白い記憶(友人)
誤字やおかしな部分があれば言ってくださると嬉しいです。
まだ序盤であるためよストーリーの全貌が見えてこないかもしれませんが、最後まで見てくだされば幸いです。
投稿は不定期になります。極力早く投稿したいと思いますので、応援お願いします。
「ちーがーう!漢字。間違ってるよ〜!」
「何でこんなに文字が多いんだよ?」
ただ今、勉強中。この国の文字を勉強すると言って半年経ったけれど、未だにこの漢字というものには苦戦させられていた。
「私もそれはいっつも思っているわ………」
凛自身もこの漢字というのが苦手のようで、僕に教えてくるときもたまに分からない漢字があるようなのだ。
「まあ、それでも真面目に勉強する瞬くんは凄いと思うよ。」
らしくない凛の言葉に僕は凛の方を見てしまう。
僕を助けてくれた凛はとても優しくて今とは別人のようだったけど、一緒に生活させてくれるようになってから、僕にも家族のような接し方をしてくれるようになった。
単に慣れて素が出ているだけなのかもしれないけれど、それでも素が出てしまうぐらいに僕のことを信用してくれているのではないのだろうか?
そう考えると心が暖かくなって、何とも言えない知らない感情が僕を包み込んでくるような変な感覚に襲われる。
目が合う。
彼女の綺麗な黒目が僕の黒目と合う。
こんな異界の地で、僕と同じ色の目をする子とたまたま会えた事が、信じられなくて最初は強く当たってしまった。
でも彼女は、凛は僕に優しくしてくれて………
「ありがとう。凛」
最初に覚えさせられた言葉は、、、いや、最初に素直になった言葉は「ありがとう」だった。
唐突にそう言った僕に凛は珍しく
「な、何言ってんの!バカ!瞬くんには、勉強してもらった分、いっぱい稼いでもらうからね!!」
初めて見た凛の慌てる姿に少し僕は呆けてしまったけれど、その顔を僕だけに見せて欲しくて………
「凛」
気づけば彼女に近づいていた。
僕達はまだ9歳。
勿論、恋とかそういうのに全く興味がないわけではない。
いやいや、ませてるだろ。こういうことしたら凛に引かれちゃうし、何より恩を仇で返すのはどうなんだろう?
でも、凛なら………凛なら………もしかしたら………?
「あ………瞬…………くん………」
気づけば彼女に近づいていた。
怯えている?いや、これは………?
この感情は?
こんな感情、僕は知らない。
こんなの僕じゃない!!
僕は、僕は………
「ご、ごめん!!」
自分自身の過ちを謝る。
僕は何をしているんだ!?何、バカなことを………
「と、トイレ行ってくる!」
尿意は無い。嘘を言った理由は、この場に居たくなかったから。
嫌だったから。自分の汚い部分を見られるのが、自分の醜い面を見られるのが。
脳裏に浮かぶのはお母さん。
「怒ったら、すぐに謝るの。相手が許してくれなくても、自己満足でいいから、謝意を見せるの」
僕自身に行った言葉では無いのかもしれない。でも、あっちの世界の言葉で言ったお母さんは、僕に何を伝えたかったのだろうか?
嘘を吐いた。汚いところを見られた。
喉から嫌なものがこみ上げる。咄嗟に嘘を吐いて正解だったかもしれ………
「待って!瞬くん!」
僕は既に部屋からいなかった。
「はぁ………」
凛に合わせる顔がない。どうやって彼女に接しろというのだろう?
僕は………僕は………
「あ、瞬くん!もう大丈夫なの?」
下を向いていた顔を上げて、彼女に謝罪する。
「ごめん。もう大じょ………」
丈夫。そう言えたらどれだけ良かったか。
目の前に立つ黒髪の少年は固まった僕を訝しむように覗き込んでいた。
「えっと………」
不躾な視線に晒されて、僕の意識はようやく現実に帰る。
「……コイツ?コイツが清宮 瞬って奴?」
「ちょ、ちょっと!失礼だよ!愛斗!」
愛斗。呼び捨てだった。
彼は誰だろうか?
僕よりも仲がいい。
知り合い?
論外
友人?呼び捨てだろ?
現実を見ろ
親友?
男女間の親しい友をなんと言うんだ?
「………」
口に出せない。出したくない。
「えっと………気を悪くしたならごめんね?瞬くん。彼は夜夢 愛斗。私の幼馴染………かな」
幼馴染。つまり、僕よりも長い間接してきたって事………
「そ、そっか。そりゃそうだよね。凛にも友人の一人や二人ぐらいいるよね。あははは………」
僕の乾いた笑いがリビングに響く。
さっきの気まずさ。謝罪できていないこと。突然現れた凛の幼馴染。
僕の頭はショート寸前だけど、なんとか耐えた。
そこで、ピクリと反応したのは、愛斗だった。
「呼び捨て?」
反応したのはどうやら凛のことを僕が呼び捨てにした事のようだ。
「あー。うん。瞬くんには、呼び捨てで良いって言ってるんだ〜。ほら、一緒に住んでてずっとさんずけなのもアレだし………」
「………そうか」
明らかに納得しきっていない様子の愛斗だが、凛が呼び捨てにするぐらいには信用するに値する人物ではあると思ったのか、
「まあ、よろしく」
「あ………うん」
握手し合った。
握り合った僕達の間には火花が走っていた。ーような気がしたー
「んで、コイツ………えっと、瞬だよな?瞬を、俺達の学校に転入っていう形で入れさせるんだろ?」
え?そうなの?
凛を見る。
「そう。瞬くん、最近の記憶どころか私と会うまでの記憶が全部ないらしいの」
ああ。そういえば、そういう設定だったね………完全に忘れてた………
「ふーん………記憶がないねー」
明らかに訝しんでいる。
当たり前だろう。突然幼馴染の家に泊まりだしたと思ったら記憶までないとなったら、怪しむどころか不審者だろう。
「その事、俺に言って良かったのか?」
「………え?」
凛が驚いた顔をする。
いやいや凛さんや………
「その事、学校側にそのまま伝えるわけでは無いんだろ?もし俺がこの真実を学校側に伝えたらどうすんだよ」
………全くもってその通りだ。愛斗がどれ程までに信頼できる存在なのかは知らないー知りたく無いーが、この事を僕と凛以外が知ってしまうと広めらてしまう可能性がある。
学校側にも秘密にしておきたいなら尚更、生徒にバレては問題だろう。
「そこは………ほら、愛くんは信頼できるからさ!!」
愛くん………?
「あ………いや………ぅん………」
そう力説?された側の愛斗は、顔を少し赤らめながら
「まあ、広めたりはしねえよ。信頼できるしな、俺は」
と、誰に向かって言ってるのか、小さくそう言った。
にしても、愛くんとな………
僕は、お邪魔だろうか?
そう考えた瞬間、全身を嫌な感覚が駆け巡った。
鳥肌が立つような恐怖感とかとは違う恐怖。
僕の中の何かが変わるような、気味の悪い感触。
純粋でいなければ。
綺麗な心を持ち続けなくちゃ。
嫌われたく無い。
どちらかと言うと、愛斗とも仲良くしたい。
僕は、凛を諦めるべきなのだろうか?
そもそも、凛と僕はただのルームメイトだ。
それにしては行きすぎな関係かもしれないけれど。
そう。僕は只の、
彼女にとっては只の、
ただの。
視界がぼやける。
「ーーーーーーー?」
誰かが僕を呼んでいる?
『ーーーーーー』
「ーーーーーーーー」
二人から呼ばれる。
片方は、目の前の少女。
もう片方は……
『早く起きないか。ご主人よ』
知らない声だった。
ーーそして僕の回想は終わる。
2回目の記憶廻りの終了を確認。
異常は無し。私の◯◯通りの内容。
第4の壁への干渉も未確認。
『夜夢 愛斗』の存在を確認。