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八話

 


 それにしても何でこんなに広い森の中に一体しかいない魔物に出くわしてしまうんでしょう?


 はぁ…こうなってしまったら全力でやらないと死んでしまいますね。


  「君! すぐにその魔物から離れるんだ!」


 先制攻撃をするために魔法を使おうとしたところに声がした。


 横から黒い服を着た人が走ってきている。


 走ってきた黒い人は私と屍食鬼之王との間に割り込み、私を背にかばうような形をとる。


  「君、この魔物は危険だ! 下がって!」


  「いや、私も戦えーー」


 私が最後まで言い切る前に両者が動いた。


 一瞬で距離を詰め、黒い人は腰に携えていた漆黒の剣を抜き屍食鬼之王に斬りかかる。

 一方、屍食鬼之王の方もありえないようなスピードで動き刃物のような長い爪を振るう。



 聖女の私であったから目で追えたけど、少し強い程度の冒険者では何が起こっているのか把握できないだろう。


 剣と爪がぶつかり合う。


 実力が拮抗しているように見えたのは最初だけ。徐々に屍食鬼之王の身体が傷だらけになっていく。


  「すごい……」


 国が総力を挙げて討伐に向かうような魔物をたった一人で圧倒している。

 この人はいったい……


 剣でその爪を弾き返し決定的な隙ができる。


  「紫電一閃ッ!」


 ()()()ですら追えないスピードで放たれた一撃は屍食鬼之王の首を切り裂き、風圧で周囲の木々を揺らす。


 ぼとっ



 屍食鬼之王の首が地面に落ち、身体が崩れ落ちる。


  「君、大丈夫かい?」


 剣をしまいながら黒い人が私の方に向かってくる。


  「はい、大丈夫です」


  「この森に屍食鬼之王がいるという情報を知らなかったのか?」


  「いえ、知っていましたけど」


  「ならどうして?」


  「最悪出くわしても、勝てると思っていたので」


  「君は馬鹿なのか? 屍食鬼之王に君のような女の子が勝てるわけないだろ」


 むっ、馬鹿とは失礼ですね。私だって頑張ればあれくらい一瞬で倒せます!

 ……ごめんなさい。見栄を張りました。やっぱりちょっと一瞬は無理です。


  「勝てますよ! って、危ない!」


 屍食鬼之王の切り落とした頭の口から長い舌が黒い人に向かって伸びてくる。


  「ーーッ!?」


 私は即座に風魔法を発動し、伸びていた舌を切り落とす。


  「どうやら頭部まで破壊しないとダメなようですね」


 言いながらもう一度風魔法で無数の風の刃を作り落ちている頭部を切り刻む。


  「うわぁ……」


 ちょっと予想以上に気持ち悪いです。


  「……君は一体何者だ?」


 私の魔法が予想以上に強力だったようで驚いているらしい。


  「私は普通の女の子ですよ。それと、それはこっちのセリフです。こんな国を滅ぼしかねない魔物をたった一人で倒すなんて貴方は何者ですか?」


  「まぁ、さっきは助けられたし話してもいいかな。僕の名前はアティス・フォン・マルドルク。マルドルク帝国の皇太子と言った方が分かりやすいかな?」


 え? うっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!?


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