【陸路編】 山岳都市
ここから一時的にルートが分かれます
【海路編】と【陸路編】同時に掲載していく予定です。
◆陸路編
スークの町から山脈越えをするヒューマ、サーラ、ジェス
【山岳都市メンヒル 城門】
入都するヒューマ、サーラ、ジェスの三人
巨大な大地の女神像が一行を出迎える
サーラ:「ねえヒューマ?」
ヒューマ:「うん?」
サーラ:「お母さんから聞いた話なんだけどね、私はこの町で生まれたんだって」
かなりの衝撃を受けるヒューマ
サーラ:「ほとんど覚えていないんだけどね。五歳の時に最果ての村に移り住んだから」
ジェス:「そうなのか。覚えてなくても懐かしい場所があるかもしれないな」
【山岳都市メンヒル 目抜き通り】
街中で買い物がてら、サーラの生家を探してみる一行
聞き込みをすると、『大聖堂ならば知っているのではないか』という答えを得る
【大聖堂入り口】
頑丈な木製の巨大な扉を開けて入る一行
【大聖堂内】
いくつものランプが並ぶ、天井が恐ろしく高い簡素な堂内
十数人の人間が二手に分かれて議論をしている。誰も門が開いたことも気がつかないくらい、白熱しているらしい
聖堂の奥に、ボロ布を縫い合わせた服を着た長髪でひげ面の男と、面布で顔を覆った男が立っている。
サーラ:「あの・・・」
議論を中断されて、イラっとしたのか、サーラに険しい視線を向ける民衆。
村長:「これは、いかがしました旅のお方?」
サーラ:「昔、この町に、十年くらい前に暮らしていた、女の子の家をしりません?母の名前はマリア、父の名前はシルバで」
村長:「マリアに、シルバ?」
サーラ:「はい、その女の子の名前はサーラというんですけど、あの私のことなんですが」
村長:「サーラ、サーラなのか?」
サーラ:「はい、私がサーラです」
村長:「なんとまあ、美しくなって」
絶句して、近づいてくる村長
照れるサーラ
サーラ:「良かった、私の事を覚えてくれている人がいて。私、ほとんど覚えていないんです。この町で暮らしていた頃のことを」
村長:「司祭どの」
呼ばれた司祭は重々しく頷く。
司祭:「皆の者、不毛な議論は終わりだ。今ここに、『大地の乙女』が帰還を果たした。我々はよりいっそうの結束を務めるのだ。豊穣なる大地を取り戻すのだ」
一斉に鬨の声をあげる民衆
サーラ、ヒューマ、ジェスの三人はことの成り行きがわからない
サーラ:「え、どういうことですか?」
村長:「サーラ、いや、大地の乙女よ。お前が生まれた地であるメンヒルに帰還したということは、太陽が復活を果たしたと言うことだ」
サーラ:「良く知ってますね、一緒に来たのはヒューマと言って、『太陽の子』なんです」
司祭「なんと、太陽の子が、大地の乙女をこの地に導くとは」
ますます、わけがわからないヒューマとサーラ。
その様子を見た司祭は怪訝そうな顔をする。
司祭:「どうやら、話がわかっていないようだな」
まったく同じように頷くヒューマとサーラ
ヒューマ:「恥ずかしいんですが、ほとんど教えてもらう時間がないくらいなんです。教えてくれますか?」
司祭:「うむ。太陽が死の時を過ごしている間、大地の乙女は、太陽の巫女となって、太陽の子の復活に尽力する。太陽の子が目覚めた後には、大地の乙女に戻って、豊穣なる大地をとりもどすのが、伝承だ」
サーラ:「じゃあ、私は?」
司祭:「そうだ、これからは、そなたが生まれたこの地に留まり豊穣なる大地を取り戻すのだ」
聖堂内に拍手が起きる
サーラ:「そんなのヤダ」
拍手が止まり、聖堂内は水を打ったように静まりかえる
サーラ:「そんなのヤダ、私は太陽の巫女よ。これからもずっと」
ヒューマ:「そうだ、サーラは太陽の巫女だ」
司祭:「イヤではすまされん。それが伝承で我々は伝承を守り伝えてゆくのが役目だ。なにより、そなたの胸にかかっている首飾りが、大地の乙女である証なのだ」
サーラ:「そんなあ・・・」
うなだれるサーラ。だが、次の瞬間弾けたように出口に向かう
サーラ:「行きましょうヒューマ、ジェス。今すぐに」
ヒューマの手を取り走り出す
司祭:「そうはいかん」
司祭は地面に手をつくとなにやら呪文をとなえ始めた。
ヒューマ:「足が」
サーラ:「動かない!」
ジェス:「どうなってんだ」
三人の足が地面にぴったり張り付いて動かない。まるで足首を地面から伸びた手で捕まれているように
司祭:「手荒なことはしなくはないが、致し方あるまい。サーラ、そなたはこの地に留まるのだ。みんな、我らが大地の乙女をこの地にとどめておくれ」
司祭の言葉に集団は3人に殺到。サーラを担ぎ上げてヒューマとジェスから遠ざける。
サーラ:「ヒューマ、ヒューマ、離して!離して!」
ヒューマ:「離せよ、サーラ、サーラ」
ジェス:「俺様の体に触れるんじゃねえ!」
じたばたするヒューマとジェス。だが、大人数で羽交い締めにされて、聖堂内から出される
サーラ:「ヒューマ、ヒューマ!」
サーラの絶叫が高い天井の聖堂内に響き渡る
壮大な音を立てて扉が閉ざされた。
読了ありがとうございました。
まだ続きます。