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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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太陽の神殿

◆回想

【二十年前の太陽の神殿】



 若い頃の司祭に連れられている、少年の頃のヒューマの父ファロス。 

 同じく大人に連れられている少女の頃のヒューマの母フレア。

 太陽の神殿の前で初めて出会う二人。

 見つめ合う太陽の子供達



司祭:「もう20年以上もまえになろうか。我々は新興勢力(しんこうせいりょく)が砂漠の国に(おこ)りつつあって、さらに勢力を拡大していることを懸念して、守り続けてきた禁を解いて太陽の神殿で再会を果たした。

 この世界のバランスをどう維持(いじ)していくかを議論するためだ。その時だ。ファロスとフレアが出会ったのは」



【スーリヤの小屋】



司祭:「二人がどうやって恋に落ちたのかは、そういうものに(うと)い私には分からぬ。だが伝統を守っていく我々は事態を(うれ)いた」

ジェス:「伝統伝統伝統って、どうして伝統に(しば)られる連中ばっかなんだ!」

怒りにまかせてテーブルを叩く

グレイス:「それで、その後二人はどうなったの?」

司祭:「先に消息を絶ったのはフレアだった。その後太陽が昇らなくなり、ファロスがいなくなった」

グレイス:「ヒューマのお母さんは、今どこにいるんです?」

司祭:「それは、ファロスにしか分からない」



【ゆりかご森  広場】



 棒立ちのヒューマ。近づけないサーラ



サーラ:「ヒューマ」

ヒューマ:「サーラ、お笑いだろ。ここまで旅してきて、わかったのは自分が生まれて来ちゃいけない人間だったなんて」

むっとしてから、ヒューマの背に向かって怒り出すサーラ

サーラ:「じゃあ、私も生まれて来ちゃ行けない人間だっていうのね!」

サーラを振り返るヒューマ

ヒューマ:「誰もサーラのことは言ってないだろ」

サーラ:「じゃあ、なんで私のことを助けてくれたの?」

答えられないヒューマ

サーラ:「覚えてないの!私はあのとき、多分、死んだのよ。

 一回私は死んだの。私を助けてくれたのはヒューマでしょ?

 生まれ変わったの。生まれ変わらせてくれたのはヒューマでしょ?ヒューマが生まれてこなきゃよかったっていうのなら、私はもっと生まれてきちゃいけない人間よ!」

ヒューマ:「サーラ」

サーラ:「私、今も感じるの。とっても暖かいの。私の胸ってとっても暖かくて、優しい気持ちになれるの。ヒューマが助けてくれたところよ」

両手を胸に当てて、暖かさを感じるサーラ

サーラ:「こんなに優しい気持ちをくれる人が、生まれてきちゃいけないことなんてないわ」

ヒューマ:「サーラ」

サーラ:「だから、だから」

サーラの瞳からボロボロボロボロ涙があふれ出す。

サーラ:「生まれてこなきゃよかったなんて言わないで。私まで悲しくなるじゃない!」

ヒューマにぶつかって、無理矢理ヒューマの胸で泣きじゃくるサーラ

ヒューマ:「サーラ」

おずおずと、手を伸ばし、遠慮(えんりょ)がちにサーラの肩を抱くヒューマ

しばらくの間、サーラの泣き声だけが聞こえる。



スーリヤの声:「おやおや、しようのない子だよう。そんな良い娘を泣かせおってからに」

ヒューマ:「スーリヤおばあさん」

スーリヤ:「そんな所もファロスにそっくりじゃな」

ヒューマ:「ええ?」

スーリヤ:「ファロスもよーくフレアを泣かしておったもんだ。どうして泣いておったのかは知らんけどね。懐かしい話だよ」

ヒューマ:「母さんは、俺の母さんはどんな人なんですか?」

スーリヤ:「優しい娘でな。いつも太陽みたいな笑顔を振りまいて追ってな。

 人間に傷付けられた動物たちの傷を優しく優しく治していたもんだ」

ヒューマ:「俺の母さんが・・・」

スーリヤ:「そうじゃ。傷ついたものを見過ごせない優しい娘じゃ。もちろんファロスも良く手伝っておったけどな」

ヒューマ:「父さんも・・」

自分の手を見つめるヒューマ

ヒューマ:「父さんも」



ジェスの声:「迷いはふっきれたか色男?」

素直にうなずけないヒューマ

ジェス:「いいぞ、若者は大いに悩め。だがな時にはがむしゃらに前に向かって突っ走るのも必要だぞ」

      


【太陽の神殿 外周】



 樹海の中に突然現れる、階段型のピラミッド。その前には10人くらいの集団がいる

司祭:「朝陽の民よ。息災でなによりだ」

朝陽の司祭:「夕陽の民よ。再会できてうれしく思う」

儀式(ぎしき)的な挨拶を交わすそれぞれの司祭

朝陽の司祭:「この子がフレアの子か?」

司祭:「そう。ヒューマ。我々の唯一の希望だ。風の後押しを受けて、ここまでたどり着くことができた」




朝陽の司祭:「おお、そなたは若き風の旅人。族長にはなることができたのかな?」

ジェス:「それはまだ、ですね」

朝陽の司祭:「なるほど。さてヒューマ。そなたの父はこの神殿、最深部にある玄室にいる。客人と一緒に」

司祭:「客人だと?この神聖なる神殿においそれと入れるような客人などいるはずもない。誰だそれは」

朝陽の司祭:「うまく語るのは難しいが、私は、あのように神々しい人物はみたことがない。そう、神の子のような」

一行:「神の子?」

読了ありがとうございました。

まだ続きます。

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