三話
私が王都を離れてから3日がたった。
私はというと馬車を乗り継ぎ順調に隣国へ近づきつつある。
それにしても結界と加護を維持しなくていいから楽だなぁ。魔力が吸われないって本当にいい気分。
「お嬢ちゃん、あと五、六時間くらいで村に着くと思うから今日中には着きそうだぜ」
馬車の前から商人のおじさんが話しかけてくる。
今私が乗っている馬車はこの商人のおじさんのものだ。
小さな村を転々として商人をしているらしく、あまりお金を持ってないと言ったら無料で馬車に乗せてもらえた。
ほとんどお金を持たずに王都を出てしまった私としては非常にありがたい。
まぁ、馬車は積荷でいっぱいなので後ろの方のちょっとだけ座れるようなところに乗せてもらっているだけだけど。正直言ってお尻がすごく痛いけど、無料なんだし文句は言えない。
一応降ろしてもらう場所は次の村で、そこから街まで歩いて、また隣国行きの馬車を探さなければいけない。
「そうなんですね。ありがとうございます」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
私がお礼を言うのと同時におじさんの悲鳴が聞こえてくる。
「どうしたんですか!?」
悲鳴とともに馬車が急停止したので、私は馬車を降りて馬車の前に回り込む。
すると、馬車の進行方向に私の身長の三倍ほどあるオークが歩いてきていた。
「お嬢ちゃん! なんで馬車から降りてんだ! 逃げるぞ!」
おじさんは馬車を回転させて来た方向に戻ろうとしているが周りが木に囲まれたこの場所で進行方向を変えるのは時間がかかりすぎる。
その間にオークが到着してしまう。
「おじさん、オークって珍しいの?」
「当然だ! 何十年とこの道通ってるけどオークなんて出たのは初めてだ!
ここは騎士様が定期的に魔物を狩っているから護衛は必要ないと思ってたのによぉ」
普段はこの道にオークが出ることはないんだ。
私がこの国にかけた結界と加護を解いた影響が徐々にで始めてるなぁ。
って言ってもまだ3日しか経ってないんだけど……私にもできるって言ってたくせにミアは何やってるんだろ?
「あぁ! クソ! 馬車は置いて逃げるぞ!」
「おじさん、その心配はありませんよ」
私は近づいてくるオークに向けて雷魔法を放った。
空気を一瞬のうちに駆け巡り、細く強力な電撃は寸分違わずオークの心臓を撃ち抜いた。
オークはそのまま何歩か前進したものの道の脇に倒れこむ。
よし、大丈夫。
聖女として結界とか加護とか維持しなくていいからちゃんと魔法も使える。
「さぁ、おじさん。先を急ぎましょう、日が暮れる前に村に着かないと」
「あ……あぁ、そうだな。一体、お嬢ちゃん何者なんだ?」
「私ですか? 今は、極普通の女の子ですよ」
ちょっと前まで国を守護していましたけど。