりになれたな」
「ミャー」
◇
朝になった。部屋を出てみるが、姉妹たちの姿はなかった。
起きるにはまだ早すぎたか? いいや、もう陽はのぼっている。
「師匠っ、目が覚めたか」
「おう、チャオプ。よく寝られたか」
訊かずとも、ぐっすり眠ってたっけ。
「そんなことよりたいへんだ」
「どうした」
「皆、いないんだ」
「ムアンならそこの部屋に……」
夕べ彼女を寝かせた部屋を指差した。
ドアは開けっ放しになっている。
「ううん、いなかったぞ。ムアンもあの姉妹たちも」
「朝の散歩にでも、ちょっと出かけたんじゃないのか」
「ちょっとじゃない。ずっとだぞ。わたしたちを残して一人で行くもんか」
「そんじゃ……朝メシのあとで探そうか。どっか屋台で美味いものでも食おう」
「師匠、朝メシなんか食べてる場合じゃない!」
「そうだな。ムアンを待たずに先に食うのは、確かに気が引ける」
ベッドの上からシェムが床に飛びおりた。
「ミャー」
彼女が歩いていく。
「シェム、どこへ?」
ある部屋の前で止まった。
振り返ってまた「ミャー」と鳴く。
「そこ、わたしが見たときは何もなかったぞ」
「見たって? 他人んちの部屋のドアを、勝手に開けるもんじゃない」
シェムがしきりに鳴き続けている。
もしや本当にいるのか? ドアをノックする。
「ムアン?」
返事はない。
チャオプに注意したばかりだったが、思いきって開けてみた。
しかし部屋の中には誰もいなかった。
シェムが部屋に入っていく。
壁の前で止まり、「ミャー」と鳴いた。
「師匠! この壁、ヘンだぞ」
チャオプのいうとおりだ。壁に不自然な切れ目がある。
押してみると壁が開いた。くだり階段を発見。
他人んちを勝手に探検するのはよくないことだ。
そう思いつつも階段をおりていった。
階段は行き止まりになった。
正面には壁があるだけだ。
シェムがカリカリとひっかいている。
この壁も動くのか?
しかし押しても動かなかった。
内側からしか開けられないのか。
壁の隅に小さな穴がある。
穴かぁ……。しょうがない。
「うわっ、こんなところで! 師匠の露出狂っ」
「うるさい。いいからオレの服を頼む。持っててくれ」
洞窟では自ら望んでネズミ化ができた。
そうさ、今回だってできるはずだ……。
「シェム、頼む」
オレの体よ、小さくなれ。
ネズミ化しろ!
体が縮んでいく。
頭上から巨大なチャオプが見おろしている。
やったぞ! 成功だ。シェムに感謝しなきゃ。
両手を床につけた。いや、もはや前足だ。
意識は前回よりさらにハッキリしている。
ぼんやりした感覚はほとんどない。
ネズミ化に慣れてきたからだろう。
さっそくネズミの体で小さな穴に入っていく。
思ったとおり、壁の向こうに隠し部屋があった。
しかも中が明るい。誰かがいる。
あっ!
姉妹たちがいた。
それから男も……? 誰だろう。
なんとなく見たことあるような顔だが。
思いだした!
何故コイツがここにいるんだ。
この中年男はオーガを連れていた賊ではないか!
姉妹たちは中年男と笑いながら会話している。
まさか、もともと仲間だった? ならば……。
いやいや、それを考えるのは後回しだ。
ムアンを探してみる。
彼女まで仲間だったとかってないよな?
部屋の隅に彼女を発見。
その足が鎖によって『重り』に繋がれている。
てことは、中年男と姉妹たちの仕業だな。
オレはムアンのもとへと駆けていった。
小さなハツカネズミに誰も気づかない。
小さくジャンプ。ぴょこんとムアンの膝に乗った。
「きゃっ」
ムアンの驚いた声で、ヤツらが振り向く。
「きゃあああああ」「ネズミぃー」と姉妹たちの悲鳴。
中年男がムアンの方へと歩きだす。
「こんなところにネズミが入り込みやがったか」
小さなオレをじっと見つめているムアン。
そして首をかしげた。
「もしかして、あなたラング?」




