第四十五話
「え?」
どういうこと!? ありえない……
私の魔法に干渉した? まさかそんな事できる訳ない。
「今のはいったい?」
「……私の魔法が何者かによって妨害を受けました。結界を張る事は諦めた方がいいかもしれません」
嘘……干渉されたのに抵抗できなかった。
「もう一度結界を張る事は出来ないのですか?」
「魔法を発動する事は出来ますが、恐らく今と同じ結果になると思います。
そもそも、他人の魔法に干渉してその魔法を破壊するなんてことは普通はできません。一流の魔術師が相手の魔法に干渉することで魔法を破壊できる事が稀にあるそうですが、力量が同程度か大きく離れていなければ大抵の場合、抵抗されて破壊することなんてできません。
相手の魔法に干渉するには高度な魔力操作技術を必要としますし、一流の魔術師でも相手が相当油断していないか、圧倒的な力の差がない限り魔法に干渉して破壊するなんて芸当は不可能です」
力量に圧倒的な差がある時と相手が魔法への干渉を防げなかった時、つまり油断しきっていない限りほぼ不可能に近い。
そして、聖女である私を超える圧倒的力量を持っている人間なんて聞いたことも見たこともない。どんなに優秀な魔術師でも私と同レベルですら見たことがない。
それに、いくら魔力を莫大に使う複雑な魔法だったとしてもなんの抵抗もできずに、ほぼ一瞬で魔法を破壊するなんてありえないです。
仮に出来る人間がいるのならそれは私を遥かに上回る化け物と言う事になります。
「つまり、少なくともマリアよりも力量が上の魔術師が結界の魔法を破壊したと言う事ですか」
「はい……恐らく」
「魔法を破壊した魔術師の場所は分かりますか?」
「場所、ですか?」
魔法を破壊された時、確か……
「南東に……百、五、六十キロほどの地点から干渉を受けたはずです」
「地図を……」
アティスが部屋にいる人間に地図を持って来させようと辺りを見渡す。
重要な話のはずだったのでここにはメイドさん達はいない。唯一の執事であるルファルスは使い物にならないイオンの代わりに指示を伝えに行ってもらってるし、ミアは論外です。
「イオン陛下、この国の地図をお持ちいただいても?」
「……地図?」
アティスに名前を呼ばれて不機嫌そうに顔を上げた。
助けてもらっている自覚がないのでしょうか?
「ここから南東に百五、六十キロ地点から何者かがマリアの魔法に干渉し、破壊しました。
まずは、地形やその近くに何があるのか確認させていただきたいのですが」
「……南東に百五、六十キロ?」
「えぇ、そうです」
「それなら有名なのがあるだろ。灼熱の魔剣使いギルアスカ決戦の地だ」
「まさか!?」
アティスが目を見開いた。
灼熱の魔剣使いギルアスカ。数千年前、まだ魔族という種族が存在した時代。魔王の右手として世界に名を刻んだ最強の魔族のうちの一人。
勇者は魔王を含め数々の魔族を殺してきたが、殺せなかった魔族もいる。それがギルアスカ。
勇者とその仲間が遺跡に封印した場所は現在、灼熱の魔剣使いギルアスカ決戦の地と呼ばれている。




