表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
30/32

裂ける大地 暴走する太陽

【謎の研究所 地階下層部 神の像の前】



フレア:「私たち家族3人は一緒に暮らせないという(おきて)を聞かされた時、私は思った。

 太陽も掟も、伝統も関係ない、私たちのことを、ただの親子だと受け入れてくれる土地がないか、私はそう思った。

 そんな時に、まったく新しい国でまったく新しい世界を切り開いてみないかという誘いがあったの。

 でも、間違っていた。彼らは私が持っている太陽の力が欲しかっただけで、いつまで経っても父さんを呼んでくれることはなかった。 

 その間私は眠らされて、彼らの人工太陽を作る研究の材料にされていたの」


フレアの言葉を黙って聞いているファロスとヒューマ

ファロス:「そうだったのか」

グレイス:「なんでもかんでも掟を守ればいいってもんでもないのね」

フレア:「ヒューマ、決してあなたを捨てたり嫌いになったから、いなくなったんじゃないことはわかってほしいの。

 ただ私は、家族三人で静かに暮らせる場所が欲しかっただけなの」

ヒューマ:「もういいよ。母さん。これからは三人で暮らせるよ。太陽が昇って、世界が平和になれば」

フレア:「そうね」

ファロス:「そうだ。きっと家族3人で住める場所があるはずだ」

サーラ:「良かった。太陽が昇るのね」

ヒューマ:「そうだよ。父さんと見た夕陽がまた見られるんだ」



見つめ合う太陽の子と大地の乙女。だが、

突然頭を押さえだして、もだえるサーラ

グレイス:「どうしたのサーラ?」

サーラ:「この島がこの島が、()けようとしている」

ファロス:「なんだって?」

地響きとともに激しい揺れが研究所を襲う。





【南海の孤島 近海】


 ものすごい勢いで進むマリア・アズーラ号。舳先にジェスとベルタが立っている。急に行く手を(はば)むような大波を受けるマリア・アズーラ号


バランスを崩すジェスと黒いレザーのベルタ

ジェス:「おい、なんだこの波は?どうなってんだベルタ?」

ベルタ:「これは、海がつくった波じゃない・・・」

ジェス:「なんだって?」

ベルタ:「大地が揺れているのよ」




【謎の研究所 地階下層部 神の像の前】


 いっこうに収まらない地響き



フレア:「きっと、太陽の力が逆流して、おかしいことになっているんだわ。このままだと島ごと吹き飛んでしまうかも」

ファロス:「なんだって?」

ヒューマ:「サーラが聞いたのは、このことだったのか」

足元が裂けて奥深い地中が現れる

覗き込むと輝くエネルギーの渦巻いている。

ファロス:「すごい熱量だ」



ヒューマ:「父さん、このエネルギーが島から()れ出たらどうなるんだ!」

ファロス:「熱量が多すぎて、地面も海も干上がってしまうかもしれないな」

ヒューマ:「何だって!」

サーラ:「それじゃあ」

フレア:「ヒューマ、私たちにもどうしようもないのよ」

ヒューマ:「どうして?」

フレア:「これは、人間が作り出した太陽の力。

 自然にあるものではないエネルギーなのよ。この世界には大きすぎるエネルギーを作ってしまったのよ人間は」

サーラ:「では、抑えようがないのですか?」

ファロス:「今の私たちには、どうしようもない」

フレア:「力は、一旦暴走してしまったら、止められないのよ」

崩壊がとまらない大地



ヒューマ:「そんなの、だめだ」

フレア:「ヒューマ?」

サーラ:「ヒューマ?」

ヒューマ:「そんなのダメだよ」

ファロス:「ダメって?」

ヒューマ:「せっかく太陽が(よみが)ろうとしているのに、人が作った太陽の力で地面が干上がって、海がなくなるなんて、絶対にしちゃだめだ」

フレア:「あなたの言うことはわかるけど」

ファロス:「もう、俺にも母さんにも止めるだけの力はないんだ」

フレア:「私たちが、司れるのは、東から昇って西へ沈む太陽だけなの」

ファロス:「人が作った太陽は制御できないのだ」



拳を握るヒューマ

ヒューマ:「僕がやる」

一行:「えっ?」

ヒューマ:「俺が抑えてみせる」

フレア:「ヒューマ?」

ファロス:「無理だ、お前じゃ。お前はまだ太陽の子ではない。それにお前にはまだ役目が残っている」

ヒューマ:「役目って?」

代わる代わる両親を見るヒューマ

答えない両親



フレア:「まだ、その時じゃないのよヒューマ」

ヒューマ:「その時じゃないって、このままみんな干上がってしまったら、その時も何もないじゃないか!」

答えられない両親

ヒューマ:「俺が止めてやる」

グレイス:「無茶よヒューマ」

ヒューマ:「無茶じゃないよグレイス。だって誰も助け出せなかった父さんも母さんも助けることができたじゃないか。それに」

サーラ:「それに?」

ヒューマ:「俺が止めなかったら、サーラが大地が干上がってしまう。そんなことできないよ」



サーラの手を取り、力強く握るヒューマ

サーラ:「ヒューマ」

見つめ合うヒューマとサーラ

ヒューマ:「よし!」

身を乗り出すヒューマ

フレア、ファロス「ヒューマ!」

二人の制止も利かず、エネルギーの渦に向かって身を躍り出させるヒューマ

サーラ「私も行く!」

ヒューマの後を追うサーラ

グレイス:「サーラ!」

ファロス、フレア「ヒューマ!」

煮えたぎるエネルギーの中に落ちていくヒューマとサーラ



【エネルギーの渦の中】



 おびただしく発光するエネルギーの中を、落下していくヒューマ

ヒューマ:「すごいな」

まぶしさに顔をしかめる

ヒューマの脳に未来のビジョンが見える


波立つことなく蒸発してゆく海

海に住む生き物すべてが干からびていく

一瞬で干上がり、ひび割れていく大地

陸にいる生き物すべてが乾いていく

すさまじい速度で広がり、青々とした木々を枯らしてゆく熱波

緑の大地が、孤島を中心に赤く乾いてゆく



【エネルギーの渦の中】


ヒューマ:「そうはさせない!」

サーラ(声):「ヒューマ!」

振り返るとサーラが手を伸ばし、追いつこうとしている

体を反転させてサーラに手を伸ばすヒューマ

ヒューマ:「サーラも来たんだ」

しっかりと頷くサーラ

サーラ:「せっかく太陽が戻ろうとしているのに、干上がらせるわけにはいかないもの」

ヒューマ:「そうさ」

二人の指先が近づく

ヒューマ:「俺たちならできるよ」



重なるヒューマとサーラの手

膨大なエネルギーの中に消えていく二人



ホワイト・アウト

読了ありがとうございました。

まだ続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ