五十話
「近づいてる……」
私は王城の一室でベッドに腰掛けながらアティスが徐々に何か巨大な魔力を持った生物に近づいていくのを確認していた。
私がアティスに使った魔法は地下の図書館で見つけた『聖女日記』に記載されていた魔法だ。アティスの手の甲にある印は私が離れていてもアティスに干渉できるようにするものらしいです。
あの印のおかげで今アティスがどの位置にいるのか、周りに何があるのかを魔力を感じ取る事で把握することができます。
徐々に巨大な魔力へ向かって進んでいたアティスが止まりました。
止まった数メートル先に巨大な魔力の塊が存在しています。
私の数十倍はありそうな魔力。これほど巨大な魔力を持っている生物と言うことは……灼熱の魔剣使いギルアスカなのでしょうか? それとも、また別の何かか……
どちらにしても相手が化け物であることには変わりありませんが。
私は『聖女日記』に記されていた魔法について頭に浮かべる。
効果の解読が間に合って良かったです。
今現在、アティスの手の甲にある印のおかげで私はアティスに干渉することができる。干渉すると言ってもその方法は一つしかない。この日記に記されている魔法だけ。
アティスの手の甲の印に魔力を送ることで超強力な身体強化を施すことが出来るらしい。他にも術者と魔力感覚を共有すると言うよく分からない効果もあるらしい。
とにかく、アティスに超強力な身体強化を使えば少なからず勝機が上がるはず。
問題は私の魔力がどれだけ持つかという事。
あまり心配はしていないけど、もし仮に私の魔力が一時的に無くなって魔法が切れてしまったら再度使用することはできない。
どういう原理かは分からないけど一度だけリスクなしに対象に超強力な強化を施せるけど、一度魔法の効果が切れてしまってからもう一度魔法を使おうとすると術者に相当な負担がかかるらしい。
この日記の聖女も再度魔法を使ったことはないようでどうなるかは分からないみたい。
戦闘が終わるまで私の魔力が持てばいいだけだけど。
王国全域に結界を張っても大丈夫だったのだから流石に問題ないでしょう。
「アティスさん、無事に戻ってきてください」
アティスが目の前の化け物に勝てることを祈って私は印に魔力を送り、数千年前の聖女が作った超強化魔法を施行した。




