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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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神の子

【太陽の神殿 外周】

  


 樹海の中に突然現れる、階段型のピラミッド。その前には10人くらいの集団がいる



司祭:「朝陽の民よ。息災でなによりだ」

朝陽の司祭:「夕陽の民よ。久しいな」

儀式的な挨拶を交わすそれぞれの司祭

朝陽の司祭:「この子がフレアの子か?」

司祭:「そう。ヒューマ。我々の唯一の希望だ。風の後押しを受けて、ここまでたどり着くことができた」

朝陽の司祭:「おお、そなたは若き風の旅人。族長にはなることができたのかな?」

ジェス:「それはまだ、ですね」

朝陽の司祭:「なるほど。さてヒューマ。そなたの父はこの神殿、最深部にある玄室にいる。客人と一緒に」

司祭:「客人だと?この神聖なる神殿においそれと入れるような客人などいるはずもない」

朝陽の司祭:「うまく語るのは難しいが、私は、あのように神々しい人物はみたことがない。そう、神の子のような」

一行:「神の子?」

 

【太陽の神殿 最深部 玄室前】

 

 とてつもなく巨大な扉。そこに巨大な太陽の紋様が彫り込まれている


ヒューマ:「この扉の先に父さんが・・・」

みんなに促されて扉に手をかけるヒューマ

轟音とともに、玄室が今、開かれる

太陽の光りが、一行を包み込む


【太陽の神殿 最深部 玄室】

 

 昼間と同じ光りが溢れる玄室。その奥に二人の男がなにやら話し合っているのが見える。さらに外れたところにもう一人の影



ヒューマ:「父さん?」

一人の男が顔を向ける。やや太っている、壮年の男。だが、面影は肖像画のヒューマの父である。

ヒューマ:「父さんなんだね」

ファロス:「おお、ヒューマか。私の息子ヒューマか」

対面する父と子。だが、場違いにも落ち着いている。

ファロス:「大きくなったなヒューマ」

ヒューマ:「父さんこそ太ったね」

ファロス:「おお、これか父さんも歳を取った。それに神殿に閉じこもりっぱなしでは太るわけだ」



妙に落ち着いた親子の様子をみているジェス

ジェス:「おいおいおいおい!」

親子に詰め寄るジェス

ジェス:「どういうことだ、お前ら?10年ぶりの親子の再会だろう?なんで抱き合ったり泣いたりしねえんだ?感動の再会はどうしたんだ、おいおいおい?」



ポカンとするヒューマ親子

ファロス:「感動の再会?」

ヒューマ:「まだなんだよジェス。母さんがいないじゃないか。母さんを捜さないと。そうじゃなきゃ感動なんてしていられないよ」

意志の強い顔を見せるヒューマ

グレイス:「まだ終わってないってことよジェス」

ジェス:「なんでい、なんでい!勝手にしやがれ」

一人すねるジェス

ヒューマ:「父さん、母さんの居場所知っているんでしょ?」

ファロス:「うむ。この方が教えてくれたのだ」

『客人』を紹介するファロス

その客人は、体格の良い、長髪、ひげ面の男。ボロ布を縫い合わせた衣装。

砂漠の民の王の子サンタナだった。

ジェス:「テメーは!」

緊張する一行。さすがのヒューマも構える

ファロス:「待て待て待て!確かに彼は砂漠の部族の人間だ。だが、彼は融和を解いてきたのだ!」

一行:「融和?」



ファロス:「そうだ。自分たち部族の悪事を悔いて、止めさせるために協力しようと申し出てくれたのだ」

ヒューマ:「そんなこと言ったって、父さん」

ジェス:「今まで、さんざんこいつらの仲間と危険なケンカをしてきたからね。手をさしのべてきたからって、『はい、そうですか』とはいきにくいね」



笑い声:「(玄室内を笑い声が埋め尽くす)」

面布の男:「そういうやつらなんですよ。サンタナ様。対話によって融和を図れるほど、世の中簡単ではないのです」

面布を取ると、顔を手形のアザが覆っている。ヒューマが顔にヤケドをさせた男だった。

サンタナ:「ガロン、何を血迷っている」

ガロン:「世迷い事をおっしゃっているのは、あなただ導師サンタナ。考えてもご覧なさい、私が太陽の女をさらってから、我が部族は繁栄を得て、あなたも日々の糧に困ることなく、布教などという呑気なことをしていられるわけです」

ヒューマ:「母さんを?」

サンタナ:「まて、お前は間違っている」

ガロンの前に立ちはだかるサンタナ

ガロン:「どけい!」

吹き飛ばされるサンタナ

ガロン:「見ろ、そんな痩せぎすの体ではなにもできないではないですか。力を持つものが主張できるのだ!」

ファロス:「貴様かフレアをさらったのは?」

ガロン:「だとしたらどうする?」

サンタナ:「ガロン、罪を悔い改めろ!我らが神は、慈悲深い神はお前のことを許してくださる」

ガロン:「心配ご無用。この世でやり残したことといえば、私の顔に汚いアザをつけた、お前達の皆殺しだ!」


つかつかとガロンに近づき、顔を鷲掴みにするファロス


ガロン:「や、やるのか?」

恐ろしい目をするガロン

ガロン:「貴様は息子の前で、憎しみを叩きつけるというのか?」

顔を鷲掴みにしている手に力を込めるファロス

ガロン:「いいのか?憎しみは憎しみしか、争いは争いしかうまないのだぞ。未来永劫貴様は人を殺し続ける事になるのだぞ」

ファロス:「貴様に、貴様に、妻をさらわれた、妻をさらわれた夫の気持ちが解るか!」

ファロスの手が灼熱色に光り、ガロンの体内から水分が一瞬にして蒸発する。ミイラのようにカラカラにひからびたガロンは死んだ。

ヒザを落とすファロス

父に駆け寄るヒューマ

ファロス:「ヒューマ。ヒューマ。母さんを、母さんを守れなかった父さんを許してくれ」

ヒューマ:「父さん」

親子は静かに抱き合う。ここに10年ぶりの再会を果たした。

読了ありがとうございました。

まだ続きます

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