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第19話 龍騎士の契約


 チャオプと白いドラゴンは主従の契約を交わした。

 彼女は白いドラゴンに『シショー』と名をつけた。

 オレに対するリスペクトだという。


 いや、それ、おかしくないか。


 リスペクトだろ?

 自分に従わせる者に、その呼び名を使うのかよ。

 まあ、悪気がないのはわかるが。


 白いドラゴン(シショー)はもちろん人間の言葉を解さない。

 オレやムアンが何を言っても、白いドラゴン(シショー)ポカンとしてしまう。

 だがチャオプの言葉については、大方理解できているようすだ。

 これは彼女の『操龍』が優れた特殊スキルである証拠に他ならない。


 それにしても白いドラゴン(シショー)は驚くほど従順だ。

 チャオプはいろいろな芸当を見せてくれた。

 でもチャオプ。はしゃぎたい気持ちは理解できるが、ほどほどにしておけよ。



 しかしここでオレは気づいた。

 シショーのようすがおかしい。

 別にチャオプのせいではなさそうだ。


「なあ、チャオプ。シショーはさっきから何を気にしているんだろう」

「どういうことだ? 楽しく遊んでるだけだぞ」

「ずっと、あっちにばかりチラチラと視線を送っているが」


 ある方向を指差した。

 チャオプが首をかしげる。


「シショー、向こうに何かあるのか」


 なんの応答も示さない。

 単に喋れないからなのか?


「あっちに行ってみよう」


 チャオプが歩いていく。

 シショーはキィーオと大きく鳴いた。

 どんな気持ちで鳴いたのかは不明。

 たぶんチャオプだって何もわかっていないのだろう。


 とりあえず皆で行くことになった。


 岩壁に突き当たる。

 そこに横穴があった。


 シショーがキィーオと小さく鳴く。


 すると横穴から頭が見えた。

 小さな生物が出てくる。


 幼いドラゴンだ。


 まん丸でふっくらした体が、羽毛のようなもので覆われている。

 シショーと同じく全身が美しい白色だ。チチチチと鳴いている。


 なんだよ、この可愛らしい生物は!

 オレたちを萌え死にさせるつもりか。

 この世で、たぶんシェムの次にキュートだ。


 子ドラゴンがシショーに寄っていく。

 小さな顔と大きな顔が擦り合う。


 このようすを見る限り、両者は親子に間違いない。

 だからシショーはチラチラと気にしていたんだ。


 でもシショー、ここに幼い子供がいたんだろ?

 チャオプと遊んでいる暇なんてなかったはずだ。


 それなのに……。


 そこまで従順なのかよ。

 そこまで操龍に拘束力があるのかよ。

 自分の意思や希望を示せないものなのか。


 操龍のスキルって怖いな。

 もちろんチャオプは悪くない。

 だって知らなかったのだから。


 チャオプはすっかり元気をなくしてしまった。

 その親子を見て、自責の念を感じているのだろうか。


「シショーとの主従契約、解くべきだよな……」

「オレに訊いてるのか? まあ、そうしてやってくれ」

「どうやったら契約が解けるんだ?」

「知るか。オレに訊くなよ」

「ふう、困ったぁ」


 チャオプが呪文のようなものを唱える。

 契約無効ぉーとか、解除ぉーとか、操龍おしまいぃーとか。


 他にもいろいろ試したようだが、操龍の解除はできなかった。

 ついてくるなと命令しても、その命令だけには従わなかった。


 溜息を吐きっぱなしのチャオプ。

 いつもの無邪気な笑顔はない。

 そしてとんでもないことを口にする。



「わたし、この似非パーティーから抜ける」



 はあ? まるで不意打ちだった。

 オレもムアンも目を丸くする。

 嘘だよな。聞き間違いか……。


「何を言ってるの?」とムアン。


「しばらくの間、この洞窟内で暮らすことに決めたんだ」


 ああ、そうきたか。

 言いたいことはわかる。

 気持ちもじゅうぶん理解できる。


 もしチャオプが洞窟を出れば、シショーもついてくるだろう。

 そうなれば放置された子供は生きていけなくなる。

 だからチャオプはここに留まろうとしているのだ。

 たぶん子供が巣立つ日まで。


 チャオプのそんなところは好きだぜ。

 でもなあ……。


「その小さな子供も、わたしたちと冒険できないかしら?」とムアン。


 オレは首を横に振った。


「巣から出すには幼すぎる」

「だったらしばらくの間、わたしたちもチャオプとここへ留まらない?」


 ふたたび首を振る。


「ダメだ、ムアン。解毒剤を待っている人がいるんだ」

「そう、ここはわたしだけでいい。師匠もムアンも行ってくれ」


 おそらく迷惑をかけたくないのだろう。


 結局、オレたちは追い払われてしまった。

 ひとまずその場を立ち去る。



「ねえ。いいの、ラング? チャオプを残してきちゃって」

「いいはずがない。ただ意固地になっているときに、何を言っても無駄だ」

「じゃあ……」

「少しようすを見ようぜ。時間をおくことが大切だと思う」

「それしかなさそうね」


 シェムとムアンとともに歩いていく。

 この洞窟内ではいくつもの岐路にぶち当たった。

 上に行けそうなところは、のぼってみることにした。 


 予想どおり洞窟内部の崖上に出た。


 そこから俯瞰する。チャオプの姿が見えた。

 シショーとその子供と遊んでいる。


 しばらくこの場所から、チャオプを見守ることにした。


 だが、実のところあまり時間がない。

 早くファイアリザードの肝を持って帰らないと。

 もちろんチャオプも連れて。


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