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どっち?

朝を起きると隣には愛おしい人の顔があった。



「シュウくん…」



私は彼の頭をガシガシと撫で回すと彼は私の鼻先をペロッと舐めた。



否、人ではなく犬なんだけど。




「はあ、もう起きる時間かぁあふぁぁぁあ…」



盛大に欠伸をして愛しい布団さんを引きはがしベッドから降りる。



「シュウくんおいでー」



佐和家の愛犬である柴犬のシュートはとても賢い。

毎朝6時になると私の部屋まで起こしに来てくれるのだ。


それに無駄吠えもしない。

あぁ、なんて頭の良い子なの。そしてどうしてこんなに可愛いの。



私がシュウくんの滑らかな毛並みに頬擦りしていると1階からお母さんの声が聞こえてくる。



「しのんちゃん〜お母さんもう仕事行くからね!

今日は夕飯よろしくね〜」


「はーい!行ってらっしゃい!」




私は2階の階段からそう叫ぶと一旦部屋に戻って制服に着替えた。



私の家は母子家庭で、お母さんが1人でバリバリ働いてくれるおかげで私と弟とシュウくんがこうやって不自由なく暮らして行ける。


お母さんは朝早くから仕事に行き、夜遅くに家に帰ってくる。


いつもこうな訳ではなく、最近輪をかけて母が忙しくなったのは、最近新しい事業を始めたらしく今が一番大事な時期だから、らしい。



母が離婚としたのは私が小学二年生のころ。


理由は【母が働くだけで十分な収入があるから】。


つまりウチにとって父親は不要だったらしい。



父親も働いていたようだが、母はやり手で父の倍は稼げるキャリアウーマンだったらしい。もちらん今も変わらず仕事のできる女なのだが。



父と母はよく喧嘩をしていて、母はそれが煩わしかったらしい。



自分1人で家族を養っていけるし、離婚すればもう面倒な喧嘩はなくなるから。



弟が小学校に上がると同時に母は離婚を決意した。



子供には父親が必要だとか子供が幼い頃の離婚は良くないとか周りには色々言われていたようだが、私は父親がいない事で不自由したことはない。




むしろ、父親との喧嘩が無くなったことで母のストレスが減ったことが私にとっても嬉しかった。



母は仕事が忙しいので家にはあまりいない人だが、弟がいるので寂しさもあまり感じたことがない。


家事は小さい頃からやっているからもう慣れた。




「しのんちゃんは文句も言わず家事も健の面倒も見てくれてほんとにいい子ね。」


「佐和さんのところの娘さんは若いのに出来た子ですねぇ」


母にも周りにもそんな風に褒められてきた。


我慢しすぎだともっと甘えてもいいんだとかも言われたけど、自分ではそういうのがちょっと分からない。





「おはよ。


姉ちゃん、今日の夜どっか食べにかない?」



なんだかチャラそうに聞こえる台詞を起き抜けに姉に向かって吐く、この気だるそうな男は私の弟の健。



私の部屋のドアにもたれかかって、半開きの眠気眼でこちらを見る健は、姉の目から見ても10代には見えない色気がある。


目が開ききってないのは眠いからで別にアンニュイな感じを狙っている訳では無いのだが、傍から見たらに背も高いし髪も長めだし、なんとなく大人の男の気だるさというかなんというか…ああそうか。



「たける~~今日もかーわいいい!!!」



大人の男とは正反対の言葉をいつも通りのように健にぶつけるといつものようにウザそうにそっぽをむかれた。





そう、私はただただ弟が可愛いお姉ちゃんなのだ。


最近どんどん大人っぽくなってイケメンになったから悪い女の子が寄ってこないか心配な姉心ではあるけども、健も結構シスコンな為、彼女を家に連れてくることはない。


まあ、隠れて付き合ってるのかも知らないけど。




「なにー、健はお姉ちゃんとご飯食べに行きたいの?


でもだめだよ、お母さんに健のご飯作るよう頼まれてるんだから。」


「…いや、だからさ。いっつも姉ちゃんに作ってもらうの悪いしたまには休んだらってこと。」


おーまいがっ!なんと姉思いの弟!



でもね、外食よりも家で作る方が安いし健康にもいいのよ。

まあ、家は別にお金には困ってないけど。



「たまにはさ、外食したっていいじゃん。」


うーん…まあ、今日だけならいっか。



「健がそんなにお姉ちゃんとご飯食べに行きたいって言うならぁ…いいよっ♡」



なんて自分でもウザさMAXで抱きついてみたけど、なぜか振り払われず満足げに頷かれた。



「?」



なぜそこまで外食にこだわるか分からないが、弟が姉と出かけたいというだけなのだろうとして。


とりあえず今から健と私の朝ごはんつくらなきゃっと。

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