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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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ゆりかごの森

【聖都スクード 町の大広場】



 再びラクダ騎兵が暴れ回っている

 ヒューマは抜き身の剣を振るって無謀にもラクダ騎兵に突進する

 サーラも杖を振りかぶって殴りかかる

 不意を突かれた騎兵は、どうと落馬する


ヒューマ:「どうだ!」

ラクダ騎兵は馬から降りると、(くら)にくくりつている砂袋をほどいて()き始めた。

ジェス:「何をする気だ?」

砂遊びのように山盛りにすると、分厚い教典のようなものを開いて、なにやら呪文のような物を唱え始めた。

砂山が体長3メートル位の人形になって襲いかかってきた。



ジェス:「なんだ、こりゃ」

ジェス、ヒューマ、サーラの前に【サンドゴーレム】が立ちはだかる

ヒューマ:「とてもじゃないけど届かない!」

ジェス:「さっきの勢いはどうした!」

拳を大きく振りかぶるジェス。拳は風を旋風を巻き起こし砂の巨人の脇腹辺りを大きくえぐった。

ジェス:「なんとかなるのんだ」

ヒューマ:「じゃあ、そいつは頼んだよ!おじさん」

ラクダ騎兵の方へ向かうヒューマ

ジェス:「え、おい!ちょっと待ってって!」



 ヒューマ、サーラ、ジェス、星の騎士団、風の民、入り乱れてラクダ騎兵と戦う。

分が悪いと思ったのか、ラクダ騎兵は

ラクダ騎兵:「引き上げろ」

ラクダをほったらかしに逃げていく。   

ラクダを捕まえるジェス

ジェス:「みんな、後は頼むぜ。ヒューマ、お前も早く乗れ!」

ラクダに飛び乗るジェス

ヒューマは主を失ったラクダを捕まえて、ひらりまたがった。ことのほか動きが良い。

ヒューマ:「サーラ」

ラクダの上から手をのばすサーラ。

グレイス:「あんたはこっちだよ」

ラクダに乗ったグレイスがサーラの前に立つ。サーラはグレイスの前に乗った。

ジェス:「急げグレイス」

ヒューマのラクダの手綱をつかんで強引に走り出す。2頭のラクダの後を、2頭の荷駄が後を追う。

グレイス:「みんな、後は頼んだよ」

グレイスは馬首を返して、ジェス達を追う。

疾走するラクダ。意外とスピードがあるが、とても揺れる

サーラ:「これからどこへ行くの?」

グレイス:「あんまり喋ると舌かむわよ」

ラクダが走り去る背後に、巨大な竜巻がうなりを上げる。





【ゆりかごの森 入り口】



 ヒューマ達は、とある森の入り口でキャンプを張っている。 

 夜の闇の中に、たき火だけが異様に明るい      

 ごろり横になるジェス。

 ヒューマとサーラはぴったりくっついたまま、火の側に座っている



グレイス:「ちゃんと食べてね、口に合うかわからないけど。食べなきゃもたないわよ」

風の民が携帯しているパンやら乾燥肉やらを、もそもそ食べるヒューマとサーラ。

表情がなく相当混乱している様子

グレイス:「ちょっと見てくる」

何を見てくるのかは言わないで、たき火を離れたグレイス

ヒューマ:「あの」

横になって酒を飲んでいるジェス

ヒューマ:「おじさん、あの父さんは今、どこにいるんですか?」

上体を起こすジェス

ジェス:「今はわからねえ。だが、2年前に見たときには、最果ての村にいた」

ヒューマ:「最果ての村って、俺たちの村じゃないか?」

ジェスはヒューマの顔をじっと見る。

ジェス:「お前、それも知らないのか?」

頷くヒューマ。

はっきりいってヒューマは何も教えてもらっていない。教えてくれる相手がいないからだ。



足音が近づいてくる。ヒューマとサーラは緊張をしたが、ジェスにはそれがグレイスの足音だというのはわかっていた。

グレイス:「大丈夫、何も聞こえないわ。とても静かよ」

ジェス:「ありがとうグレイス」

サーラ:「そんなことがわかるの?」

たき火の前に座るグレイスに聞いた。

グレイス:「風が教えてくれるのよ。近くのこと、遠くのこと、先のこと」

サーラ:「先のことって?」

サーラにはグレイスの言うことがわからない。というより、今自分たちの身に起きていることのすべてがわからない。

グレイス:「あなたも目覚めれば、大地の鼓動を感じることができるわよ」

サーラ:「大地の鼓動(こどう)?私が?太陽の巫女(みこ)の私が?」

ジェス:「さ、もう寝るぞ。明日は歩くからな。酔っぱらって戦ったから悪酔いしちまった」

        

マントを毛布代わりにして横になるジェス

グレイスもジェスのそばで横になる。

二人はあっという間に寝息を立てている。野宿が普通のことといった様子だった。

ヒューマとサーラは、無言でたき火を見ている。




サーラ:「ねえ、ヒューマ?」

ヒューマ:「うん?」

サーラ:「みんなのところから出てきて正しかったと思う?」

ヒューマ:「さあ」

たき火に(まき)をくべるヒューマ

ヒューマ:「正しいのかどうかわからないけど」

サーラ:「けど?」

ヒューマ:「今は俺たちがみんなと一緒にいると迷惑がかかるみたいだからな」

サーラ:「そうかもね」

たき火がパチリと音を立てた。




【ゆりかごの森 入り口】

 

 翌朝・・・といっても太陽は昇らない。夜と同じ明るさのまま


サーラ:「これを着るの?」

サーラ手渡された色使いの激しい幾何学(きかがく)模様のド派手なポンチョを広げてみる

グレイス:「そう、あなたはちょっとだけ風の民になるのよ。その方が怪しまれないし、血だらけの法衣(ほうい)じゃかわいそうよ」

先にハデなポンチョと羽根飾りだらけになったヒューマ。

グレイス「ヒューマはなかなかどうして似合っているじゃない」

ヒューマ:「こんな賑やかじゃ、すぐに見つかっちゃう気がするけど」

褐色の肌をしたグレイスが、サーラに飾り付けをする。

グレイス:「あなたは本当にきれいね、宝石みたいね」

着替えと飾り付けが終わる。

グレイス:「なんか、気品とか清楚(せいそ)な感じが余計目立っちゃったかしら」

おどけて見せるサーラ



ジェス:「ここからは歩きだ」

ラクダの手綱(たづな)を取るジェス

ヒューマ:「どこに行くんです?おじさん」

ジェス:「あのなあヒューマ、おじさんは止めろ、おじさんは。こう見えてもまだ俺様は28だぞ、どこがおじさんなんだ」

ヒューマ:「じゃあ、なんて呼べばいいんです?」

ジェス:「ジェス様とかだな」

グレイス:「いいのよ、ジェスで」

ヒューマ:「じゃあ、ジェス。これからどこにいくんです?」

ややムっとするジェス



ジェス:「意見を聞きに行く。俺たちは世界中に旅をしているが、もっと知恵のあるヤツに話を聞かないと。どうすりゃ、お前の親父を捜せるのか、闇雲(やみくも)にやっていても時間の無駄だ」

ヒューマ:「わかった、行こうジェス」

ヒューマも乗ってきたラクダの手綱を取る。

ジェス:「それと、森の中じゃあんまり出会いたくないヤツがでてくるから気をつけろよ」

先にジェスとグレイスが森の中に入っていった。

ヒューマ:「気を付けろ、だって」

サーラ:「ケガもしたくないけど、ケガもさせたくないね」

ヒューマ:「ケガしたら、俺が治してやるよ」

ヒューマとサーラも森の中に入っていく。

       


 魔物を追い払い、ラクダの口取りをしながら森の奥へ奥へと進んでいく四人



【ゆりかごの森 最深部】

ジェス:「こんなに魔物、多くなかったような気がするけどな」

ヒューマ:「でも、悪意がないっていうか・・・」

サーラ:「私もそう思う」

ジェスとグレイスは顔を見合わせる

サーラ:「何か、大切な物を守っているような・・・」



大量の木の葉や枝、キノコやらが舞い上がり、集まり始めた。木の葉や枝は、大きな竜の形になって立ちふさがる。

【フォレスト・ドラゴン】登場

四人は力を合わせて、森の竜を退ける。すると森が開けて広場が現れた。




【ゆりかごの森 広場】

  

 短い下草、広場の中を流れるちいさなせせらぎ。

 広場の中央には、天にまで届きそうな勢いの幹が太い大木が立っている。

 大木の近くに、見事な角をもった鹿がこちらを見ている

 四人はせせらぎを渡り、鹿に近づく。



鹿:「おや、久しぶりだね」

ヒューマ、サーラ:「鹿が喋った!」

鹿:「おやおや、鹿が喋るのがそんなに珍しいかい?」

鹿は笑っているように見える

ジェス:「まったくお元気そうでなによりです」

ヒューマとサーラはジェスとグレイスの後ろに隠れてしまっている。

ジェス:「怖がるんじゃねえ。ただの鹿じゃねえ。森に住む賢者のスーリヤばあさんだ」

鹿:「ばあさんは余計だよ!」

鹿は見事な角を振り上げて、ジェスの顔をひっぱたいた。思いの外打撃が強く、ジェスのほほが裂けて血が流れた。

ジェス:「ヒューマ、治してくれよ」

ヒューマ:「ええ?」

事の成り行きが全くわからないヒューマは右手をかざした。

右手全体が、山吹色の淡い光を発した。ヒューマは手のひらを押しつけるのではなく、軽くなでた。

ヒューマの治療の様子を、グレイスも、初めてまともに見ることになるサーラも、鹿の賢者も凝視(ぎょうし)していた。

ヒューマの手から光が消えると、ジェスの傷も消えていた。傷の度合いからか、サーラの治療の時のような、手形が残ることはない。



鹿:「なるほど覚醒したのかい」

ヒューマ:「知っているんですか、このなんだか不思議な力を」

鹿:「そりゃあ、とっても良く知っているよ」

グレイス「色々知りたいことが山ほどあるでしょう?」

頷くヒューマとサーラ

鹿:「立ち話も何だから、中にお入り」

鹿は大木の()()のなかに入っていった。

読了ありがとうございました。

まだ続きます

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