望里の本気
「しのんっっ、おっはよーー!」
「おはよ」
朝から抱きついてこようとするハイテンションな望里を軽く交わして席につく。
「ちょっ…朝から冷た〜い!」
「あんたは朝からテンション高すぎ。
何かあった?」
ウザすぎるくらいが普通の彼女だが今日はいつにもまして…なんというか…
「あと、化粧濃くない?」
「あっはーー!しのんちゃんたら気づいちゃった?今日の私の可愛さに。」
私は化粧濃いと言っただけで可愛いなんて一言も言ってないんですが。
「実はねー今日超絶イケメンとご飯食べに行くの♡」
「…。」
あ、今日の1限目数学じゃん。
やばい、宿題やってないわ。
「っておい。何宿題しようとしてんの。私の話に反応してよ。」
「あーはいはい良かったね。いつもみたく玉砕してきなさい。」
私の反応が冷たいと思った方、どうか聞いてほしい。
彼女はこれまで星の数ほどの男とデートしてきているが1度もゴールインしたことは無い。
なぜなら…
『ねえねえ、この人かっこよくない?匠くんって言うんだけど〜』
『あれ、昨日は悠くんとデートしてなかったけ』
『あ〜彼もかっこいいけど〜匠くんの方が…』
彼女の心は一日単位で変わるからだ。
女心は秋の空なんて言うけど彼女の場合秋の空どころではない。
彼女の気持ちはF1レーサーも驚きのスピードで変わっていくのだ。
だから彼女のこういう色恋話にはもう懲り懲り。
それにしても…やっぱり今日はかなり気合い入ってんな。
ちらりと望里の方を見ると、偶然私たちの教室の前を通りかかった神崎すばるが目に入った。
「あ、神崎すばるだ。」
「え、どこどこ?!」
今まで鏡で自分の顔をチェックしていた望里がものすごい速さで振り返る。
「あ〜ホントだ♡神崎君今日もかっこいい〜♡」
ドアの隙間から彼が見えるわずかな間、望里うっとりした顔で彼を見つめていたが、彼が通り過ぎるとハッと我に返った顔でこちらを見た。
「あ、ちがうのっ!確かに神崎君はカッコイイけど、別に好きって訳じゃないの!今日の私は誰にでもホイホイついてくような女じゃないのよ!」
「いや、私に言い訳されても」
てか、誰にでもホイホイついてくような女っていう自覚はあったんだ。
しばらくするとまた望里入念に鏡をみて化粧直しを始めた。
(ふーん。やっぱり、今日の望里は結構本気みたい。
今日望里が会う彼はどれほどかっこいいんだろうか。笑)