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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
11/32

【陸路編】 山岳都市

ここから一時的にルートが分かれます

【海路編】と【陸路編】同時に掲載していく予定です。

◆陸路編


 スークの町から山脈越えをするヒューマ、サーラ、ジェス

    


【山岳都市メンヒル 城門】


 入都するヒューマ、サーラ、ジェスの三人

 巨大な大地の女神像が一行を出迎える



サーラ:「ねえヒューマ?」

ヒューマ:「うん?」

サーラ:「お母さんから聞いた話なんだけどね、私はこの町で生まれたんだって」

かなりの衝撃を受けるヒューマ

サーラ:「ほとんど覚えていないんだけどね。五歳の時に最果ての村に移り住んだから」

ジェス:「そうなのか。覚えてなくても懐かしい場所があるかもしれないな」



【山岳都市メンヒル 目抜き通り】



 街中で買い物がてら、サーラの生家を探してみる一行

 聞き込みをすると、『大聖堂ならば知っているのではないか』という答えを得る



【大聖堂入り口】


 頑丈な木製の巨大な扉を開けて入る一行


【大聖堂内】

 

 いくつものランプが並ぶ、天井が恐ろしく高い簡素な堂内

 十数人の人間が二手に分かれて議論をしている。誰も門が開いたことも気がつかないくらい、白熱しているらしい

 聖堂の奥に、ボロ布を縫い合わせた服を着た長髪でひげ面の男と、面布で顔を覆った男が立っている。




サーラ:「あの・・・」

議論を中断されて、イラっとしたのか、サーラに険しい視線を向ける民衆。

村長:「これは、いかがしました旅のお方?」

サーラ:「昔、この町に、十年くらい前に暮らしていた、女の子の家をしりません?母の名前はマリア、父の名前はシルバで」

村長:「マリアに、シルバ?」

サーラ:「はい、その女の子の名前はサーラというんですけど、あの私のことなんですが」

村長:「サーラ、サーラなのか?」

サーラ:「はい、私がサーラです」

村長:「なんとまあ、美しくなって」

絶句して、近づいてくる村長

照れるサーラ



サーラ:「良かった、私の事を覚えてくれている人がいて。私、ほとんど覚えていないんです。この町で暮らしていた頃のことを」

村長:「司祭どの」

呼ばれた司祭は重々しく頷く。

司祭:「皆の者、不毛な議論は終わりだ。今ここに、『大地の乙女』が帰還を果たした。我々はよりいっそうの結束を務めるのだ。豊穣(ほうじょう)なる大地を取り戻すのだ」

一斉に鬨の声をあげる民衆

サーラ、ヒューマ、ジェスの三人はことの成り行きがわからない


サーラ:「え、どういうことですか?」

村長:「サーラ、いや、大地の乙女よ。お前が生まれた地であるメンヒルに帰還したということは、太陽が復活を果たしたと言うことだ」

サーラ:「良く知ってますね、一緒に来たのはヒューマと言って、『太陽の子』なんです」

司祭「なんと、太陽の子が、大地の乙女をこの地に導くとは」



ますます、わけがわからないヒューマとサーラ。

その様子を見た司祭は怪訝(けげん)そうな顔をする。

司祭:「どうやら、話がわかっていないようだな」

まったく同じように頷くヒューマとサーラ

ヒューマ:「恥ずかしいんですが、ほとんど教えてもらう時間がないくらいなんです。教えてくれますか?」

司祭:「うむ。太陽が死の時を過ごしている間、大地の乙女は、太陽の巫女となって、太陽の子の復活に尽力する。太陽の子が目覚めた後には、大地の乙女に戻って、豊穣(ほうじょう)なる大地をとりもどすのが、伝承(でんしょう)だ」

サーラ:「じゃあ、私は?」

司祭:「そうだ、これからは、そなたが生まれたこの地に留まり豊穣なる大地を取り戻すのだ」

聖堂内に拍手が起きる



サーラ:「そんなのヤダ」

拍手が止まり、聖堂内は水を打ったように静まりかえる

サーラ:「そんなのヤダ、私は太陽の巫女(みこ)よ。これからもずっと」

ヒューマ:「そうだ、サーラは太陽の巫女だ」

司祭:「イヤではすまされん。それが伝承で我々は伝承を守り伝えてゆくのが役目だ。なにより、そなたの胸にかかっている首飾りが、大地の乙女である(あかし)なのだ」

サーラ:「そんなあ・・・」

うなだれるサーラ。だが、次の瞬間弾けたように出口に向かう

サーラ:「行きましょうヒューマ、ジェス。今すぐに」

ヒューマの手を取り走り出す

司祭:「そうはいかん」

司祭は地面に手をつくとなにやら呪文をとなえ始めた。

ヒューマ:「足が」

サーラ:「動かない!」

ジェス:「どうなってんだ」

三人の足が地面にぴったり張り付いて動かない。まるで足首を地面から伸びた手で捕まれているように



司祭:「手荒なことはしなくはないが、致し方あるまい。サーラ、そなたはこの地に留まるのだ。みんな、我らが大地の乙女をこの地にとどめておくれ」

司祭の言葉に集団は3人に殺到。サーラを担ぎ上げてヒューマとジェスから遠ざける。

サーラ:「ヒューマ、ヒューマ、離して!離して!」

ヒューマ:「離せよ、サーラ、サーラ」

ジェス:「俺様の体に触れるんじゃねえ!」

じたばたするヒューマとジェス。だが、大人数で羽交い締めにされて、聖堂内から出される

サーラ:「ヒューマ、ヒューマ!」

サーラの絶叫が高い天井の聖堂内に響き渡る

壮大な音を立てて扉が閉ざされた。

読了ありがとうございました。

まだ続きます。

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