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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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急襲

【復活祭 アクセサリー屋】


 アクセサリーを売る露店に顔をつっこむヒューマとサーラ

 二人の背後を気がつかれないように尾行しているジェスとグレイス

 かがり火やランプの光でより幻想的に見える、アクセサリー屋の店先   

 フードを目深に被っていて口元しか見えない老婆の店の主人


サーラ:「すごいキレイなのばっかり!」

店の主人:「ゆっくり見ていっておくれや、かわいいお嬢ちゃん」

サーラ:「ありがとうおばあさん」


サーラは黄金製の鳥が翼を広げている、結構大きめなネックレスを手にする。


サーラ:「ねえ、これ似合っている?」

ヒューマに見せる

ヒューマ:「サーラには合わないよ、そんな派手なの」

サーラ:「ええ?」

ヒューマ:「こっちの方が似合ってるって」


ヒューマは銀の土台にダイヤモンドをあしらった、これもやはり大きめのネックレスを手に取って、サーラに合わせてみせる


ヒューマ:「ほら」

サーラ:「似合ってるの?」

はにかむサーラ

ヒューマ:「やっぱりキンキラより、こっちの方がサーラには似合ってるよ」

まじめな顔で言うヒューマ

サーラ:「もう、私も見たい、私にも見せてよヒューマ」

アクセサリー屋の店先で、他愛もなく、じゃれるように遊ぶ十五歳の男の子と女の子

その様子を後ろから見ているジェスとグレイス




ジェス:「ヒューマだな?」

動きが止まり、緊張するサーラとヒューマ。この二人がナイフ投げの見せ物をしていたのはわかっている

ヒューマ:「・・・そういうあんたは?」

ジェス:「俺様はこれだ」

ジェスは答える代わりに右手を見せた。手首に銀の土台にエメラルドをあしらったブレスレット

サーラ:「おじさんたち、風の旅人ね・・・」

ジェス:「おじさん」

グレイス:「ジェス・・・」

ジェス:「まあいい。親父のこと、お前の親父のこと、知りたくないか?」

ヒューマ:「父さんの・・・?」

顔色が険しくなるヒューマ

ヒューマ:「おじさん、父さんにあったのか?」

ジェスに詰め寄るヒューマ



群衆:「わあー!」

ヒューマ以外の三人は、声がしたほうに注意を向ける

祭りの(にぎ)やか雰囲気を切り裂いて、こぶし大の石やら矢が降ってくる

突然のことに凍り付くヒューマとサーラ

続いて来たのは、ラクダ騎兵が数騎。顔を布で覆い、ボロ布を()い合わせた衣服に、軽い鎧で武装した、槍を持ったラクダ騎兵




ラクダ騎兵:「宴は終わりだ!この世の力を、むさぼる者達よ、砂に帰れ」

ゾロゾロやってくるラクダ騎兵が長槍をふるう。

群衆A:「わあー」

群集B:「星の騎士団は何をしているんだー」

一瞬にして修羅(しゅら)場と化す復活祭



ジェス:「こっちだ逃げろ!」

走り出すジェス

ヒューマの手の中から、「サーラに似合うネックレス」がこぼれ落ちる

サーラ:「ヒューマ!」

地面に転がるネックレスに手を伸ばすサーラ

サーラの背中めがけて、ラクダ騎兵の槍が振り上げられる。

ヒューマ:「サーラ!」

サーラの胸をラクダ騎兵の槍が貫く



 【画面暗転】



ラクダ騎兵が槍を抜くと、サーラの体はもんどりを打って地面に転がる。

ヒューマ:「サーラ!」

サーラを抱きかかえるヒューマ

サーラの真っ白い法衣の胸に赤い薔薇(ばら)が咲くように血が広がっていく。

ヒューマ:「サーラ」

サーラ:「・・・ヒューマ」

サーラの(くちびる)から、血が()き出る。

ふるえるサーラの手の中に、「サーラに似合うネックレス」がある。ネックレスは(ふる)える手から滑り落ちた。


 

サーラ:「・・・ヒューマ」

サーラは口から血の(あわ)を吐きながらしゃべり続ける

ヒューマ:「喋っちゃだめだ」

サーラ:「見せてね、似合っているの・・・」

ゆっくりとサーラの(まぶた)が閉じていく

ジェス「なにやってんだ、ヒューマ」

怒鳴るジェス

ジェス:「早く治せよ!死んじゃうじゃネエか!」

ヒューマ:「治すって?」

ジェス:「お前はまだできねえのかよヒューマ?」

ヒューマ:「できないってなにを?」

ジェス:「人の傷を治すことだよ、なにも聞いてねえのかよ!お前の親父はできるんだよ、人の傷を治すのが!太陽の子はできるんじゃねえのか!」

ヒューマ:「父さんも?」

ジェス:「おうよ、このままこの娘を失ってもいいのかお前は!」

ヒューマの襟首をつかんで揺さぶる

ヒューマ:「治す!俺が」



ジェスを突き放すと、ヒューマは血で固くなったサーラの法衣を、やや乱暴に破いた。

サーラの白い胸元に、肉がはじけた傷口が開いている。

ジェス:「おい、できるのか?」

ヒューマ:ジェスに耳を貸すことなく、ヒューマはサーラの傷口に手のひらを押しつけた。

ヒューマ:「サーラ死んじゃだめだ」

全身の毛が逆立つヒューマ。手のひらから体中の生命エネルギーがサーラに送り込まれる。

ヒューマ:「父さん、力を貸してくれ」

光り輝くヒューマの手。太陽の光と同じくらいの熱量が、膨大なエネルギーが、光とともにサーラに送り込まれていく。

目を「かっ」と見開きヒューマの腕をつかんで絶叫するサーラ。

槍で胸を刺された時でも出さなかったサーラの絶叫

ジェス:「これは、まさしく」

目がつぶれそうになりながら、様子を見る。それはジェスが見た、ヒューマの父親が見せた「癒しの手」だった。

ヒューマの手が光り続け、サーラは絶叫を続ける。

金色の光は、じょじょに赤くなり、昼から夕暮れに向かうように消えた。



ヒューマは手を離した。サーラは意識を取り戻した。

サーラ:「・・・ヒューマ」

サーラの胸にはヒューマの手形が残った。

サーラは生き返った。



ラクダ騎兵:「なんということだ!太陽が甦ったぞ!」

ラクダ騎兵:「この世界に2つの太陽はいらぬ!」

ラクダ騎兵はヒューマ達をとりかこみ、槍を振りかぶる

おもむろにヒューマはサーラを槍で刺した男の顔を正面から鷲掴(わしづか)みにした。

ラクダ騎兵:「なにしやがる」

ヒューマ:「この野郎!」

絶叫とともにヒューマの手が再び光り出す。こんどは光りを発するよりも、熱せられた鉄のような赤く、見た目に熱い光りだった。

ラクダ騎兵の顔から黒い煙と肉が焼ける音が立ち上る

手の明かりが消えると、ヒューマはくずおれて、気絶した。

ラクダ騎兵の顔にはヒューマの手形が残った。それもヤケドという形で。




ラクダ騎兵:「皆殺しにしろ!」

ジェス:「そうはいかねえ」

指笛を鳴らすジェス

指笛に呼応してジェスと似たような装束の男女が集まった。

ジェス:「みんな、アレをやるぞ!力を貸してくれ」

ジェスに呼ばれた「風の旅人」達は横一列の体形を取った。

全員が、カンフーポーズを取る。

ジェス:「世界をくまなく巡る風よ!永遠の旅人達よ!」

全員がこぶしを振りかぶる構えを取る

ジェス:「今一時、われの元に集結し、邪なるものを吹き飛ばしたまえ!」

全員がこぶしを突き出す。

ジェス:「聖なる風よ!吹けえ!」

最後のポージングとともに、強烈な風の固まりがラクダ騎兵に襲いかかる。



ラクダ騎兵:「おおおおおおお」

ラクダは長い睫の目を閉じてこらえようとするが、そんな生やさしい風ではなかった。

秩序を持った暴風がラクダ騎兵だけを襲う

ジェスはゴルフボールくらいの石を手に取ると、風の固まりの中に放り込んだ。石はものすごいスピードで、ある騎兵のラクダにぶち当たった。

ラクダは竿立ちになり、騎兵を振り落とす。地面にたたきつけられる騎兵。

ラクダ騎兵:「いまいましい、引き上げろ!」

手綱を引くラクダ騎兵

ジェス:「そうは行くかい!」

ジェスのかけ声で全員両手を広げる。そして体を大きくひねる

ジェス:「全てを吹き飛ばせ!聖なる竜巻よ!」

秩序のある暴風は、竜巻になってラクダ騎兵をすべて空の彼方に連れ去ってしまった。

ジェス:「聖なる竜巻」

竜巻が去った後は静けさが戻り、主を失ったラクダがうろうろしていた。


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