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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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流水の聖女

【海を望む崖】

  

 崖の上に立つ青いドレスの女。黄金の巻き毛に白い肌。

 女は肩から青い布を外すと、肢体に沿ってドレスが滑り落ちる。左の足首にサファイアをあしらった黄金のアンクレットが女の肢体を飾る唯一のものになる。

 まったくの素裸になった女は、助走をつけると崖から海に向かって身を躍らせた。

 立ち上る水煙

 海の中で泳ぐ女は、躍動するイルカやクジラのようだった。水面に顔を出す。

 太陽が昇らない、一日中夜の海に大の字に女は浮かぶ。まるで海と一体化するかのように



グレイスの声:「ベルタ!」

ベルタと呼ばれた女は、陸地に目をこらすと怪訝そうに目を細めた。

(なんで?)と言わんばかりに。

陸地に手を振る女の姿が小さく見える。

女の体が勝手に動く。手足を動かしているわけでもないのに、女は波間も陸に向かって進んでいく。

徐々に大きくなるグレイスの姿。手には女の青いドレスを持っている。

するりと海を出るベルタ



グレイス:「ベルタ、元気そうね」

ベルタにドレスを渡すグレイス

脱いだときと反対の動きでドレスを着るベルタ。

簡単に髪の水分を飛ばすと、裸足のまま歩き出す。まるで、グレイスなんか最初からいなかったように



グレイス:「頼みがあるのベルタ。一緒にサンドピークに行って欲しいの」

ベルタ:「・・・・」

歩くのをやめて、グレイスの方を見る。

グレイス:「あなたと一緒じゃないと、あんなところ危なくてとてもじゃないけど、行けたもんじゃないし、水の民と一緒ならば怪しまれることはないし」

ベルタ:「姉さん・・・」

グレイス:「なあにベルタ?」

ベルタ:「どうして私なの?ほかの水の民にお願いできないの」

グレイス:「そりゃ、あなたが世の中から距離を置いているのは知っているわよ。人のやることに興味がないんでしょ?」

ベルタ:「そう。姉さんは人との関わりを求めて旅をしている。私は水とだけ語らう」

グレイス:「もちろんそれは分かっている。でもこれは私たち風の民だけじゃなくて、あなたたち水の民にとっても、重要なことなのよ」

ベルタ:「風の力を増やしたいの?これ以上船を増やして風を吹かせて何をしたいの?」

姉に背を向けるベルタ。

ベルタ:「さようなら姉さん。姉さんのことは愛しているわ。けど、それとこれは別よ」

グレイス:「太陽の子と一緒でも?」

ベルタの足が止まる

グレイス:「青い海に飛び込んで見たくはない?」

ベルタの青い瞳がゆれる

読了ありがとうございました。

まだ続きます

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