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白い記憶と共犯者  作者: 安川 瞬
運命の特異点〜異世界転移
10/28

白い記憶(出会い)

今回はのほほんとした回です。

全くダークな要素はありません(フラグ

次回から、徐々にダークな要素が増して行くと思います。

是非楽しみに待っておいてください。

そしてブックマークと評価をしてくださった方ありがとうございます。

他の読んでくださった方も是非評価等してくださると嬉しいです。

誤字脱字等も教えて頂ければ嬉しいです。

 僕は小学4年生になった。

 つまり、この世界に来て1年経った。

 お母さんが……死んで、1年。

 凛と出会えて1年。

 そしてこの世界に来れて1年。

 僕の身には様々なことが起きた。

 一番悲しい事と一番嬉しい事が同時に起きて、成り行きで助けてもらって、家族同然の扱いをしてもらって……。

 凛以外にも、愛斗君とも最近は仲良く出来ている。

 何よりも今年から愛斗君も同じクラスなのである。

 時雨ちゃん……。末広時雨(すえひろしぐれ)ちゃんとも、同じクラスである。

 何度か、一緒に帰ろうと誘ってみるけど、少し喜んだ後にすぐに諦めた様な顔で「やっぱり私は良いですよ……」と言って、未だに一度も遊んだ事や一緒に帰ったことが無い。

 新しいクラスになっても、今まで通りだった事や逆に新しくなった事も沢山あるけれど、やっぱり一番嬉しかった事は。


「瞬君? どうしたんだい? 愛斗達が待っているよ?」


「あ、ああー。ごめん。ちょっとボーッとしてた」


「全く、君は勉強も運動もできるのにそういう所が抜けているから……」


「あははは……」


 苦笑いする僕に、彼も微笑を浮かべる。

 そう。目の前にいる彼こそが、新しく僕たちとよく遊ぶようになった「滝沢悠太郎(たきざわゆうたろう)君である。

 彼は……何というか、すごく大人である。

 何も考えずに行動する僕とは大違いで、悠太郎はいつもみんなを後ろから見守っている感じがする。


 悠太郎との交友関係は凛達と比べてまだ浅い。

 このクラスになって最初の給食時間……もとい、弁当の日。

 3年の後半から、凛の家でーーまあ、僕の家でもあるけどーーよく遊ぶようになっていた愛斗と一緒にみんなで弁当を食べていた時だ。


「なあ」


「どうしたの?」


 静かな声で話しかけてきた愛斗君に僕も釣られて静かな声で聞き返す。


「……あいつなんだけどさ」


 愛斗君があいつと言った相手……愛斗の視線の先には1人の白髪の少年が黙々と弁当を食べていた。


「1人……だね」


 凛が少し気まずそうに少年が現在置かれている現状についてをそうまとめる。

 愛斗君が「ああ」と短く首肯し、僕たちに視線を向ける。


「放って置けない」


 ……僕がこの学校に来る前、凛と愛斗はクラスのまとめ係のようなものだった。

 担任の先生曰く、愛斗はそういうのを放って置けない性格らしい。とは聞いていたのだが……

 どうやら、噂通り…いや、噂以上のようだ。


「そうね。1人でいるより、みんなでいる方が楽しいわ」


 まあ、凛も楽しそうだから良いんだけどね。


「僕がどうかした?」


「うわ!?」


 後ろから突然聞こえた声に愛斗が肩をビクリとする。

 声には出なかったものの、僕も驚いてしまった。

 愛斗の後ろから突然白い髪の少年が現れるものだから……。ん?

 ()()()という部分に引っ掛かりを覚えて、先程まで1人で弁当を食べていた少年がいた席を見る。

 そこには、いるべき相手が座っておらず、机の上に弁当があるだけだった。


「ふふ。驚きすぎだよ。()()()君達、さっきから僕の方を見ていただろう?なにか用があると思ったのだけれど」


 朗らかな笑みを浮かべて、彼が僕たちに質問をする。


「ほら、僕って見た目が少しアレだろう?だからこそ、興味は持たれても話しかけられる事はあまり無かったんだ」


 先程までの、物静かそうな雰囲気と違い今の彼は……興奮しているようだった。


「えっと……」


 ここで、今まで圧倒されていただけの僕たちの中から凛が口を開いた。


「ああ。ごめん。久しぶりにこうやって同級生と話すものだから、少しはしゃいでしまったよ」


 そう言う彼の顔は本当に幸せそうで、こっちも元気になってしまう程だった。


「ああ、そう言えば愛斗君とは同じクラスになった事があるけれど、そこのお二人さんは?」


「あっうん。えっと、私は赤浜凛。そして…」


「僕は清宮瞬だよ」


 いつの間にか輪の中に入って来ていつの間にか友達みたいになっていたけれど、きっとこれが悠太郎の凄いところなんだって僕は思う。

 気づけば昼ご飯の時間も終わっていて、僕含め4人で遊ぶのがどれだけ楽しかったか……。

 僕はこんな平穏な日々を待っていたんだ。

 凛は当然として、愛斗とも仲良くなれたし、悠太郎は僕と愛斗の仲介役になってくれる。

 お母さんの事や、()()()()()のことが気にならないわけじゃないけど……今だけは、楽しんでいてもいいかな……。


 そしてあれから、1ヶ月後。

 悠太郎に僕の家のことについて話して1週間がたった。

 悠太郎なら信用出来る。と言う凛の言葉で伝えることになったけれど。

 何故だか。あの日から、悠太郎と僕の間に何か……壁ができてしまったような気がしてならない。

 僕の気のせいだといいんだけれど。すごく嫌な予感が背中を駆け巡る感じがする。


「えっとさ、悠太郎君」


 帰り道。勇気を振り絞って聞いてみる。


「どうしたんだい?みんなを待たせちゃ悪いから、早く質問してね」


 普段と変わらない笑み。でもなんだかそこに陰りがあるような気がする。心なしか、言葉もきつい気がする。

 気がする。気がする。気がする。

 気がするばかりで、事実かどうか分からない。


「あの、悠太郎君……はさ、僕のこと、もしかして……避けたりとか…してる?」


 喉が乾く。

 今の友人関係を壊したくないならそういうことは言わないほうがいい。それは分かっている。

 でも僕も子供だ。こんなギクシャクしたまんまなんて嫌だ。

 愛斗の場合はすぐに態度に出るし、僕を嫌う理由も……分かる。

 でも…悠太郎は?


「避けてる……?えっと、瞬君。何か勘違いさせてるみたいなら謝っておくけど、僕のこの態度はいつもだよ?」


 いつも通り。いつも通りなんだろうか?


「……う、うん。ごめん。凛のところに早くいこっか」


 それ以上の質問は許されない気がして、僕は急いで校門の下まで走って行く。

 凛の笑う顔。愛斗の遅えんだよって言う感じの顔。

 後ろを振り返って、

 悠太郎の優しい笑顔。

 いつも通り。きっとこれがいつも通り。





「愛斗君。瞬君は結構手強いよ?」





「え?」


 なんでもないよ。悠太郎はそう言って僕たちについて来た。

記憶廻りは順調だ。

しっかりとーーも運命を選択してくれるだろう。

……ああ。約束通り、ちゃんと作るよ。

お前が望んだ世界を。

『滝沢 悠太郎』の存在を確認。

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