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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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【陸路編】 大聖堂への侵入

◆陸路編


【宿屋の一室】


 すっかり寝入っているジェス。

 天井を睨んだままのヒューマ。むっくり起きあがる



ヒューマ:「起きてよジェス、起きてよ」

ジェス:「うん・・・なんだよヒューマ」

ヒューマ:「サーラを連れ戻しに行こう」

ジェス:「なんだって?」

ヒューマ:「サーラだけここに置いていけないよ」

ジェス:「ちょっと待てヒューマ。サーラが大地の民の指導者として目覚めたっていうなら、それもまた運命だろ?

 それに、風の民としては大地の民とはもめ事を起こす気はねえな」

ヒューマ:「じゃあ俺もここを離れない。サーラのそばにいる」

ジェス:「なんだと、そりゃ困る」

ヒューマ:「じゃあ手を貸してよ」

ジェス:「ずるい子供だなあヒューマ」

ヒューマ:「ずるいのは大人の方じゃないか、いろいろ理由つけて、結局自分たちのことしか考えてないんだ」

ジェス:「お前も大人になればわかるよ。大人はいろいろ面倒くさいんだよ」



ポンチョを脱ぐジェス。

中から出てきたのはムキムキの肉体美。そして上半身裸のまま、窓を開け払った。大きく上体を反らす。

奇妙な気流の流れがジェスの周りに巻き起こり、ジェスの全身に町中の声が流れてくる。

その中に、すすりなく女の子の声があった。かび臭い、湿った、風通しがほとんどない、部屋に閉じこめられている。

空気をたどると、ジェスの網膜(もうまく)に大聖堂のビジョンが映る



ジェス:「大聖堂の地下らしいな、どうやら」

ヒューマ:「そんなのわかるの?」

ジェス:「俺様は風を感じてモノを見るって教えただろ。しかし結構警戒しているね。ヒューマ、お前木登りは得意か?」

ヒューマ:「うん、サーラも得意だよ」

ジェス:「よし、行くぞ。いいか俺様の後を、何も言わずについてこい。俺が『よし』っていうまで喋るんじゃねえぞ」

ヒューマ:しっかりと頷く。

ジェスは大きく息を吸い込むと、窓から屋根に飛び降りる。しかし音がまったくしない。ヒューマも続いて飛び降りたが、やはり音がしない。

二人は音のしない忍び足で町に出る。



【大聖堂前】



 たくさんのかがり火がたかれて闇に浮かぶ大聖堂。正面の重たい扉は閉ざされている

 大聖堂の真横にある大木の上にいるヒューマとジェス。ヒューマに喋って良いという合図をする。

ヒューマ:「すごいね。全然音がしないじゃない」

ジェス:「空気は音を伝えるからな。空気の流れを止めてしまえば音は立たない。さすがに姿を消すことは難しいけどな。俺たちは定住しないで転々として暮らしている。気配を消すとかというのは、生きていく上で必要なことだ」

ヒューマ:「グレイスもできるの?」

ジェス:「質問の時間は終わりだぜ。さて、今度は逆のことをするぞ」


 大きく息を吸い込むと、今度は町の、宿とは反対の方に向かって、息を吐き出した。息を吐き出した先の方から、どたばたと二人分の足音が走り回るのが聞こえる。

警備兵:「あいつらだ、とらえろ」

警備兵が足音を追いかけて、大聖堂の前は手薄になる。

ジェス:「よし、天井から行くか」

一足先に枝を伝って天井に降りるジェス。やはり音がまったくしない。ヒューマも後に続いて屋根に降りる。

天板をはずして、聖堂内に滑り込む


【大聖堂内 屋根の(はり)の上】


 屋根の(はり)の上から、聖堂を見下ろすジェスとヒューマ。ランプの明かりの中に、司祭と村長、それに長髪、ひげ面の男と、面布をした男が話をしている。



【大聖堂内】



面布の男:「自分たちだけが良ければよい、というそういうことと受け取ってもよろしいか?」

司祭:「そうは言ってない。ただ、我々は大地の乙女の帰還によって安定した活動をする必要に迫られている。なので、そなたたち、砂漠の国の方々には今は協力しかねるということだ」

読了ありがとうございました。

陸路編まだ続きます。

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