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世を超え、時を超え 〜今世部 ある高校の出会いから始まった壮絶な戦いと青春物語〜  作者: アルシェ
入学編 理系少女と文系少年の謎の出会い
1/1

0話プロローグ

作者は女性ですがこの作品は女の子の方に色々とファンタジー的秘密を持たせたいので始めは男性主人公視点から初まります。

文章がおかしかったら指摘お願いします。

 ――痛い、冷たい、苦しい、怖い。


 負の感情が込み上げてゆき、死に向かって脈打つように血が流れ、白い雪を赤い血が染めていく。

 これは背中から伝わる雪の冷たさなのか、それともこの体の冷たさなのか。


 痛みに身を任せていても分かる。今、自分は目の前に立っている少女に殺されようとしている。

 足を動かして逃げようにも神経が切られてるのか感覚がない。手を動かしたらますます失血しそうだ。


「しっかり!死なないで!」


 横からもう一人の女性に呼び掛けられる。でも、俺の声はもう出ない。


「お兄ちゃん!」


 妹が顔をしわくちゃにして叫んでいる。でも、俺の手は動かない。


 目の前の少女にはもう人間味はない。化物だ。出会った時から気付いてたのに止められなかった。もう彼女は死んでいる。


 やばい、視界が霞んできた。死ぬ前にこれだけは伝えないと。


「逃げるな」


 目の前が真っ暗になった。


 俺の声はちゃんと出てただろうか、彼女に聞こえただろうか。


…━━…━━…━━…


2020年4月6日

高校の入学式の春。


 小沢 柳(おざわ やなぎ)、15歳。


 朝、まだ夜が明けきってない青白い空に桜色の景色から始まった。また目覚ましがなる前に起きてしまったし、お隣さんの桜が自室の窓に直面してるから当たり前なのだけれども。それでもかなり清々しい。

 目覚ましがなるまで本の続きでも読んでおこう。布団のそばにある「銀河鉄道の夜」をそっと手に取り、昨夜挟んでいたしおりの位置を探した。



 ディリリリ・・・


 「うるさい」

 本も満足に読み切れないまま目覚ましが鳴った。寝起きの清々しさが少し台無しになったが、一階で物音がし始めたので白石さんが朝食を用意しているのだろう。もう顔を洗わなければならない。

 部屋の中は暖房が効いてて暖かったが、廊下を出るとまだかなり寒い。急いで顔を洗い、歯を磨いて、長袖のシャツに着替えて、朝食を食べにリビングに向かう。


「柳君、また目覚ましがなる前に起きたの?今日は入学式だし、もうちょっと寝ててもいいのに」


 階段を降りると白石さんの心配そうな声が聞こえた。


「すみません。でももう起きてしまったし心配しなくていいですよ。白石さん」

「そういう問題じゃないわ。それに敬語は止めてって言ったでしょ!取り敢えず下の名前で呼びなさい」


 彼女は半年前に俺の父親が新しく雇った使用人だ。母親代わりと言われ、3度目の使用人だが、そういわれてもただ虚しいだけだ。別に自分で家事が出来ないわけではないし、正直煩わしいし邪魔だと思ってるが、そんな事を口に出すわけにもいかない。


 ーーこちらも取り敢えず言い直しておこう。


「わかった。おはよう麻美さん」

「ええ、おはよう。柳君」


 朝食を食べたら自室に戻って机で少し本の続きを読み、9時半には入学式に家を出るからあらかじめ制服に着替えておく。俺が通う高校は珍しく学ランだ。一応父親から私立も勧められたが、借りを作りたくなかったので普通の偏差値が悪くない徒歩で通学できる公立高校を選んだ。

 別に反抗期だとかそういうのじゃない。物心ついた時から父親の事が信用出来なかった。母の事についても。


ーー考えるのは()そう。


 頭に浮かんだことを振り切るように読書する。




「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 ドアを開けると予想した通り、冬に雪が降り(にく)いぶん、春に桜が沢山咲くようにされている。ここはまだ人通りが少ないので踏まれることなくピンク色の絨毯(じゅうたん)のようだった。

 桜を眺めながら学校までのんびりと歩いてると、桜の木の横に少女が立っていた。高校生にしてはかなり小柄だ。140㎝ぐらいか。ここでは珍しいセーラー服だから多分同じ新入生だろう。でも、小さくて制服がなければ中学生に見える。

 地図を持ちながら桜を眺めてると思ったら、肩にかかる程の茶っけのある黒髪に付いてる桜の花びらを払おうともせずこっちを見て、頭を軽く下げてお辞儀した。


「こんにちは。総合高校の方ですか?もしよければ途中まで道を教えて下さい。地図を読む自信がないんです」

 やっぱり同じ高校だ。総合高校といえばこの辺りでは一つしかないし、こちらを向いたことで胸の校章が見えた。


 ――怖い


得体の知れない恐怖に少し固まってしまった。怒ってるとかいう怖さではない。人殺しっぽい目だ。でも、これは多分俺だけが思う事だ。多分普通の人からは礼儀正しくハキハキしてて良い子に見えるだろう。


ーー関わりたくない。


 そう思った。

「すみません。やっぱりいいです」

 俺の顔が強張ったのに気付いたのかその子は困ったように笑った。今度は気持ち悪いと感じた。


 気付くとその子はもう校舎の方に走っていった。






バンバン書いていきます。

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