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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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雪の女王

【ゆりかごの森 森の端】


 森の出口に立ち、一行を見送るスーリヤ。彼女の周りには鹿やら虎やら森に住むほとんどの生き物が集まっている


スーリヤ:「あなたに幸せがありますように」

青々と繁った若木の枝でヒューマの全身をなでる

ヒューマ:「ありがとうスーリヤおばあさん」

スーリヤ:「おばあさんだけよけいだよ」

ヒューマ:「俺、絶対に父さんを探してみせる。そして太陽を昇らせてみせるよ」

スーリヤの笑顔にかすか陰りががみえる。だが、気がつかないくらいの小さな陰り

スーリヤ:「サーラ」

サーラを呼んでなにやらアクセサリーを出す。

サーラ:「それは・・・」

スーリヤは、復活祭の夜にヒューマが手に取った「サーラに似合うネックレス」と全く同じものをサーラの首にかける

スーリヤ:「これがあなたを守ってくれる」

母のような眼差しになるスーリヤ

サーラ:「私を・・・」

ネックレスは、まるでサーラのために作られたように、とてもよく似合っている。

スーリヤ:「必ずもどってくるのよ」



【スークの町】

 雪山登山の準備を整える一行



【北の山脈 登山口】


 白く煙った空に、雪を被った稜線が見える


サーラ:「寒いね」

息が白い。全員厚手のケープとマントを重ね着して、靴は頑丈なブーツに履き替えてある。

ジェス:「グレイスはキャンプに戻ってくれ。俺たちはどうなっているのか、伝えてくれ」

グレイス:「わかったわ」

ジェス:「あまり暴走しないように、みんなを沈めてくれ」

頷くグレイス。

グレイス:「しっかりやんな」

ヒューマとサーラと抱擁を交わす

サーラ:「グレイスこそ気をつけてね」

グレイス:「風があなたたちを守ってくれるように」


        


【北の山脈 山道】

 

 真っ白い山道が続く

 

 猛吹雪の中を、無理矢理進むジェス、ヒューマ、サーラ


 

ヒューマ:「風、強すぎるよ風があ」

サーラ:「ジェス、風を弱くすることできないの」

ジェス:「こんなの俺一人じゃ無理だ」

吹雪の中から突然山小屋が現れる。現れるという表現で山小屋が登場

サーラ:「あそこに逃げましょう」

ヒューマ:「そうだ、そうしよう」

走り出すヒューマとサーラ

ジェス:「おい、ちょっと待て!山小屋だと?」



【北の山脈 山小屋】

    

 猟師の休憩所のような何もない山小屋


ヒューマ:「早く入ってよジェス!」

滑り込むように小屋に入るジェス

サーラ:「はあ~」

吹雪から解放されるヒューマとサーラ。手袋のお互いの手をすりあわせている。

緊張を解かずに、入り口近くで立っているジェス

サーラ:「どうしたのジェス」

ジェス:「おかしいと思わねえか?こんなうまい具合に山小屋があるはずがねえ。俺たちを誘い込んでいるようだぞ」

サーラ:「気のせいよ。ジェスは山育ちじゃないからわからないかも知れないけど、どこの山にもこういうのはあるわ。炭焼きの人が使ったり、木こりの人が使ったり」

ジェス:「俺には、この小屋が見えなかったぞ」

顔を見合わせるヒューマとサーラ



サーラ:「何を言ってるの?」

ジェス:「俺は目だけでモノを見ているんじゃねえ。肌に触れる風の強さや温度を感じてモノを見ている。俺にはこの小屋があることで起きる風の流れを感じなかったぞ」

ヒューマ:「ということは?」

ジェス:「ここは北の魔女が住む山だぜ」

山小屋が消えて吹雪が巻き起こる

ジェス:「おいでなすった」


 山小屋の中に氷柱(つらら)が落ちてくる

 気が付くと小屋はなく吹雪が竜巻になって一行に襲いかかってくる


ジェス:「オレ様に吹雪で立ち向かおうとはいい度胸だ」

ヒューマ「氷柱(つらら)は僕たちに任せて」


竜巻には竜巻で対抗するジェス

剣と杖で氷柱(つらら)を砕き割るヒューマとサーラ

竜巻の怪物を退治すると、吹雪が止み、三人は湖の(ほとり)に立っている



【北の山脈 湖】

     

 鏡のような水面をたたえた、穏やかな湖。気温はマイナスにもかかわらず、氷結していない。

 (はしけ)がある。が、船はない。(はしけ)の先端に雪だるまが置いてある。とんがり帽子を被った雪だるま

 一行は艀の先まで歩く


雪だるま:「お前さんたちかい、ユーベ様に会いに来たのは?」

ヒューマ、サーラ「雪だるまがしゃべった!」

雪だるま:「ここは雪の女王ユーベ様の山だよ。そりゃ雪だるまだって喋るさ。で、どうなんだい?用があるのかないのかい?」

ジェス:「もちろんある」

雪だるま:「ついておいで」

雪だるまは滑るように水面を渡ってゆく。すると雪だるまが滑った後の水面が凍り付いている。

つま先で氷をつっつくジェス。足を下ろす

ジェス:「大丈夫だ」

ジェス、ヒューマ、サーラの順番で雪だるまの後を追う。


雪だるまが歩く先に小屋が見える。かまくら、もしくはイヌイットの住居イグルー

ヒューマ:「ジェス」

ジェス:「大丈夫だ、あの小屋はたしかにある」

小屋の中は何もない。雪のような白い壁があるだけ

雪だるま:「どんな用事だい?こんなクソ寒い中をやってくるくらいだから、よっぽど大事な用事なんだろうよ?」

ヒューマ:「そうだ、とっても大事な用事だ」

サーラ:「だから北の魔女にあわせて欲しいの雪だるまさん」

声を立てて笑うジェス

ジェス:「いいかげんに姿を見せてくださいよ、雪だるま、いや雪の魔女」

雪だるま:「なんだい、バレてたのかい?」



雪だるまの周りをダイヤモンドダストが囲み、やがてヒューマ立ちも飲み込まれる。

ダイヤモンドダストが消えると、ヒューマ達は豪奢(ごうしゃ)な室内の中にいた

精緻な飾りのあるランプがたくさん壁に掛かっていて、部屋中を埋め尽くすくらいに、きらびやかな宝石が、宙を浮いていた。恐らく、贅を尽くした城の中の一室に違いない。

その宝石に囲まれるように、女がいた。若い女ではなく、脂ののった、女盛りの熟した蜜もしたたるような妖艶(ようえん)な女。

キラキラと輝く銀色の髪、ルビーのように赤い瞳(充血ではない)雪のように白い、底抜けに白い肌。血をひいたような鮮烈に赤い厚ぼったいくちびる。



女盛りの肢体(したい)を、薄い氷のようなドレスが包んでいる。宝石に囲まれているにも関わらず、女自身は一つの宝石や装飾品も身につけていなかった。

ユーベ:「私が北の魔女ユーベさ」

ジェス:「・・・・」

 女の美しさに圧倒される3人。こんなにうつくしいモノは見たことがない、というように。

ユーベ:「なんだい、どうしたんだい?」

ヒューマ:「いや、その、キレイだなって」

ヒューマの尻を思い切りつねるサーラ

ヒューマ:「何すんだよ!」

声を立ててケラケラ笑うユーベ

ユーベ:「魔女っていたったって、しわくちゃのバアさんばかりじゃないんだよ」

白い白い指でヒューマのほほをなでる

ヒューマ:「つめたい」

ユーベ:「ようこそ、雪の女王の城へ」

読了ありがとうございました。

まだ続きます。

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