五話 ミア視点
お姉ちゃんから聖女の座を譲ってもらってから三日がたった日の朝、私は教会に足を運んでいた。
「ミア様! やっと来てくれましたか! 早くこの国に結界と加護を」
本当はお姉ちゃんから聖女の座を譲ってもらった日に教会から呼ばれていたのだけどイオンとのデートを優先していたら、たった三日結界がないだけで大騒ぎ。
三日間程度影響が出るわけないでしょう。
でも、まぁイオンにももう聖女としての仕事をしていると言ってあるしそろそろやらないとまずいかな? と思って来たわけなのよね。
「うるさいわよ。そんなに騒がなくたっていいでしょう」
「三日間も結界と加護がないなんて大惨事になりかねませんからこうなるのも当然です」
「たった三日間で大惨事になるわけないでしょ?
この国には優秀な騎士団だってあるのよ」
私は教会にいるシスター達に言った。
たった三日間程度のことで結界だの加護だの……本当に気に入らないわね。
「はぁ…まぁ、仕事だし仕方ないからやってあげるわ。早く結界と加護を付与する古代の遺物を持って来なさい」
私は早く聖女の仕事に使う古代の遺物を持ってくるように指示した。髪飾りの形をしたそれは聖女の仕事に欠かせないもの。
聖女の資格を持った人間がその髪飾りに魔力を流せば国に結界と加護を授けてくれる。髪飾りに魔力を流すだけの簡単なお仕事だ。
「どうしたのよ。早く持って来なさい! まさか、お姉ちゃんが持ってったなんて言わないでしょうね?」
おどおどしているシスター達に早く持ってくるように言うが誰も動こうとしない。
なんで動こうとしないのよ! 私は聖女なんだから言うこと聞きなさいよ!
「……ミア様、大変申し上げにくいのですが……結界と加護を付与する古代の遺物である髪飾りは二年前に破壊されています」
「……え? どう言うことよ?」
「そのままの意味です。古代の遺物である髪飾りはもう存在しません」
一人のシスターから発されたその言葉に私は頭が真っ白になった。
「じゃ、じゃあ! どうやってお姉ちゃんは結界と加護を維持していたの!?」
「マリア様は聖女の資格を持った三人の中でも飛び抜けて魔力が多かったので髪飾りの力なしでも辛うじて結界と加護を維持することができていました……」
ま、まさか、私だけの魔力でこの国全てに結界と加護を? 冗談じゃないわよ!
髪飾りを使った時の何百倍の魔力を必要とすると思ってんの! そんなの普通の人間ができるわけ……
「さぁ、ミア様早く結界と加護を」
「そ、そんなの、私には……」
どうすればいいの、イオン……