1 婚約者の様子がおかしいようです(王太子視点)
私の名はオスカー・ベーレント
ベーレント王国の王太子で、私が何か大きなミスでもしない限り、次期国王になることは決定している
そんな私には当然のごとく婚約者がいるのだけれど、家柄だけで選ばれた女で、あまり好ましくは思っていない
傲慢なところがあり、金を湯水のように使っている
いつ見ても豪華な装いをしていて、金が有限であるということをまるで知らない
正直、婚約破棄をしたい所なのだけれど国が決めた婚約であるし、私のただの感情で破棄することはできず少々困っている
学校に入学したけれど、それは私と同じ年齢である婚約者も同じである
これから学校内で顔を合わせる数が多くなる と思うと少し憂鬱になってくる
入学から半年ほどたったある日、編入生がやってきた
なんでも、平民として暮らしていたけれど実は貴族の落胤だったらしい
平民の生活 というものが気になったので編入生を見かけた時、少し声をかけてみた
貴族の暮らしにまだ慣れていないらしくて、平民の生活を教わる代わりに貴族のことを教えることになった
が、その後友人であるユリウス・ライモンドから私の婚約者、クリスティーネ嬢が私たちの様子を陰から見ていたうえに少々上機嫌に見えた という話を聞き、何を企んでいるのかを暴くために婚約者の家へと行くことにした
4日後、婚約者の家へ向かった
出迎えにきたのは……だれ?
いや、分かっている
髪の色も、瞳の色も私の婚約者と同じだし、声だって同じのように思える
だけれど、目を背けたくなる程の濃い化粧はナチュラルなものに変わり、鼻が曲がるかと思うほどの匂いのきつかった香水は、むしろ心地の良いフローラルな香りになっている
髪型も、どのように巻いているのかと思うほどのドリルから少々ふわふわとした落ち着いたものになっている
態度からも傲慢さが消え、嫌悪感を抱かない、抱きようもなくなっている
何が彼女をここまで変えたのか、とても興味がひかれた
彼女の変わりように驚いている間に、どうやら応接間に通されていたようだ
なかなか話をしない私に対して、クリスティーネ嬢が話しかけてきた
「オスカー様、本日はどのような用件で?」
用件、か
「婚約者に用もなく会いに来てはいけないのか?」
私は何を言っているのだ?
いや、それよりクリスティーネ嬢の表情だ
一瞬だったが、何言ってんの? と言うような表情だった
当然だ
私たちは今まで必要最低限しか会ってこなかったのだから
気づいたら、1時間も彼女と話していた
それについては自分でも驚いた
今までであれば、5分とたたず別れていたのだけれどな…
今の彼女なら、結婚したい
政略であることを理由に仮面夫婦になるのではなく、お互いに心から愛し合える存在になりたい
そう思った
面白い
俺にこんな思いをさせる彼女とは何としても結婚してやる
タイトル回収 ですかね?