白い記憶(純心)
誤字やおかしな部分があれば言ってくださると嬉しいです。
まだ序盤であるためよストーリーの全貌が見えてこないかもしれませんが、最後まで見てくだされば幸いです。
投稿は不定期になります。極力早く投稿したいと思いますので、応援お願いします。
最初に訪れた感覚は、暖かさだった。
それは優しく僕達を包み込む春の太陽の様に………
それは微笑みながら僕を包み込み僕に感情をくれた。
喜び。安心。興奮。幸福。満足。
そして憧憬の念。
そうだ、僕は………
母さんの様になりたかった。
僕が初めて憧れた人はお母さんだった。
「ーーーー?ーーーーーー?」
声が聞こえる。優しくて何処かくすぐったい慈愛が含められた声。
まだ幼かった僕の記憶の奥底に眠る大切な記憶。
白い感情。
純粋な僕。
汚れを持たなかった頃の僕。
なんて甘い記憶なんだ。
なんて儚い記憶なんだ。
僕は眩しそうに、純粋な僕を見ていた。
「ーー?ーーーーーーーーーーーー?………ーーーーーーーーーーーーーー?」
お母さんが聞きなれない言語を口にして何処かへ行く。
「お母さん………?」
気づけばそこにお母さんはいなかった。
静かに吹く風が僕に新たな感情を産み付ける。
不安。焦燥。緊張。恐怖。悲しみ。
いつだってそこにいた暖かい光はもう僕の前にはいなかった。
「お母さん?」
当時の僕は………確か7歳。
様々な感情が心の中で唸りを上げる中、僕はお母さんを捜しに立ち上がり、家の中に入る。
(ああ、そうだったな)
家の中は広く今思えばまるで何処かの王様の家かと思うほどだった。
(…………!?)
視線の先の僕を見つめる。
少し不安そうに、少し悲しそうに、でも希望を持って歩いている。
何を求めて?言うまでもないだろう。
なんて純粋なんだ。僕は今一度そう感じた。
(…………!?)
先程と同じ感覚。視線の先の僕は変わらない。
そうだ普通に考えて、こんな気持ちにはならないはずだ。
目の前の少年の様に多少の不安は持っていたとしても、こんな感情にはならないはずなんだ。
(ダメだ)
胸が締め付けられる。ドアはもう目と鼻の先だ。
このドアを開ければ、お母さんはきっと誰かと話しているだろう。
(行くな。ダメだ)
誰と話しているのだろうか?いつもオヤツを僕にくれるおじさんかな?
(期待を持たないでくれ。そんな顔で………見ないでくれ)
少年自身この時にはもう気づいていた。いつものこの時間ならば誰も来ないはずである事を。
それでも少年は新しく芽生えそうな嫌な感情を隠す様に、キラキラと輝く良い未来を妄想していた。
(開けないでくれ………)
絶望が体を包み込もうとする。冷たい何かが体を這おうとする。意識だけの体が恐怖に飲み込まれようとしている。
(やめろ!!!)
ガチャリ。
意識に反して、ドアは3歳の子供の手によってすんなりと開けられた。
ビチャリ。
「……………おかあ………さん………?」
優しさが全身を包み込むのは早かった。しかし、絶望が心を黒く染め上げるのはそれ以上に早かった。
紅い花が咲き乱れる。
丁度時期が良かったと言うべきだろうか?
彼女が死体として倒れてきたのと、少年がそれを見つけるのは同じ瞬間だった。
バタリと横で倒れる暖かい何か。
瞳孔が開ききった少年。
少年の心には恐怖としてそれは刷り込まれた。
「あ………ああ…………あう…………?」
言葉を上手く話せない。固まった理性。理解する事を避ける本能。
かくついた首をなんとか動かしてチラリと横を見る。
花壇のそばには大切な人が転がっていた。
広がる血だまりを見て僕は絶叫する。
そんなお母さんの死体は見たくなくて、僕はつい近くの花を千切ってお母さんの顔に添える。
紅い花だった。綺麗に輝く紅い花。
愛の花は絶望に彩られる僕を無表情に見つめながら、綺麗な紅い花びらを黒い赤に染めていった。
「がっ!?」
絶望したまま動かない僕にどういった感情を抱いたか、お母さんを殺した人間が僕に蹴りを入れてくる。
フワリとした浮遊感の直後、僕は壁に激突していた。
息が乱れる。呼吸はしっかりとできているだろうか?
僕は………逃げるべきなのだろうか?
理性が叫ぶ。ここは逃げるべきだと、逃げて逃げて逃げてどんなに無様でも逃げて、生き延びなければ、と。
しかしその考えとは逆に体は鉛の様に重く指の先まで動きそうになかった。
本能が優しく僕を諭していた。お母さんがいないこの世界で生きる理由なんてあるのか?と
逃げてどうするのだ?力を身につけて復讐でもするのか?
生憎、少年にはもう憎悪や殺意といった感情は湧いていなかった。
ただただ、お母さんと一緒に居たかった。
少年の心には空虚が広がっていた。
何もないこの世界への虚しさしか持っていなかった。
動かない僕を見た親殺しの人間達は、そんな僕にも慈悲を持たず………
白銀の剣が上空から飛び降り、僕の首を………
掻っ切る。直前にその手は止まった。
まさか情けをかけているわけでもあるまい。何なのだろう、そう思った僕は顔を上げる。
僕の目に映ったのは驚愕した人間と光り輝くお母さんの姿だった。
「おか………あ……さん………!!」
非現実的な光景を目の当たりにして、まだお母さんが生きているかもしれないという希望が心に灯りかける。
直後、その期待は裏切られた。
お母さんを中心とした閃光が僕も人間も全てを無差別に包み込んだ。
僕は………死ぬのだろうか?
お母さんは最後の最後で僕も巻き込んでまでも復讐しようとしたのだろうか?
それにしては妙に暖かい光に呑まれながら僕は、また夢の続きを見ようとお母さんの手を握って目を瞑った。
どこかで見た様な白い世界の幻影を見た様な気がして、僕は目が醒める。
「ーーーーーーーーー?」
聞き慣れない言葉。でも同時に、聞き慣れた言葉。
「お母さん………?」
そう呟く僕が最後に見たものは、赤髪の少女だった。
最初の記憶廻りの確認。
運命の乱れは未だ未確認。
◯◯を続ける。