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四十一話


 何故私が犯罪者呼ばわりされなければならないのか。私とアティスはイオンに説明を求めた。


 それに対してイオンが私が街を出る少し前の内容から話し始める。何故か、私とイオンの関係は婚約者ではなく、一方的に私がイオンを好きと言う事になっていたのは納得がいかない。私のことをクソ女と呼ぶのもだけど。

 とにかく今は話を続けさせよう。


 そして、私がこの街を出た後の話に入る。


 「聖女としての役割を果たそうとしたミアの耳に飛び込んできたのは聖女の髪飾りが破壊されていたとの報告だった。

 そこのクソ女が付けていたはずの髪飾りは、クソ女の使っていた教会の一室で破壊されていたんだ。

 状況から考えて破壊したのはクソ女で間違いない。街を出る前にクソ女がその部屋に訪れた時大きな物音が聞こえたとシスターも証言しているしな。

 ミアは髪飾りが無いにもかかわらず、自分の力だけでなんとか聖女として国民を守ろうとして努力したが髪飾り無しではどうする事も出来ず私に打ち明けてきた」


 話の最中、ミアの顔色は戻らない。

 イオンはいかにも可哀想と言った話し方で私たちに説明する。


 「泣きながらだ!

 ミアがどんな思いだったか分かるか!? ミアが自分よりも遥かに可愛げがあり魅力的な女で、私と婚約をしたからといっても流石に度が過ぎた嫌がらせだ。いや、ここまで被害が出ている以上ただの嫌がらせで済ますつもりはないぞ?」


 真剣な表情で睨みつけてくるイオン。


 うん、なんか言いたいことがありすぎる……


 「とりあえず言わせていただきますけど、私が一方的に貴方を好きだったなんて話に捏造するのはやめて頂けますか?

 私は昔、お父さんの命令で仕方なく婚約したのをそのまま続けていただけですし」


 「そ、そんな事はどうでもいい! 髪飾りの件が一番の問題だろ! この期に及んでそんな些細な事を指摘するとは反省など欠片もしていないようだな!」


 「はい、反省なんてしていませんよ。

 そもそも髪飾りは二年前に破壊されています。私が王都を出る前に壊すなんて物理的に不可能です。陛下……前陛下にはこの事は報告済みのはずですが、なんで王子であったはずなのに何も知らないのですか?」


 「何を言っている? 貴様が嫌がらせで髪飾りを破壊したのだろう!」


 イオンがこれでもかと言う大声で怒鳴りつけてくる。


 「ミアからその話を聞いたんですよね?」


 「あぁ、それがどうした?」


 「なら、ミアの言っている事は嘘です。仮に髪飾りが破壊されてなかったとしても、壊して出ていくなんてことしませんし」


 「貴様! ミアが嘘を吐くなどあるはずがないだろう!」


 「はぁ……黙って聞いていれば本当にうるさいですね。もう少し落ち着いて話す事はできないのですか?」


 黙って話を聞いていたアティスが口を開いた。

 その見つめる視線の先にはミアがいる。


 「嘘かどうかは本人に聞けばいいでしょう。

 貴女、この話しは本当ですか?」


 アティスの問いかけにミアは口をパクパクさせるだけだ。 


 「早く答えてください。

 私もこの話が本当ならマリアを帝国に迎え入れる話は白紙に戻さなければいけませんし、王国に相応の処分をしてもらう必要もあります。無論、真実ならですが」


 アティスの顔は微塵も私を疑っている様子はなく、ただこの場でミアに嘘を吐いたと認めさせたいだけに見える。

 

 「……ぁ……ぁぁあ……」


 呻き声にも似た声を上げる。

 それから数分はっきりとした言葉を話す事はなく、俯いたまま時が過ぎる。


 「あまりミアを怖がらせるな。ただでさえ国民に被害が出て心を痛めているんだぞ!」


 ミアが国民のことで心を痛める……?

 どうやらイオンは相当ミアにぞっこんらしい。私が知る限りミアが国民のことで心を痛めるなんてことあるはずがない。

 国民のことなんて無関心か、虫けら程度にしか感じていないでしょう。


 「イオン陛下」


 「なんだ、ルファルス?」


 「ミア様の言っている髪飾りの件は全て嘘で間違いありません。マリア様の言っていることが真実でございます」


 予想外の人物がミアの話を否定した事に、私もアティスも目を丸くした。


 「何を言っているんだ……?」


 「詳細は省きますが二年前に髪飾りが破壊されたのは事実です。破壊された当時護衛を務めていたのが近衛騎士だった事もあり、あまり口外したくなかったようです。また、国民に伝われば大騒ぎになることが予想されました。伝えるのは必要最小限と言う事で、第二王子ギベル様をはじめとする数人にしか伝わっていない事です」


 まさか執事さんが真実を知っているなんて。

 少し驚きだ。

 

 「なっ……」


 イオンは長年の付き合いである執事からそう言われて言葉が出ないようだった。

 こんな場面で出まかせを言うような執事ではない。その事はイオンが一番よくわかっている。だから頭ごなしに否定できなかった。


 「そうですか。嘘だと確認できただけで問題ありません。感謝し———」


 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


 執事さんの証言を聞いて嘘を突き通せないと悟ったのか、唐突にミアが壊れたように何度も何度も謝罪を始めた。

 焦点の合っていない瞳で続ける。

 その謝罪は私に向けたものなのか、イオンに向けたものなのか、自分のためのものなのか。


 ただ一つわかる事は顔色が青を通り越して真っ白になっている事だけだった。


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