存在の方程式
自分はまだ学生の身なので、投稿が遅れてしまうこともあります。そこのところはご了承ください。
新しく出る子の格好を派手にしすぎましたかね?
次の話は、凛の記憶となっております。興味にない方は飛ばしていただいて構いませんが、見て頂いた方が、選択がしやすいと思いますので(意味深)見て頂ければ、、、と思います。
「あ………」
気付くとそこに凛はおらず、また僕は白い世界に戻ってきていた。
「あれも、僕の記憶………」
かなり鮮明な記憶だった。最初の客観的に僕を見ていただけの曖昧な記憶と違ってその当時の思考まで僕には流れ込んできた。
凛。愛斗。
大切な人の名前。
なぜか懐かしさを感じる名前。
二人の名前はすんなりと僕の頭に入ってきた。
まるで一人の人間の人生についてのドラマを見ているように、続きが気になる。
この記憶が本当に自分のものだとするならばどれだけ波乱万丈な人生を送ってきているのだと思ってしまう。
「記憶の整理はついたかのぉ?ご主人よ」
記憶の整理をしている時。その声は突然聞こえた。
先程の記憶の最後にも聞こえた声。けれどその時よりもはっきりと聞き取れる。
自分の記憶にはない声。まだまだ記憶を取り戻せていない身としては当たり前のことなのかもしれないが、この世界にいる自分以外の存在が何者なのか気になり、僕はその方へ向いて………
「ぅえ!?」
結論から言おう。
僕は………
膝枕をされていた。
「うん?如何したのだ?ご主人よ。呆けた面をしおって」
彼女はこの白い世界でとても異質な存在だった。
髪の右半分は黒く、残りの半分は灰色のセミロング。
目も右眼は赤、左眼は青のオッドアイである。
さらに彼女は黄金に輝くドレスまで纏っておりーこれを見て自分の服装が少し気になってしまったー右手の甲には橙色の紋様。逆の手には翠に輝く紋様が浮き出てていて、トドメには、花蘇芳の様な蘇芳色のブーツを履いており、端的に言ってカラフルだった。
「おお。この格好のことか?」
どうやら僕の視線で疑問に思ったことを理解してくれた様だ。
「どうだ?自慢の服なのだ。私の大切な友人たちからもらったものなのだぞ?」
うん。理解していない様だ。
「いや、どうって言われてもね………」
すごく派手。以上。
なんて初対面の人に向かって行ったら失礼か………
「む、派手とは何だ!派手とは!」
「いや、一言も言ってないよ!」
心の中では思いましたが………
そ、それよりも初対面の人に膝枕はもっとどうかと思うんだけれどな………
「誰にでもこの様なことをすると思ったら大間違いじゃ。我はご主人にしかこの様なことはせぬぞ」
「いや、何も言ってないよ!?」
あれ?でも会話は成立している様な………?
いや、心を読まれている感じか?
「ふー。ようやく気づいたかご主人よ」
呆れた様に溜息を吐きながら首を横に振る彼女。
………もういいかな?もう膝から退いてもいいよね?
「ダメじゃ!ようやくご主人に会うことができたのじゃ!もう少しご主人を味わいたい!」
やはりと言うかようやく理解したというか。
どうやってか彼女は僕の思考を読んでいる様だ。
「読んでおるも何も、我とご主人は言わば共同体。あの世界でご主人が生まれた時点で、我らの感覚は繋がっているからのう。そして我の力が発揮する前に別世界に行ったせいで、外側の魔力不足でさらにご主人の体で眠ることになったからのお」
………ん?
「うん?ああ、まだその記憶は見とらんかったか。それはネタバレをしたようで申し訳ないの」
なんだか、はぐらかされてしまった。
コネクト?別世界?魔力不足?共同体?
いづれも、僕がいる国。日本では聞き慣れない単語ばかりである。
「安心したまえ、ご主人よ。すぐに意味も分かろうて。何より、ご主人もガッコウとやらがどんな場所か気になっておろう?」
一旦そこで話を止め、上から僕にあるものを見せてくる。
「結晶ならここにあるぞ?ほれ、ご主人の記憶巡りはこれからぞ?」
そう言って、僕に渡してくる結晶は………
紅かった。誰かを彷彿とさせる美しい紅色だった。
いつも通りに伸びかけた手が途中で止まったのもその色の所為だった。
「………この結晶は………?」
すぐさま理解する。これが自分の記憶では無いということを。
「んー。ご主人は知りたく無いか?」
「何をだ?」
彼女の疑問を疑問で返す。
「ふっ。凛の記憶を、じゃよ」
………!?
「動揺しておるなぁ………のう、もう一度聞くぞ?」
平然と心の中を読みつつ、彼女はもったいぶる様に、溜めて、
「知りたく無いのか?」
まるで僕を試す様に。その視線は僕の心の奥底を覗き込もうとしている様で、、、
「………」
「………いや、見ないよ」
僕の心が拒否反応を起こした。
嫌だ。そんな事したくない。そんな事したら。きっと。
「知らなくていいことまで知ってしまうから」
「………ご主人様らしいのぅ………」
ポツリと彼女は何か言った様だが、僕の耳にその言葉は届かなかった。
「仕方ない。ほれ」
彼女は右手に持っていた紅結晶を宙に投げ、代わりに見慣れた結晶を取り出し、僕に渡した。
「全く。ご主人の純潔さには、呆れるわ………」
呆れる。言葉ではそう言っても彼女の表情はとても柔らかいものだった。
「記憶を見て、自分が何者なのかを思い出して、そしてもし、凛の記憶が気になるならまたー」
「いや、見ないよ」
彼女の言葉を遮って僕は言った。
「僕は、見ないよ」
結晶に手を伸ばす。
「最後に教えて欲しいな」
結晶に手が触れる直前で手を止め、彼女を呼ぶ。
「なんじゃ?」
「君の名前は?」
彼女は最後の僕の質問に対し。
「いうのを忘れておったな。我はご主人の守護者」
手が結晶に触れる。透明な光が僕を包み込まんと広がる。
「マルクトじゃ」
彼女………否、マルクトはそう言って、
笑顔を向けた。
「ふぅ〜。これでは、作戦も実行できるか危ういな………」
……………
「おい。いるのは気づいておるのじゃ。出てこい」
彼女の言葉に呼応するかの様に突如世界がぐにゃりと曲がる。
「流石は守護精霊。契約者の心の中ではあなたの方にアドバンテージがある様ですね」
現れたのは形を成してはいるが、誰かまでは分からない人型の何かだった。
「お主ものぉ。どれだけご主人様のことを気に入っておるのか………最早ここまでくるとは思ってなかったからの。その胆力だけは精霊の王である私すらも唸らせるぞ」
精霊の王。彼女が自分で言った様に彼女は確かに高いくらいの存在なのだろう。
だが、褒められた本人は、はっ。と吐き捨てる様にして
「どうでもいいですから、瞬様を作戦通りに誘導して下さいよ。あと、あいつの記憶を渡そうとしましたね?どういうつもりですか?」
と言うと、「もう体が持たない………」と呟き、
「私はもう瞬様にあんな苦しみを味わって欲しくない。だから、瞬様に選択させるのよ」
瞬。つまりご主人を傷つけたくはないのはマルクトも同じである。故に、
「分かっておる。安心せい。ご主人が望む世界にしっかりと誘導していくからの」
望む世界、と言う部分を強く言ったのは気のせいではないだろう。何か引っ掛かりを感じながらも、自分の体内魔力も限界に近いので。
「質問には答えてもらってないけど………ッ!もう体が限界ね。頼んだわよ」
そう言うと、人らしき何かは消えていった。
「………全く、王女様も困った方ですね」
彼女は精霊同士の感覚を繋げていないとでも思っているのですかね。
そう言って新たに現れた人型の何かは、先程の存在とは違いはっきりと姿を象っていた。
「ティファレト………」
ティファレト。新しく現れた存在にマルクトはそう言った。
その声は先程の女性に向けた興味のなさげな声とは違い、優しい声色だった。
「うふふ。あの子、精霊を少しバカにしてはいませんか?魂の中の世界でもあるここで最も影響力のある存在は精霊だと言うのに」
マルクトはそうバカにするティファレトに何か言おうとするが。
それよりも早くーー
「ねえ?神さま?」
その視線はマルクトに向けられたものでは無かった。
「ティファレト!やめんか。神さまを怒らせてはいかんぞ」
そうティファレトを窘める。マルクトの表情は微かに強張っていた。
そんな様子のマルクトをチラリと見て、さも聞こえなかったかの様にまたわたしたちに話しかけてくる。
「ねえ。神さま。貴方は凛の記憶が見たい?………いえ、見たいでしょう?」
「ティファレト!!」
静止の言葉がティファレトに降りかかる。
「神さまは死と生、どちらを選んでくれるのかしら」
………………………………
「ふふ。願わくば神さまの望みが私達と同じであることを望むわ」
………………………………
「頼む、、、、いえ、お願いしますね?神さま?」
その視線は、この世界ではない虚空を向いていた。
その視線は、我々を見つめていた。
気づけば、わたしたちは、紅い光に包み込まれ。
ある人の記憶を覗いていた。
なんて、暖かで、優しくて、情熱的な、毎日なのだろう。
そう思うわたしたちの、近くで金髪の彼女はクスリと笑った。
「私の協力者」
厳重警戒。厳重警戒。厳重警戒。
精霊の王『マルクト』の確認。今回の◯◯への反逆者のため、厳重警戒に処す。
警戒。警戒。警戒。
西の王女『フィリア・ウェンディア』の確認。『マルクト』との関連性を警戒。
厳重警戒。厳重警戒。厳重警戒。
美と魔の精霊『ティファレト』の確認。『マルクト』と共に運命を乱そうとしている可能性有り。